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囚われの愛妾

何日も馬車に揺られ、食事も馬車に運ばれることもあった。

途中の宿でも、見張りは厳重で部屋からは出してくれない。

そして一晩経てば、また馬車に揺られている。

日中に移動の時は、馬車の中で寝たまま連れられていた。一晩中馬車が走ることもあった。


馬車の中には一人だったが、いつの間にか白ちゃんが側にいた。


「白ちゃん……? 来てくれたの?」


何が言いたいのかはわからない。

言葉を発しない白ちゃんは手の平で変なダンスを踊るみたいにぐるぐる回っている。

何かは伝えたいのだろうけど……。


そして、私の指に何度も口付けするようにチュッチュッとしてくる。


私の指に口付けするのは旦那様だけだ。


「旦那様……?」


白ちゃんは何度も頷いた。


「旦那様が私の所に白ちゃんを……?」


白ちゃんはまた頷く。


「旦那様が……。来てくれて嬉しいわ……一緒にいてね」


一人じゃなかった。こんなに離れてても旦那様は私のことを気遣ってくれる。

実体のない白ちゃんを抱きしめると涙が出た。


そして、日が沈み夜になると、目が覚める。

目が覚めた場所はベッドの上だった。

道中の宿にしては豪華な部屋に戸惑う。

そして、背筋が凍った。


ベッドの側にはアーサー様が座っていた。

アーサー様が私を連れてくるように指示したのはわかってるけど……そのうっとりとした顔は止めて欲しい。


「リーファ、会えて嬉しいよ」

「私は嬉しくありません。すぐに旦那様の所に帰して下さい」

「帰す理由がない。リーファは俺の愛妾になったのだ」

「嘘ですよね……?」

「嘘ではない」


信じられない発言を、いつものように話すアーサー様が理解出来ない。


「アーサー様は結婚をされると新聞で見ました」

「結婚はする。だが、形だけだ。リーファを召し抱える為にするんだ」

「私は旦那様がいるんですよ!? 結婚相手だって、こんなに早く愛妾を迎えるなんて何と言うか……! 悪いと思わないのですか!?」

「相手は俺の妃という立場が欲しいだけだ。だから、結婚をする。相手も了承している。リーファを召し抱えるにはもうこれしかないからな」


信じられない。

アーサー様と結婚したいが為に、愛妾を迎えることを条件にするなんて……。

いくらアーサー様が令嬢達に人気でも、そんな夫婦生活が上手くいく訳がない。


「リーファがガイウスと結婚して逃げたからこんなことになったんだ。本当ならリーファが妃になるはずだったのに……」


今度は鋭い目で怒るように睨みつけてくる。


「い、嫌……近づかないで……!」


凄く怖い! アーサー様の反対から、慌ててベッドから降りようとすると、アーサー様に捕まってしまう。


「私には旦那様がいるんです!」

「ガイウスを口にすることは禁止だ。二度とここから出すこともない」


この日を境に私は厳重な警備の元、この部屋に囚われてしまっていた。





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― 新着の感想 ―
[一言] アーサー気持ちわる〜い(笑)
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