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#89 亜人を恨む冒険者と軍師の老悪魔

俺達の背後でも動きがあった。


「ち……何だ? この森は? 人間の罠だらけじゃねーかよ」


「黙って解除しろ。亜人に見つかると面倒臭い」


「分かってるよっと」


「それにしても人間一人殺せばいいなんて楽な仕事だよな」


「なるほど。あなた達の狙いはカナタさんでしたか」


森を進んでいた冒険者の頭上から声がするとチョコネが木から地面に降りたつ。


「お! 可愛い女の子じゃん」


「僕……凄いタイプ」


「ちょっとくらい味見してもいいよな?」


「がっつくなよ。お前ら。ほら、依頼主に睨まれているぞ」


冒険者のリーダーが言う。


「今回の目的は亜人を指揮している人間だが、亜人も見れば殺すように言ったはずだ。指示には従って貰うぞ」


「へいへい……あぁ~。気が強そうな女の子を泣かすのが最高に楽しいのによ!」


一人の冒険者がチョコネに襲い掛かるとチョコネは斬られて消える。


「分身かよ。ぎゃあああああ!? あ……ああ……」


男は倒れる。


「呪滅か」


「やれやれ。しっかりしてくださいよ。ヒール」


「女と思って油断するからそうなるんだ。亜人もれっきとしたモンスターなんだぞ」


「分かっているよ! いちいち言ってるんじゃーよ! ったくよ。お前の亜人嫌いは筋金入りだな。ディオン」


冒険者のリーダーの仲間はディオンと言った。以前亜人の樹海に火を放った冒険者のリーダーをしていた男だ。すると暗闇の森からガロロたちが現れる。


「奇遇だな。俺もお前達、人間が大嫌いなんだよ」


「狼の亜人か……かなりのレベルだな」


「お、おい!」


「囲まれますよ!?」


「悪魔の軍勢と戦っていて、手薄じゃ無かったのかよ!?」


これを木の上から聞いていたチョコネはこの冒険者達とラフェード魔王国が繋がっていると確信する。


「ここで俺達を待ち伏せしていたという事は俺達の情報が漏れていたという事だ」


「は! 情報が漏れるどころかバレバレだったみたいだぜ? お前がこの森に火を放った奴だと見ていた奴がいてな。俺がお仕置きに来たわけだ」


「ふん……モンスターが俺達人間にお仕置きに来たとか笑わせるなよ。ただ俺達を食いに来たの間違いだろ? 光剣!」


ディオンの剣が光り輝くとガロロに斬りかかるとガロロは後ろに下がり、構えを取る。


「旋風狼牙!」


「光盾!」


ディオンの前に光の盾が出現すると旋風狼牙がぶつかると光の盾が傷られていく。


「く……魔力切断! はぁあああ!」


ディオンの剣と旋風狼牙がぶつかると火花が散る。しかし何とかディオンは旋風狼牙を斬り裂く事に成功する。しかし斬り裂くことに必死になり過ぎて、剣を大きく振ってしまっていた。


「がら空きだぜ? 旋風爪!」


「く……!? が!?」


ディアンは突如目の前に現れたガロロを見て、バックステップで躱そうとするが旋風爪の風に触れて、服と皮膚まで削られ、血が出る。


「ったく。いきなり戦いを始めるなっつーの! おら」


「旋風爪!」


ガロロが剣を抜くと剣に旋風爪が宿り、冒険者の大剣とぶつかり合うと火花が散ると大剣が弾き飛ばしてしまう。


「な!? ひ!?」


「風波動!」


剣から放たれた風波動が直撃し、木に叩きつけられると意識を失う。


「くそ! 援護しろ!」


「任せろ!」


「ヒー」


「回復はさせません。毒爪!」


回復役の冒険者の影から現れたチョコネが爪でひっかくと回復役の冒険者は毒に侵される。


「この僕の顔に傷を……このアマァアアア!」


「おい! 馬鹿!」


「回復役が何突っ込んで行っているんだよ!?」


「影棘!」


チョコネが地面に手を付くと回復役の冒険者の影から影の棘が次々飛び出し、回復役の冒険者を串刺しにした。


「ひ!?」


「そんな様子では私を泣かすことは出来そうにありませんね」


「く……この!」


「よそ見してるんじゃねーよ!」


ガロロの仲間がチョコネに夢中になり、背後を見せた冒険者に旋風爪が直撃する。今回の冒険者達は急遽集められた冒険者で連携を取れていなかった。元々亜人に身体能力で負けている人間が連携が出来ていなければこうなるのは必然だった。


