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#7 異世界飯と興味の罰

僕達は馬車で自己紹介する。


「僕の名前はカナタ。勇者召喚されて、異世界からこの世界にやって来た無職だよ」


「はい?」


これを聞いた竜人族の少女は首を傾げる。これは仕方ないだろうな。何せ言っている僕も意味不明だからね。次は少女が自己紹介してくれる。


「私の名前はエル。竜人族のお姫様です!」


「はい?」


分かりやすく説明して貰ったのに首を傾げる僕である。


「お姫様なの?」


「そうですよ! どこからどうみてもお姫……」


自分の服装を確認するとジャージ姿。その前はボロボロの服。どちらもとてもじゃないがお姫様が着る格好ではない。


「と、とにかくお姫様なんです! 信じてください!」


「わかったわかった。それでお姫様なのになんであんなところにいたの?」


「そ……それは……言いたくありません」


どうやらわけありのようだ。


「そっか。ならいいや」


「え? いいんですか?」


「だって、話したくないんでしょ? なら無理矢理聞くのは良くないと思う」


「……変な人」


僕は無職に続いて変な人となった!救いがないね。一応カードを確認する。称号で変な人は追加されていたなかった。僕がホッとしていると可愛いお腹の虫の音が鳴った。僕じゃないから犯人は一人しかいない。


「……お腹空いてるの?」


「三日間何も食べていません……」


腹ペコ竜人族のお姫様か。随分変な竜人族と出会ったもんだ。ここで僕の脳裏に類は友を呼ぶということわざが過った。


「そういえば僕もご飯を食べてないや。えーっと……確か……あった」


僕が林間学校で持ってきた食料はご飯だけではない。朝と昼も葵の料理を食べる可能性があったから非常食をリュックの中に入れていたのだ!


「焼き鳥の缶詰と牛丼の缶詰!」


これこそ人類の技術力が生み出した究極の非常食だと思ってる。すると早速エルが興味を示す。


「それは何ですか?」


「食べ物だよ。ちょっと待ってね」


僕は缶詰を開けるとエルに渡してみる。エルは匂いを嗅ぎ、涎を垂らすが食べない。僕の様子を伺ってくる。どうやら安全な食べ物か分からないから食べたくても食べないらしい。


「毒なんて入ってないよ。ほら」


僕は実際に焼き鳥の缶詰を食べて見せる。


「んん~! 美味い!」


「……あむ! ッ!?」


エルの尻尾が上に伸びる。


「お、美味しい!」


一口食べるとそこからエルは一心不乱に食べる。尻尾の大興奮状態だ。


「んん!?」


どうやら喉に詰まらせたようだ。


「あぁ……急いで食べるから。ほら、飲んで」


僕は水筒を渡すとストローの飲み方が分からないようだ。仕方ないから蓋を開けて渡す。


「ん! ん! んん!? これも冷たくて美味しいです!」


林間学校をしていたから中身は氷を入れたスポーツドリンクだ。水筒は保冷機能がある物だから今でも冷たかったらしい。


「ん! ん! ん!」


「って、飲みすぎ!?」


「ん? ん! ん!」


「一度止めたのに何で飲むの!?」


まぁ、いいや。もう一つ水筒は持ってきているから。そしてエルはご飯を食べるのを再開する。


「……無くなっちゃいました」


さっきまで尻尾が動き回っていたのに静かになった。どうやら尻尾は感情と直結しているようだ。するとエルは缶詰をなめだした。子供の頃、僕もしていたな。ここで僕も缶詰を開けてご飯を食べる。するとエルが僕の背中に抱き着いて覗いて来る。


「……どうしたの?」


「さっき食べた物と違います」


「……つまり?」


「こっちも食べたいですぅ~」


急に甘えだして来た。まるで美味しいご飯を初めて食べた後の猫みたいだ。


僕は悩む。何せ馬さんの話では町まで三日かかると言っていた。ここでたくさん食べるとご飯が町まで持たなくなる。そこで僕は重要なことに気が付いた。


「そういえばこの馬車に食料って無いのかな?」


「その中に入ってますよ?」


「僕のリュック以外でだよ」


リュックから缶詰を取り出したところを見られていたようだ。リュックは守らないといけないかもしれない。ただ鍵とか無いんだよね。


ファンタジーでは食料が入った木箱や袋があるイメージだったけど、僕が乗っていた馬車の後ろにはそういうものは無かった。しかし食料も無しに旅をするとも思えない。こういう時は馬さんに聞いてみよう。


