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#86 隊商襲撃作戦

僕は全開になったガロロとウルガに作戦を話す。


「人間の馬車を襲って、どうするんだ? アニキ?」


「運んでいる物をこっちが逆に奪うんだよ」


「それに何の意味があるのよ」


チョコネが説明をする。


「これらの荷物は魔王の国に運ばれる物です。それを奪えば魔王の国に荷物は入らなくなりますよね? しかもこっちはそれを手に入れることが出来るんですから相手は苦しくなり、こちらは楽になることが見込めます」


「そんな簡単に行くものなのか?」


「それでもする価値があるんだよ。ガロロに聞くけど、戦いの最中に運ばれてくる食料や水が無くなったら、どう思う?」


「それは……飯や水が無くなるわけだから凄く困るって……そういう事か。アニキ」


補給線を断つのは戦いの基本だ。向こうが戦いの準備を進めるなら尚更有効な手となる。するとウルガが聞いて来る。


「作戦をたてているという事は目星は付けているのかしら?」


「勿論。ホゥとフリューグに調べて貰ったよ。当然だけど亜人の樹海を通ってなくてね」


ソルティス山を沿うように入っていく隊商とラフェード魔王国から見て亜人の樹海の反対側から入って来る隊商が確認された。


「つまりこの森から出て、襲いに行くわけだな? アニキ」


「そう言うことになる。ウルガ達は雪が多い山沿いの隊商が襲いやすいと思う。ガロロ達は反対側の平地を狙う。ウルガにはチョコネ。ガロロには僕が付こうと思う」


「大丈夫なの?」


「大丈夫。僕達もただここにいたわけじゃないよ。ね? チョコネ」


「はい! しっかり作戦も考えているので、安心してください」


僕とチョコネの自信満々な様子にウルガも納得する。ここで注意事項を話しておく。


「人間を殺さないのか? アニキ?」


「うん。だから今回は意外に難しい作戦になると思う」


「どうして殺しちゃダメなのよ。まさか人間の味方をするつもりじゃ無いでしょうね?」


「ここに来て、それは無いよ。人数が増えるという事は必ずしもいい事じゃない。これは僕達も経験していることだけど、全然食料が溜まらないんだよね」


人数が増えるという事はその分の消費も増えることになる。


「私達の食料が溜まらない原因は毎日のようにつまみ食いが発生するからですけどね。皆さんがいない間は発生しなくなったんですけど、何でですかね?」


「「さ、さぁ?」」


僕はエル達がつまみ食いの常習犯であることを知っている。思いっきり視線が合ったのに隠れたり、逃げ出したりするんだよね。罠で捕まえたこともあっただけ、見張りに来ただけとか言い出す始末だ。


それを聞いた料理担当のサクニャちゃんが物凄く怒って、一日中、縄で拘束状態で見張りをする罰を受けても懲りずに続けるんだから大したものだよ。


話を戻して今回のターゲットは隊商の人間だ。戦闘に直接関わる人間じゃないから殺すのは賢い選択とは言えない。それに彼らにはもっと荷物を運んで貰いたいし、生きて亜人に襲われた情報も流して貰う狙いもある。


隊商で亜人に襲われた情報が伝わればラフェード魔王国に物流を止めることが出来るかも知れない。後は人間側がどう動くかが問題だ。


亜人に襲われたから討伐に他国やギルド、教会が動くのか。それとも被害は出たが死亡者が出なかったので、動かないのか見極めたい。


というわけで留守をミイネ、ホゥとサクニャちゃんに任せて、僕達は別れて、隊商を襲撃する作戦に動いた。ただ全てが思い通りに行くことはなく、道中で吹雪に捕まる。


「あなた、大丈夫なの?」


「大丈夫じゃないです……雪の中に穴を掘れますか?」


「それくらい出来るわよ。地面じゃないんだからね」


「では、真っ直ぐ縦に掘って下さい」


チョコネの指示でウルガが作ったのは雪洞だ。雪山で遭難とかしたときは縦穴や横穴を掘って、野営をする。縦に穴を掘ると吹雪の風と雪は入らず、横穴も入り口を塞げば吹雪を防げる。かまくらとか作るのがベストではあるけど、一番簡単な方法がこれだ。


