#5 スキル獲得と動物念話
まずは僕が獲得出来るスキルの一覧と獲得に必要なスキルポイントを確認する。
鑑定 消費スキルポイント1pt
識別 消費スキルポイント1pt
愛撫 消費スキルポイント5pt
動物念話 消費スキルポイント10pt
手当て 消費スキルポイント3pt
はい。少ない。一つずつ黎明に説明してもらう。
『鑑定は物を調べることができるスキルです。例えば道端の石や売られている武器、食べ物など詳細がわかるようになります。毒がある食べ物もありますから生活にはほぼ必須と言っていいスキルでしょう』
『なるほどね。因みに鑑定が出来ない場合ってあるの?』
『あります。例えば主が持っている物はこの世界の物ではないので、鑑定することは出来ません。他にも魔法やスキルで鑑定を妨害されると鑑定が正しく発揮されないことがあります』
まぁ、これは当然かな。全部鑑定されると不都合なことが起きることもあるだろう。例えば武器で切り札がある場合だ。もし敵に鑑定されるとその切り札がバレることになる。それでは切り札とは呼べない。
後、確認しておかないといけないことがある。
『鑑定結果を偽装とか出来ないのかな?』
『基本的には出来ません。ですが主のように異世界の者がいるならそういうスキルを獲得していてもおかしくはないですね』
賢吾が獲得していそうだと思った。こういう悪いことが出来るスキルは賢吾の大好物だからね。
『というか僕らの他に異世界の人間っているの?』
『いるでしょうね。主を召喚した人間達は対応が良すぎました。過去に何度も勇者召喚が行われているものだと推測します』
確かに黎明の言う通りで彼らは勇者について知りすぎていた。勇者召喚の知識もあったし、過去に使われた可能性は極めて高いと思う。
『黎明は賢いね』
『恐縮です』
とりあえず鑑定スキルは獲得決定。次は識別スキルだ。
『識別スキルは相手のステータスを見ることが出来るスキルです。敵と戦うなら必須のスキルですね』
『これも見れなくなることがあるんだよね?』
『はい。主への識別は我々がさせませんので、安心してください』
頼もしい!プライバシーを守ってくれるのはありがたい。でもこれは黎明達で可能なら色々なスキルで妨害が可能であることを意味している。結局は強いかどうかは自分の判断次第ってことになりそうだな。
このスキルは取るか悩む。何故なら僕は戦う力が無いからだ。戦わないならモンスターのステータスを知る必要はない。これからどう生きていくか決まっていない状態でこれは取れないな。次は謎の愛撫だ。
『生き物の頭や体を撫でると気持ちよくさせるスキルです』
『え? それだけ?』
『それだけです』
『それって何か意味があるの?』
使い道がさっぱりわからない。
『我々は嬉しいですね』
『これって、《動物の守護者》の称号で解放されたスキルだよね?』
『はい。主の愛撫は我々の中でも大評判なのでオススメです』
『薦めれても困るよ!』
だってこれはペット達を喜ばせるためのスキルということみたいだ。ペットはいないし、黎明達も触れないから意味がない。次は動物念話。これも称号で解放されたスキルだろう。
『指定した動物と我々と同じように念話することが出来るスキルです』
これは欲しい!動物好きなら誰でも一度は会話してみたいと思うはずだ。スキルポイントは高いけど、これは取得決定。役立つか分からないけど、欲しいんだから仕方ない。最後は手当て。
『これは手で触れるだけで怪我を回復させることが出来るスキルです。ただ回復と言っても血を止める程度の回復量ですね』
本当に手当てな感じだ。因みに僕が称号で《医者の卵》を取得しているのは、捨てられたペット達の中には怪我をしている子もいる。それらに対応するために僕は動物病院の先生から簡単な治療法を習ったのだ。恐らくそれが関係している。
『とりあえず鑑定、動物念話、手当てを取得しようかな?』
『……そうですか』
愛撫を取得しないから黎明は凹んでいる気がする。それじゃあ、黎明にやり方を教えて貰って取得する。ステータスはこんな感じになった。
名前 カナタ 無職Lv1
属性 無
生命力 50
魔力 0
筋力 50
防御力 25
魔法攻撃力 0
魔法防御力 25
走力 50
知力 30
スキル
手当て 鑑定 動物念話 電耐性 守護獣の加護
称号
《医者の卵》、《動物の守護者》
ステータスポイント0pt、スキルポイント16pt
これでよし。後は職業を何とかしないといけない。無職でも転職する権利ぐらいはあると思う。ルチア姫様が言っていたギルドで聞かないとね。
このステータスだと医者かみんなが言っていたビーストテイマーとかになれる可能性がある。そしたら方向性も見えてくるだろう。するとここで黎明が話しかけて来た。
『我が主よ。一つ話をしてよろしいでしょうか?』
『何の話?』
『モンスターについてです。主にはモンスターと動物の違いを知っておいて貰ったほうがいいと思いまして』
黎明がわざわざ言ってくるということは余程重要なことなんだろうな。
『聞かせてくれる?』
