#74 大群討伐の成果と雨期の到来
みんなの成長と進化の確認が終わった僕はつい口から出てしまう。
「誘惑……」
「え、えっと……どうかしましたか?」
「いや、何でもない……」
サクニャちゃんが誘惑してくる感じが想像出来なかった。一方お姉ちゃんだけ誘惑スキルを持ったことに納得が行かない子がいる。
「強くなったのはいいですけど、私に誘惑スキルが無いのは納得がいきません!」
「私達みたいな細身の美少女には誘惑スキルは貰えないみたいだねー」
自分で細身の美少女とか言ってしまうのか。まぁ、実際にホゥもチョコネも細身の美少女だとは思うけどね。
「私達だって、男を誘惑するぐらい出来ますよ!」
「じゃあ、カナタ君にやってみようー。もし出来たら、誘惑スキルが手に入るかも知れないよー?」
なぜ僕を巻き込む。疑問に思いながらチョコネがやって来るとスカートをひらひらさせて来る。
「暑いの?」
「違います!」
「おっと。爪で引っ搔くのは今後禁止だよ。チョコネの爪は毒があるんだからね」
「う……」
チョコネは僕への攻撃手段を失った。ついでに謎の影召喚をしてもらう。
「にゃー」
チョコネの影から子供の黒猫が現れた。
「おー! 可愛いな。こっちにおいでー」
「私が操っているんですよ? カタナさん」
それならやって来るように操作して欲しかった。この子猫の役割だが、どうやら偵察役のようだ。影移動なども使えるらしく、得た情報をチョコネに話してくれるらしい。ここでポコリンが仕掛けて来る。
「睡眠粉っす!」
「わ!?」
ポコリンの手から謎の粉末をかけられた。本来ならこれで寝るはずだが、黎明の効果で僕には効果が発動しない。
「え? 効かないっす!?」
「さて、僕を眠らせて何をしようとしていたのかな?」
「えーっと……逃げ」
「逃がさないよ。じっくり聞こうか」
「ちょ!? 成長したあたしに何する気っすか!? ま、まさか……」
流石にお尻を叩くのは問題ありだと思って、愛撫の刑を実行した。
「生きてますか? ポコリン」
「痙攣して動かないわね……」
「……成長してもカナタの愛撫に勝てない事はわたしたちが証明している」
ポコリンの事はエル達に任せて、進化したみんなの実力を確認して行く。何気に恐ろしいのがパールさん達だ。
「木の実爆弾!」
スキルを使用すると手にココナッツのような木の実が現れる。これを投げて、何かにぶつかると爆発した。
「結構威力がありますね」
「わたしもびっくりしてます」
「これは投石機とか作って貰うしかないかな?」
「投石機? それはなんですか?」
一瞬でみんなに囲まれてしまった。投石機はカタパルトとも呼ばれている代物で元々は大きな石を遠くに飛ばして運ぶのを楽にするために作られた。それが城攻めなどに兵器として利用させるようになった物だ。
作りはそこまで複雑じゃないし、ここには木材は豊富にある。作ることは可能なはずだ。ただ使うところは考えないといけないな。こういうのは戦況を決定づける兵器だ。一度見せると対策を講じられるし、どこで使うかが重要だと思う。
取り敢えず洞窟の中で秘密裏に作製して貰うことにした。次にビルドもスーアンを確認する。二人共だいぶ強くなっている。
「強くなっただか……」
「不安です……」
前にも言ってたけど、二人は暴走が怖いみたいだ。すると黎明が断言する。
『主よ。問題ありません。二人の不安を消す為に実際に使わせてみてはどうでしょうか?』
黎明がそう言うなら大丈夫だろう。というわけでエル達を待機させて、実験する。
「体は熱いんだけども、意識はあるだ」
「僕もです」
「アニキ」
「戦いたいでしょ? ダーメ。戦闘したばっかりなんだよ? 楽をした戦闘だったけど、今日はもう休もう。というか眠い」
僕の提案でそれぞれ家に帰って、寝る事にした。
その後、僕たちは倒したモンスターの処理や投石機の開発、今回使用した罠の再設置、魔毒の処置などをしているとあっという間に雨期を迎える事になった。
長い雨が続いて、すっかり地面が川のような状態になったけど、あっきーの案でみんなの家は高く作られているから幸い、家の中に水が入っていることはなかった。
「雨漏りしない家って素晴らしいよねー」
「ホゥの昔の家はしてたの?」
「してたよー。木が雨は防げるとか言われていたけど、木から落ちて来る水って大きな雨粒になるからそれはもう大変だったよー」
「あははは……うちでは大丈夫でしたから大丈夫だと思ったんだと思います」
トンカチ棟梁が作ったホゥの家は今や伝説だな。ここでみんなが改めて、バールさん達にお礼を言う。
「いえ、皆さんにも色々協力して頂いた結果ですよ」
「それでも家造りを指揮していたのはバールさんでみんなが家を建ててくれたことは事実なんですから誇ってください」
「そうでやんす! お兄ちゃんはもっと自信を持つべきだと思うでやんす」
「あははは。こういうのはどうにも苦手でね。それにみんなはカンナも褒めているんだよ」
全員が頷くとカンナちゃんは左右を確認してからバールさんの後ろに隠れてしまった。何だかんだで似たもの兄妹だな。ここで俺は質問する。
「みんなは今までどうやって生活していたの?」
「木の上に登ってましたね。何回か木が倒れて、流されたことがありましたよ」
「それは大丈夫なの?」
「多少流されますけど、すぐに木に引っかかるので、命の危機はそれほどでもありません。ただ泳げないので、恐怖は感じますね」
それはそうだろう。森の中の洪水だから流される心配は案外無いんだな。勉強になる。逆に言うとこの洪水を利用して、船で敵が攻め込んで来る可能性は低くなったという事だ。
「チョコネちゃんが怖くなって、崖に行ったら、今度は崖が崩れたこともあったよね」
「あの時は死ぬかと思いましたよ」
よく二人は無事に生きて来れたな。そう思っているとみんなが同じような経験をしていた。バイオレンスな森だよ。
そして雨が止むとカゲツがやって来た。目的はミイネ達が作った服と雨期の間の雨宿りだった。
「すみませんね。人間はどこもお金を支払わないと行けなくて」
「うちもただとは言ってないんだけど?」
「もちろん泊まらせて貰った分は仕事させて貰いますよ」
何か考えがあるらしい。そしてカゲツの行動が奴隷解放に大きな一歩となるのだった。




