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夫婦

街を出てもう何時間経っただろうか。

雨の中ずっと旦那様の腕の中で馬は走っている。


「リーファ、大丈夫か?」

「大丈夫です。旦那様、離さないでくださいね」

「すまなかった……。もうすぐで、予定の休憩場所につく」

「はい」


旦那様と街を脱出する時に、街中から悲鳴が響き渡っていた。

旦那様が、街から外に出る全ての道にあちらこちらと、無理矢理お化けを起こして撹乱させたらしい。

そして、城にもお化けが出るようにして、私たちをすぐに追ってこれないようにしていた。


ニール殿下が逃げる準備をしていると言っていたのは、このことだったのだ。


「旦那様……ジェフさんはどうされました?」

「ロウの知り合いに預けた。いずれまた会える」


無事で良かった。私のせいで罪のないジェフさんが傷つく必要はないのだから。


私はずっと旦那様に抱きついていた。

旦那様は、何も聞かずに大丈夫か? と労りの言葉だけをかけてくれていた。

そして、しばらくすると水音が聞こえてきた。


「リーファ……湖が見えてきた。今夜はあそこに泊まるぞ」


旦那様に言われて顔をあげると、湖の側に小さな釣り小屋があった。


「旦那様の小屋ですか?」

「ロウの隠れ家の一つらしい」

「ロウさんの?」


小屋の前で馬を停めると、旦那様が軽々と私を降ろしてくれた。

そのまま、旦那様に連れられて小屋に入ると、釣り道具は一式揃ってあったが隠れ家といっていたから、きっと飾りなのだろう。

そして、雨に濡れているせいか、くしゅんとくしゃみが出た。


「リーファ……大丈夫か?」

「はい……」


旦那様が私を温めるように、抱き締めてくれる。


「……旦那様。私と夫婦になってください」


突然の告白に旦那様は無言で、顔は直視できなかった。旦那様の腕にしがみつくように、そう言ったのだ。

旦那様は何も言わずに、私の首筋を撫でていた。

私がもうお嫌いなのだろうか。

そう思うと無言で抱き上げられベッドに連れて行かれた。

釣り小屋には、小さなベッドが一つだけあり、小さな暖炉に火もつけずにベッドに背をつけた。


「……お嫌いになりますか?」

「ならない。……嫌いなら、あんな騒ぎを起こしてまで、連れ戻しには行かない」


旦那様はアーサー様には怒っているようだった。

それでも、旦那様は私と夫婦になってくれた。

この日、旦那様と本当の夫婦になったのだ。






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