『食料ならお前が座っている椅子の中に入っているぞ』


椅子を確認すると開くようになっていた。あのブリーフ騎士はそこまでして食料を隠したかったのか。更に謎の紙の束があった。


「なんだろう? この紙? 火を起こす時に使うのかな?」


馬さんに聞いてみた。


『人間が糞した時に使っている紙だ。なぜ使うかは聞くなよ? 人間の行動なんてほとんど俺にはわかんねーからな』


トイレの後にお尻を拭く文化は人間ぐらいものだろうから分からないのは当たり前だよね。それにしてもまさかトイレットペーパーだとは思わなかった。何せ僕が知るトイレットペーパーではなく、ざらざらの黄ばんでいる紙だ。これでは分からない。寧ろ痔か何かになりそうで心配だ。


まぁ、旅をするなら必要なものだとは思うけどね。拭かずに馬車に座ると大変なことになる未来が見える。


取り敢えずこれで食料があることは分かったけど、見たことがない青い模様がある謎の果物だ。流石に食料なんだから食べれるものなんだろうけど、勇気がいる。そうだ!鑑定があった。


「鑑定!」


果物に文字が表示された。


イボ

甘酸っぱい果物。皮ごと食べることが出来る。長持ちすることから長旅の食材として人気がある。


鑑定はこんな感じなんだね。食べ物であることは嬉しいけど、名前をなんとかして欲しいな。それにわかっても缶詰と比べると天と地の差だ。


「はい。これをあげる」


「え……そ、そっちは?」


「これは僕の。夜に僕が食べているのを出してあげるから今はこれで我慢して」


「約束ですからね! あむ! 酸っぱいです!?」


エルの酸っぱい顔を見た僕は笑いを堪えることが出来なかった。


「ぷ……あはははは!」


「あぁ~! なんで笑うんですか! この果実を渡してきたのはカナタなのに!」


怒られたけど、それはとても可愛らしい怒り方だった。その後、暇だったのでお互いの自分の話をすることになった。僕は自分のことを話すとエルは異世界の話に興味津々だ。そしてスキルのことを話すとエルは納得をする。


「それで突然無言になったりしたんですね」


「あぁ~……どう見えてた?」


「変な人に見えてました」


「だよねー」


本日二回目だよ!でもこれは僕が悪いな。いきなり無言になったりしたら、何処からどう見てもやばい人だ。寧ろエルに教えて貰ったことを感謝しないといけない。今度はエルが自分のことを話すと衝撃的なことが判明した。


「スキルが使えないの?」


「……はい」


「羽があるよね?」


「……はい。でも飛べません。もしスキルや羽で飛べていたらあんなねばねば生物に服をボロボロにされることも無かったのに……」


服をボロボロにする生物と聞くとスライムの名前が思い浮かぶのはなんでだろう?それにしても納得がいった。飛べないから足を怪我していたわけだ。


「でも、どうしてスキルが使えないんだろう? お姫様なんだよね?」


「そうですよ」


ミステリーだ。こういう時は黎明に聞いてみよう。


『分かりません』


即答!黎明がわからないなら僕にわかるはずがない。しかし黎明はちゃんと説明してくれる。


『スキルはこの世界では生まれた時から日常的に使われているものです。使えない者がいること自体が奇跡と言っていいでしょう』


ダメな奇跡だね。するとエルがぼやく。


「なんで私がこんな目に……私は毎日美味しいお肉を食べて寝ていただけなのに……」


「ちょっと聞いていいかな? 戦ったことってある?」


「ないですよ? だってお姫様ですし、ご飯なら私が食べたいものを言ったら、みんなが用意してくれてましたから」


これが原因だ!きっとエルは生まれた時からスキルを使った事が無いんだろう。この瞬間、エルは僕より無職の才能があると思った。


『……主よ。奇跡という言葉は撤回します』


黎明もこのダメな気配を感じ取ったようだ。そうだよね。()っちゃ寝生活(ねせいかつ)を奇跡と言ったら、奇跡に失礼だと僕も思う。僕がそう思っている間もエルの愚痴は止まらない。


