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幽体離脱

あれから二週間は経つ。


陛下は持ち直したみたいだが、おそらくもっても2~3年だろうと言われている。

ニール様は、あのあとにアーシャ様と隣国へと帰ったらしい。


そして、私は困ったことが起きていた。


旦那様は心配しすぎたせいか、過保護になってしまっている。

その過保護に拍車がかかってしまったのは……目が覚めて3日目のことだった。


ヘルハウスを旦那様と歩いている時に、ジュリア様が私を脅かした時から始まる。


『よーこーせー!』

「きゃぁーー!?」


夕食後にサロンでお茶を頂いたあとに、旦那様と部屋に戻る途中。ジュリア様が後ろから急に脅かしてきたのだ。


急なことに驚き、足がもつれ転んでしまう。

旦那様は慌てて持っていたお茶を、トレイごと床に置き、大丈夫か? と起こそうとすると、私の魂が抜け出てしまっていた。


幽体離脱らしい。


「リーファ!?」

『……旦那様……』


そして、旦那様を求めて虚ろに彷徨おうと始めた時に、旦那様が慌てて私の身体に幽体を戻した。


「リーファ!? 大丈夫か!?」

「私……何を?」


一度魂が抜け出たから、まだ定着してないのでは!? と旦那様は私を見て言った。


「ジュリア! リーファを脅かすのは禁止だ!」

『えー! だってまだご褒美をもらってないわ!』

「リーファが落ち着くまで無理だ! 探しにいけないだろ!」

「旦那様、ご褒美とは?」

『ガイウスよりもいい男をもらう約束をしたのよ!』

「旦那様より素敵な方がいますかね?」


旦那様は呆れたように困っていた。


「とにかく! リーファが落ち着くまではダメだ! 留守中に何かあればどうするんだ!」

『ひどいわ! ガイウス! 私頑張ったのにー!』


ジュリア様はピューと飛んでいった。


その日から、過保護な旦那様に軟禁状態になり、ヘルハウスからの外出は禁止になってた。



そして、二週間たった本日。


呪いが解けて、日中も起きていられるようになり、玄関ホールの花瓶に花を生けていた。


「結構綺麗にできたわよね」


旦那様は、地下で私の幽体が安定するための魔法薬を必死で作っている。

花瓶の花が終わったから、お茶にそろそろ呼びに行こうか、と思うと誰かがヘルハウスを訪ねて来た。


「どちら様ですか?」


玄関を開けると、そこにいたのは、アーサー様だった。

しかも、花束を両手で持っている。


アーサー様が旦那様に花束なんかプレゼントするわけない!

まさか、まだ私を諦めずにきたのかしら!?


「リーファ……良かった。無事とは聞いていたが……元気で本当に良かった」

「あの……」


少しずつ後ずさりすると、急に後ろから抱きしめられる。


「アーサー様、何の用ですか? まだ懲りずにリーファを奪いに来ましたか? リーファは俺のものだと言ったはずです」

「旦那様……」

「そういうわけじゃない。父上から言われてきたのだ」

「陛下から、手紙は来てませんよ」

「手紙は一緒に持って来ている。……その前に、リーファ。君にこれを……」


アーサー様が持っていた花束を差し出された。両手いっぱいの薔薇の花束を。


でも、いらないんだけど……。


そう思うと、ピリピリしていた旦那様が受け取った。

そして、旦那様が居間へとご案内する。


「居間にご案内します。こちらにどうぞ」

「旦那様、私はお茶の準備をしてきます」

「何かあればすぐに呼ぶんだぞ」

「はい。花束も持っていきましょうか?」


そう言うと、旦那様はムッと不機嫌になったまま、こめかみに軽く唇を落としてきた。

まさか、アーサー様の前でするとは……。

後ろにいるアーサー様を振り向くのが、ちょっと怖い。


「あの……」

「花はいい」

「は、はい……」


そう言って、照れる顔を抑えられながらアーサー様の横を通りすぎた。

そのまま、パタパタと小走りで、厨房へと降りた。







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