「お前……何笑ってやがるんだよ」


次々やられていく自分の仲間を声を聞いて、ディアンは笑みを浮かべていた。


「ふふ。やはりお前達は絶滅させるべきだと言う俺の考えは正しかったと再認識しただけだ」


「何だと?」


「俺の村はお前達、亜人に襲撃されて滅びた。仲が良かった友達、好きだった彼女、そして家族。全てがお前達に食い散らかせていたんだ! 俺はお前達を絶対に許さない! この世から消し去ってやる!」


ディアンは謎の薬を取り出すとそれを一気に飲む。


「あぁ……力が……溢れ……え? なんだ? これ? う……ぎ、ぎぃいいい!?」


「魔毒!? 全員離れて下さい!」


ディアンから魔毒が噴き出すと身体中の肉が膨張し、人間だったディアンが化け物に変貌する。


「アァアアアアア!」


「く……なんだこいつ!?」


「赤ちゃんのように見えますけど、こんなに大きくてムキムキの赤ちゃんは見たことがありません!」


その赤ちゃんの口に光が集まる。


「やばい!」


「みんな! 逃げて下さい!」


赤ちゃんからビームが放たれると岩に当たるまで木々を焼き貫き、命中した岩は爆発で消し飛ぶ。


「……おいおい。洒落になってねーぞ」


「こんなのから背後を襲われたら、みんなが危険です! ここで止めないと!」


「分かっているよ! お前ら! 触れるよ! 幻狼で攻め立てる!」


ガロロ達が幻の狼達を作り出して、赤ちゃんに噛み付かせるがここで違和感を感じる。


「なんだこいつ!?」


「血が出ないぞ! ガロロ!」


「まるで肉の鎧だな。ん?」


赤ちゃんが目を開けるとそこには目玉はなく、真っ赤に光っていた。そこからまたビームがガロロに放たれるが跳んでガロロは躱す。


「あっぶね……こいつはもうモンスターになってやがるな。旋風狼牙!」


ガロロが剣から旋風狼牙を放つと赤ちゃんの顔を抉った。しかしすぐに肉が膨れだし、顔が元に戻る。


「おいおい……冗談きついぜ」


「でも、旋風狼牙であの肉をどうにか出来る事は分かりました」


「チョコネ?」


「カナタさんから聞いた話でこれとよく似た話を聞いたことがあります。確かモンスターの触媒に人間を使うという話でした。恐らくこのモンスターの弱点はあの人間です。あの人間を見つけて、攻撃してください! それで倒せるかもしれません!」


チョコネの指示にガロロは笑む。


「おう! 任せておけ! 聞いていたな! お前ら! まずこいつの肉を削って、人間を探すぞ!」


「「「「おう!」」」」


「全ての攻撃は顔から来ました! 顔を優先して攻撃してください!」


ガロロ達は顔を攻撃するとチョコネの読み通りに光線の攻撃は来なくなる。その代わりに体から腕が次々生えて、ガロロ達に殴りかかって来る。その一撃は大木を薙ぎ倒す威力だった。


しかし今のガロロ達は削ることに特化している。更に言うと魔毒に触れる心配がない武器まで持っていた。その優位性はすぐに発揮され、次々肉が削られていくと遂にディアンの姿を捉えた。


ガロロが決めようと斬りかかるがここで硬い肉の壁に弾かれる。


「ち!? しょーがねーな!」


着地したガロロは剣を天に構えるとガロロの剣に風が渦を巻き、空へと上がっていく。


「お前はアニキと出会う前の俺とそっくりだったぜ。だからアニキが俺を救ってくれたように俺もお前を救ってやるよ! 行くぜ! アニキに付けて貰った俺の必殺技! リュカイオン・トルネード!」