「お父様も酷いんですよ! 可愛い娘が寝ているところにやって来たと思ったら、無理矢理外に連れ出して空から投げ捨てたんです! 私がスキルを使えないことを知っているのに!」


それであの森にいたわけだな。これだけ聞くと育児放棄に聞こえるからお父さんの名誉のために質問しよう。


「そのお父さんは何か言ってなかった?」


「『立派な竜人族となって帰って来い』とか言ってました。私にそんなこと出来るはずないのに! 酷いですよね?」


エルはこかんむりだが、僕はエルのお父さんの味方をしよう。エルがずっと我が儘を言って、他の竜人族を困らせている様子が頭に浮かぶ。やり方はかなり強引だけどきっと最終手段を使わざる終えないぐらい苦労して来たんだろう。そこからエルの愚痴は夜まで止まることは無かった。


僕らは森で野宿をすることになる。木の枝と林間学校のメモ用に持ってきていたノートを破って着火剤にする。そしてリュックからチャッカマンを取り出すとエルが危険を感じ取る。


「私を食べるつもりですか!?」


「なんでそうなるのかな? これは小さな火を起こす道具だよ。ほら」


「きゃ!? あ、本当です。火が出てますね~」


チャッカマンの最初の音にエルは驚き、火を見ると目を輝かせていた。可愛いんだけど、僕はエルがニート竜人族のお姫様であることを知ってしまったことで可愛さが半減している。というかニートの二人旅状態だ。物凄く心配になる。


無事に火を起こすことに成功した僕らはエルが待ち望んだ夕飯の時間を迎える。


「カナタ~! 早く食べましょう! あれを出してください!」


「はいはい」


エルのお父さんや他の竜人族の人達もこんな感じだったんだろうな。エルが美味しそうに缶詰を食べるとエルの尻尾が激しく動く。それを見た僕は欲求に駆られる。


『触りたい』


僕の前世はきっと猫に違いない。


『ダメですよ。主』


黎明に止められた。しかしこの尻尾を触りたい欲求には勝てない!僕はエルの尻尾を掴む。


「きゃあああ!?」


エルは叫ぶが僕はそれどころではない。


『硬いと思ったけど、スベスベで柔らかく弾力もある。素晴らしい尻尾だ!』


すると僕に静電気が発生する。そこでエルと視線が合うと顔を真っ赤にして、涙目で睨んでいた。そしてエルの角や髪の毛に稲妻が発生する。


『あ、あれ? スキルは使えないはずじゃ?』


「いやぁあああ!?」


「ぎゃあああ!?」


僕は感電して。黒焦げになると意識を失った。


「はぁ……はぁ……。あ、あれ? スキルを使えました? あぁ!? ど、どうしましょう!? もしかして死んじゃいました!? このままじゃ、また一人でモンスターに襲われ」


エルの目が僕のリュックに止まる。そしてエルのお腹の虫が鳴るのだった。こうして僕の異世界生活一日目が終わった。

折角調べたので、トイレットペーパーの歴史について、雑談します。


トイレットペーパーの始まりは紙が出来たことで始まります。それ以前は羊の毛、葉っぱなどでお尻を拭いていたそうです。紙でお尻を拭くと言う文化は中国が最初だったみたいです。


そしてお尻拭き文化で衝撃を受けたのがイギリスの貴族や日本の大奥にはお尻拭き係がいたそうです。イギリスの王の中には素手でお尻拭きをする召使いがいたそうです。


ここで自分の脳裏にもしかしてメイドが?という考えが浮かびましたがこの話は中世ブリテンの話なのできっとメイドさんはそんなことをしていないと自分は考えるようにしました。詳しく知りたい人はネットで調べてみて下さい。

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