#78 亜人の樹海、防衛戦
僕達が協議を終えて、帰ろうとすると鳥人族がやって来た。
「あんた達が亜人の樹海からやって来た客かい?」
「そうだけど」
「それなら急いで帰った方がいい。悪魔共がまた動くつもりみたいだからよ」
みんなが驚く中、僕は考える。
「動くつもりってことはまだ動いていないってこと?」
「亜人の樹海にはまだ入っちゃいないが集まって来てる。近い内に攻め込むのは間違いないと思うぜ?」
「どうするの? カナタ」
「俺達が送ってやろうか? 一応エルードさんから要請があれば手を貸すように言われているが」
それは非常にありがたい申し出だ。
「上級魔人とかいたりします?」
「指揮している奴はいるがデーモンだな。数は多いが質はこの前と比べるとだいぶ落ちると思うぞ」
数で押し切るつもりか。舐められたもんだ。
「それならたぶん大丈夫です。あいつらの動向を教えていただき、ありがとうございます」
「ほぅ……それならお手並み拝見と行くか」
僕は脳内で地図を思い浮かべて、作戦を考えるとチョコネに伝える。
『わ、私なんかが本当に指揮して大丈夫なんでしょうか?』
『今回はそこまで強くないみたいだし、大丈夫だよ。チョコネは一人じゃない。僕も皆もいる。自信を持って。失敗したら僕が責任を取ってあげるさ』
『分かりました。出来る限りやってみます!』
更に防衛の為に残したハクアたちにチョコネに作戦を伝えたこととチョコネのフォローをしてくれるようにお願いした。今回が副官チョコネのデビュー戦となる。自信を付かせる為に出来る手回しはしないとね。
「俺たちはどうするんだ? アニキ」
「恐らく悪魔たちのほうが攻め込むのが速い。ガロロ達はえーっと…こっちの方角に真っすぐ進むとたぶん人間が作った道が見えると思う。そこには近づかないで見えるギリギリの所で森の中で潜んで欲しい。僕とエルがそこに敵を誘導するから襲撃は任せたよ」
「おう! 任せろ! 行くぞ! お前ら! あいつらにやられた分を返すぞ!」
「「「「おぉおお!」」」」
ガロロ達は先行し、ホゥは亜人の樹海にいるこの事を知らない亜人たちに警告に向かう。その日の夜に悪魔たちが亜人の樹海に攻め込んで来たが彼らは予想外の物を目撃する。
「あれは結界!?」
「どういうことだ!? 何故ここに結界が貼られている!? まさか高位の狐の亜人がここにいるのか!?」
「どうしますか?」
「く……攻撃しろ! 結界に潜んでいる軟弱者を炙り出すんだ!」
しかしミイネの結界は悪魔の攻撃ではびくともしなかった。
「ええい! 忌々(いまいま)しい! だが、まあいい。これだけの結界を常時張り続けることは出来ないだろう。ゆっくりいたぶってやる。これで俺も上級悪魔の仲間入りだ」
魔王メイルは上級魔人を動かすことが出来ず、またボグが抜けた穴を埋めるために僕を殺し、メルを捕まえたら、今回の指揮官をしている中級悪魔のデーモンに上級悪魔にさせるという条件を出して、出撃を命じた。
そして指揮官のデーモンは配下の悪魔達にこの作戦が上手くいけば望む報酬を与えるとしており、指揮が高かった。だが、欲に取りつかれた者ほど、罠に嵌めやすい者はいない。
翌朝、チョコネの指示でハクアたちが悪魔達に奇襲を仕掛けた。敵に被害を出したハクアは結界内にすぐに引く。これで結界の近くで休むと被害で出ると教える。チョコネの予想通りで悪魔たちは距離を取った。
暫くすると今度は悪魔達に魔法の火球や岩が飛んで来る。ミイネの仲間による魔法攻撃とビルドやスーアンなどの力自慢による岩の投げつけ攻撃だ。当然これが終わると結界内に逃げ込む。
「ええい! 鬱陶しい事をしてくれる!」