「よくこんなこと知ってたわね?」


「カナタさんと冬の戦闘で色々な場面を想定してどうするべきかお互いに言い合う事とかしていたからね。その中に突然の吹雪に襲われた場合の対処法があったんです」


「なるほどね」


僕達もガロロの息吹で穴を開けて、吹雪を避けた。そして吹雪が止むと進軍を進めて、今回の作戦のターゲットを視認する。最初に見つけたのは距離も近い、ウルガ達だった。


「あれね」


「カナタさんからの情報と一致していますから間違いないですね。作戦通りにお願いします」


「分かっているわよ。ここからは任せなさい。行くわよ! みんな!」


ウルガたちが雪に潜って、隊商に接近にする。


「「「「ワオーン!」」」」


「狼の声!?」


「モンスターか!? 敵襲!」


「ん? なんだ? あれ? 雪が渦を巻いて……あ」


雪の異常に気が付いたのは先頭のいた商人だった。


「に、逃げろーーー!」


「どうした!」


「た、竜巻だーーー!」


「そんなの私が相殺して……噓でしょ……」


雪の竜巻が連続して、隊商に向かって来ていた。


「俺達は護衛だ! 何としても護れ!」


「あんな攻撃からどうやってだよ! 馬鹿! 逃げるぞ!」


「あぁ~!? 任務が!? お金が!? やめてくれ~!? 今月はお金が本当にやばいんだよー!?」


護衛の冒険者には同情するが容赦なく、氷の竜巻は隊商の馬車を破壊した。そして空を舞った荷物が地面に落ちると雪からウルガが現れる。


「頂きね」


雪旋風をわざわざ遠くから見せれば相手は逃げ出すと計算していた。もし守っても、ふかふかの雪の地面では死にはしない。ウルガ達が運び出そうとしていると護衛の冒険者たちがやって来る。


ここでうかうかの地面に亀裂が走り、クレバスが急に出現すると冒険者とウルガ達を分断した。氷亀裂スキルだ。


「舐めんじゃないわよ! フライ!」


冒険者たちが全員空を飛ぶ。一見するといい選択に見えるが雪の竜巻を見たのに空を飛ぶなんて自殺行為だ。


「吹雪!」


「「「「ワオーン!」」」」


「「「「嘘だろ~!?」」」」


彼らは空中で突然の猛吹雪に襲われて、ふかふか地面に墜落する。最もそこから更に積もっていくわけだが、チョコネは冒険者達の実力から見て、死にはしないと判断し、荷物の優先した。


チョコネから作戦の詳細を聞いた僕は冒険者達に少し同情した。今まで襲っていなかったから比較的安全な依頼だと思って受けたはずだからね。


「ウルガ達は成功したみたいだよ」


「それじゃあ、俺達も負けていられないな。アニキ」


それから荷物の中身を聞くと武器から生地、食料を運んでいたみたいだ。特に生地はミイネ達が知らない生地で興味津々らしい。ラフェード魔王国に送られる生地なんてあまりいい予感はしないんだけどな。


そしてウルガ達から遅れる事、二日。僕達も標的の隊商を見つけるがガロロが止める。


「アニキ、どうやら先客がいるみたいだぜ。戦闘の音がする」


「僕達の他にあいつらと敵対しているのがいるのか?」


僕はつば三郎を守護獣召喚で呼び出して、空から偵察する。


「なんだ? これ?」


「どうしたんだ? アニキ?」


「何かに襲われているのは確かなんだけど、敵の姿が見えない……まさか姿を隠している魔法か何かを使っているのか?」


ここで隊商の商人や護衛の冒険者に死者が出ている事を確認した。


「余計な事をしてくれるよ……全く」


「アニキ! そいつらがこっちに気が付いたみたいだぜ。変な風の流れを感じる」


ガロロは気流操作で風の流れを読む。透明人間になっても、実体があるなら風に当たれば当然その流れは変化する。それで接近が分かったわけだ。


「ここで戦闘しても得がない。引こう」


「分かった」


僕達が引くと敵は追ってはこなかった。そしてつば三郎が偵察を続けているとは知らず、隊商を襲った犯人が姿を見せた。


「あれはダークエルフって奴かな?」


褐色の肌に漆黒の髪の毛のエルフたちがいた。すると一人のダークエルフがつば三郎を見る。


「バレた!? 戻れ! つば三郎!」


静寂が流れる。


『黎明。どうだった?』


『ギリギリで助かりました』


「はぁ~……よかったぁ~」


敵の正体が分かっただけでも十分だろう。問題は僕達が隊商を襲ったことにされないかが問題だ。この辺りはリーゼと葵達から聞くとしよう。取り敢えず僕達は作戦失敗ということで亜人の樹海に帰ることになった。

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