ガロロが剣を振り下ろすと巨大な竜巻がディアンに襲い掛かる。肉の壁に消し飛び、ディアンは竜巻に巻き込まれて、空へと上がる。


「どうだ?」


「助けるとか言って、吹っ飛ばしているじゃないですか!」


「やべ……いや、これから助けるんだよ」


「だったら、早く行ってください! まだ戦いは終わっていないんですよ!」


ガロロが助けに向かおうとするとここで転移魔法でチェリスが現れるとディアンを保護する。


「どうやら不適用だったようじゃな。まぁ、他にも使い道はあろうて……悪いがこやつは貰っていくぞい」


「なんだ! お前! そいつを離しやがれ!」


ガロロが攻撃するが転移魔法でいなくなると空から黒い雷がガロロに降って来る。


「ガァアア!? な、めんなー!」


「ほぅ……丈夫じゃな。魔人障壁」


ガロロの攻撃とホゥがチェリスの背後を狙った猛毒羽が防がれる。


「威勢がいいのぅ。じゃが、甘いわい。エクスプロードフレイム」


二人に魔方陣が描かれると爆発する。危険を感じた二人はすぐに距離を取っていると大技を繰り出す!


「咆哮!」


「旋風刃!」


しかしまた転移魔法で躱される。二人はすぐに視線をチェリスに向ける。


「反応もいいのぅ。儂の策が失敗した以上、今日は引かせて貰うわい。異世界の人間に伝えよ。次は奴隷の解放を賭けた戦場で雌雄を決しようぞとな」


「な!? いて!?」


ガロロが口を滑らそうとしたところをホゥが頭を叩いて止めた。


「奴隷の解放って何の話かなー?」


「上手く隠してはおる。戦闘の準備も兼ねつつ物流を阻止するのもいい狙いじゃ。実際にメイルは怒って、その裏で行われている作戦に気付いておらん。じゃが、儂の目は誤魔化せんよ」


得気にチェリスが言うとホゥも返す。


「カナタ君が言ってたよ。たぶん自分達の動きはあなたにバレているって」


「ほぅ……」


「だから疑問に思ってたよ。どうしてわたし達の動きを知ってて、魔王メイルが動かないのかって」


「確かにそこは疑問に感じる所じゃろうな。此度の戦に負けた褒美に教えてやるとするかのぅ。儂ら上位魔人は魔王メイルの配下を名乗ってはおるが忠誠を誓っておるわけではないからじゃ」


「どういう事かなー?」


ホゥの質問にチェリスが更に詳しく答える。


「言葉通りじゃよ。儂らはただ魔王メイルに付けば己の欲望が満たされるから味方をしておるにすぎん。儂は人間との知略を駆使した戦いを楽しみたいだけに大国と亜人の住処に囲まれているこの国を選んだ。他の上位魔人も私利私欲のために魔王メイルに味方しておる」


「へー。つまりあなたの場合は奴隷の解放の動きを魔王メイルに伝えるとあなたが望む戦いが出来なくなるから伝えていないってこと?」


「そういうことじゃ。それに伝えた所であの男は聞く耳持たぬよ。奴隷の首輪は奴にとって、最高傑作であり、奴隷政策の肝となる物じゃ。それが解除されると言う事は自分が頼りにして来た物が失われる事を意味しておる。その事実を受け入れる男ではないんじゃよ」


受け入れず、怒鳴られて終わりだと分かっているなら伝えるだけ損だ。チェリスはそういう考えに至ったらしい。本来の軍師ならそこは怒鳴られても必死に説得しなければならない所だ。しかしチェリスの立場は助言する者は自分が忠誠を誓った者でなく、しかも伝えると自分が望んでいる最高の戦いが出来なくなるという状況だ。


「なるほどねー。凄く納得が行ったよー。自分の欲望を優先するなんて本当に悪魔らしい考え方だねー」


「儂は悪魔じゃからな。では、さらばじゃ」


チェリスがそう言うと杖を上下に動かすと悪魔の軍勢が転移魔法でいなくなるのだった。こうして今回の戦いは終わった。

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