今度の悪魔達は更に距離を取り、奇襲に対応する為にどの距離にも部隊を配置し、安全を確保した。しかし甘い。
「お兄ちゃん、準備出来たでやんす!」
「ありがとう。カンナ。それじゃあ、カナタさんが教えてくれた技術と私達の力を悪魔達に見せてやりましょう!」
「やるでやんす! みんな!」
僕が作り方を教えたのは投石器。なぜ作り方を知っているのかというと工作の自由研究で割り箸を使って作ったことがあった。結構簡単に作れる上に意外と飛ばすことが出来、割り箸アートにもなるので、オススメだ。
まさか大木を使って、本格的な物を作ることになるとは思ってなかったけど、男のロマンは無駄にはならないものだね。
ビルド達が頑張って縄を引いて、飛ばす物を蔓で作った籠の中に入れる。そしてビルドたちが手を離すと籠が結界を抜けて、外へと飛んでいく。
「なんだ? あれ?」
「さぁ? ほっとけ。どうせ大したものじゃない」
「そうだな」
そう思っている悪魔たちが背後で大爆発が起きる。籠の中に入れたのはバールさん達が覚えた木の実爆弾だ。それを籠一杯に入れて放ったのだった。
「なんだ!?」
「爆発!?」
こんな一方的な襲撃を時間を空けたり、連続で奇襲を仕掛けたりして、チョコネは敵を揺さぶる。その結果、悪魔達は満足に休めず、ずっと襲撃を警戒する状態が続く。そして夜を迎えた。
『報告は以上です』
『お疲れ様。それじゃあ、最後の仕上げと行こうか。準備は出来てる?』
『はい。皆さん、ご飯を食べて、気合い十分です』
『そっか。それじゃあ、始めようか』
『わかりました!』
自分の仕事をやり切ったためか声が明るくなっている。今回の敵には感謝だな。最も容赦はしないけどね。
「エル、始めよう」
「はい! 雷光!」
エルが夜に雷光を使った事で僕とエルの位置が敵にバレる。
「報告! 背後に雷による光を確認しました!」
「背後からだと!? そうか……我々を挟み撃ちにするつもりだったか。しかしモンスターに襲われたようだな! 全軍、背後に向けて進軍だ!」
「「「「は!」」」」
こうして悪魔達は背後にいる僕とエルに狙いを定めた。悪魔達の多くが雷光の光を見た為に全員が戦果欲しさに一直線に向かってくる。
「「「「ストームブレス!」」」」
そんな奴らの側面からガロロ達の息吹が襲い掛かり、敵の数が一気に減る。
「く! 構うな! 人間の男と竜人族の女を捕まればいいのだ! 探せ! 徹底的に探すのだ!」
しかし見つからない。当然だ。僕とエルはホゥの影移動で既に結界内に帰っている。僕達を必死に捜索する悪魔達は全員が戦果欲しさに森の中でバラバラになっていた。戦闘中に陣形を崩すなんて馬鹿な事をしたものだ。
悪魔達の背後からハクア達が襲い掛かる。悪魔達が動いたタイミングでハクア達も追撃に動いていたのだ。
「は、背後から敵襲です!?」
「何!?」
「側面からも来ました!?」
「と、とにかく応戦しろ! あ」
指揮していたデーモンの前に力を溜めているハクアが現れる。
「……自然波動!」
「ぎゃあああああ!?」
至近距離での自然波動を浴びて、消し飛んだ。この瞬間、勝敗は決した。
「全員殺したか?」
「……もちろん」
「なら俺達の勝ちってことだな……」
「……うん」
全員が勝利の余韻に浸ったのち、喜びが爆発する。みんなにとっては悪魔相手に初めて自分達の力のみで掴み取った勝利だった。
その日はみんなでどんちゃん騒ぎをして、チョコネはみんなから褒められて、あたふたしたり、照れたりしていた。その姿を僕は見ながら笑っているとチョコネに引っかかれた。
そんな僕達だけど、後日この騒ぎで食料不足となり、反省することになるのだった。