『は! まずモンスターには大きく分けて二種類がいます。まずはドラゴンのように理性があり、強大な力を持つ存在です。彼らの事は主にとってはライオンなどの強い動物という認識で問題はありません。問題があるのはもう一種類の方です』
『どういうこと?』
『もう一種類のモンスターは魔素という物質のせいで理性を失いモンスター化した動物です。こちらのモンスターは人間のみならず野生動物に対しても脅威となる存在でして、もし主の前に現れたら、その時は敵として認識してください』
黎明の危惧が分かった。動物なら助けたいと思ってしまう僕だからこそ黎明はこれを伝えたかったんだろう。
『その魔素ってものでモンスター化した動物は救えないんだ?』
『残念ながら……出来ることと言えば魔素をどうにかするしかありませんが、魔素がどういった理屈で発生するのか分かっていないようです』
それじゃあ、対処が出来ないのも納得だ。まずどういった原因で発生するのか知らないと対処法が立てられないからね。
『私からの話はこれで終わりです』
『ありがと。それじゃあ、今度はスキルの使い方を教えてくれる?』
『は!』
黎明からレクチャーを受けてまずは動物念話を試す。使用するのは近くにいる動物である馬車を引いている馬。スキルの発動方法は言葉か頭で念じると発動出来るらしい。それでは初めてのスキル発動行ってみよう。
『動物念話!』
さて、どうなるかな?僕がわくわくしていると脳内に声が聞こえて来た。
『あぁ~……おもて~。いって!? いちいち鞭で叩いて来るんじゃねーよ! くそ人間が!』
『なんかごめんね~!』
馬車の馬ってこんなこと思っているのか……いや、考えてみると重たい人間や荷物を運ばされて鞭で叩かれているんだ。この気持ちは当然なのかも知れない。
『ん? これは念話か?』
『そうだよ。君が引く馬車に乗せて貰っている人間です』
『おぉ! 守護獣を宿している人間か! なるほどな。それなら俺と念話出来ても不思議じゃねーか』
『わかるんだ?』
『俺も動物だからな。感じ取ることぐらいは出来るさ』
流石に馬は飼ったことも施設で預かったこともないから守護獣の中にはいないはずだけど、そういうのは関係なく動物は守護獣を感知するんだな。
『僕の言葉が分かるってことはもしかして人間の言葉がわかったりする?』
『いや? 知らねーよ。念話は想いで会話するから言葉の理解が必要ねーのさ。知らないのか?』
『初めて使ったからね。教えてくれてありがとう』
『よせよ。人間に礼を言われるなんて気持ち悪い』
そういうものなんだ。やばい…ペット達に結構話しかけていたかも知れない。すると黎明がフォローしてくれる。
『この者が言ったように我々には人の言葉が分かりません。しかしこの念話のように想いは伝わります。だから主の想いは我々にしっかり伝わっていますよ。馴れていないと不気味に感じますが優しい気持ちを向けられて嬉しくない生き物はいません。主はどうかそのままでいてください』
『そっか……ありがとう。黎明』
黎明の言ったことが事実なら物凄く嬉しいことだ。温かい気持ちになったところで次の動物を探す。
馬車は森に入っており、何か動物がいそうだ。すると後ろからカラスらしき黒い鳥が飛んできた。鳥も動物。行けるはずだ。僕は馬車から顔を出してスキルを使用する。
『動物念話!』
『しめしめ。気付いてないな。くそ人間め。俺のう◯こを喰らわせてやるぜ!』
『大ピンチ!?』
僕は馬車の中に慌てて逃げる。屋根付きの馬車で助かった。流石に馬車の中には入って来ないだろう。
『喰らえ! くそ人間!』
『あ、動物念話を切ってなかった。って今、糞したよね!?』
でもこの状態で僕に当たるとは思えない。それならカラスが狙ったのは誰だ?
僕が疑問に思っていると糞が落ちた音が前から聞こえて来た。そして僕は音が聞こえた方を見ると馬車を運転していた騎士がいた。騎士が頭を触っている所を見ると頭に直撃したらしい。
『あ~スッキリした。あばよ~!』
黒い鳥は去っていった。というか鳥の糞攻撃ってわざわざ我慢して、人間を狙っていたんだな。動物念話は色々勉強になる。
一方、運転している騎士は自分の頭に落ちた物を確認する。
「くっせ!」
そうなるよね。暑いからか理由は不明だけど兜していなかったのが災いした。その結果、騎士は馬車を止めると近くにある泉で頭を洗いに向かった。僕もずっと鳥の糞を頭に付けた人と旅をするのはごめんだ。
僕は暇なので使える物を確かめる。
「スマホの電源は入るけど、ネットは繋がらない。電話も圏外。ダメだこりゃ」
賢吾達と連絡が取れれば情報交換とか出来て、お互いに役に立ちそうなんだけどな。現状では連携を取る手段がない。
そんなことを考えていると音が聞こえた。僕が咄嗟に音の方を見ると藪の中から黄色い尻尾が見えていた。その尻尾が近付いてくる。
『ヤバい……モンスターかな?』
『その可能性が高いです。警戒してください。主』
こっちは丸腰だ。ここは全力で逃げるしかないか!
尻尾が見えなくった。来る!
「ガオー!」
「……は?」
僕は目の前に服がボロボロの金髪の女の子が現れた。