#44 リスの亜人
数日後、僕達のところにラタトスクの亜人達がやって来た。
「お前らが依頼主だな? 本当に人間がこの森に住み着いているとはな」
頭に鉢巻しているお爺ちゃんのリスの亜人が話しかけて来た。確かに頑固そうな雰囲気だ。
「初めまして。人間のカナタと言います」
「ふん。ラタトスクの亜人でトンカチだ。こっちは孫娘のカンナ。その兄のバールだ」
バールさんは軽くお辞儀し、カンナちゃんはトンカチさんの後ろに隠れて出て来ない。やっぱり人間は怖いよね。それにしても名前から見て、きっと大工道具の名前から付けている。トンカチやカンナは間違いなく日本語だからきっとこの先祖に日本人が関わっていると思う。
「わしらは暇じゃねー。とっとと仕事に入らせて貰う。今からこの人間と話し合いをするからカンナを頼むぞ」
「はい。棟梁。カンナ、賑やかそうなあっちに行こうか」
手を繋いでエル達のほうに向かった。するとトンカチ棟梁が聞いてくる。
「上手く行くんだろうな?」
「大丈夫だと思いますよ。これが約束の品です」
僕はカードゲームのデッキをトンカチ棟梁に渡した。
「こんなもんでカンナが喜ぶかね~……分かっていると思うがもし喜ばなかったら、仕事は無しだからな」
「分かっています。少ししてから様子を見に行きましょう」
そして僕達がエル達のカードゲームの様子を見るとそこには夢中になっているカンナちゃんの姿があった。
「来た! 行きますよ! ガロロ! 天に轟く雷鳴と共に現れよ! 【雷竜エル】を召喚!」
「おぉ~! なんかお姉ちゃん、かっこいいでやんす!」
「は! 来やがったな! 返り討ちにしてやるぜ!」
「頑張るでやんす! 狼のお兄ちゃん!」
物凄い人見知りな感じだったけど、実際は元気な子だったんだな。
「おいおい……あんなカンナの様子は見たことねーぞ」
「まぁ、説明は後で。それよりも今は」
「わかってらー」
トンカチ棟梁がカンナちゃんの所に向かう。
「あぁ~……カンナ。ちょっといいか?」
「何やんす? じぃじ?」
「実はそいつらが使っている物と同じもんをじぃじも持っていてな。カンナにあげよう」
「え!? 本当でやんすか!? ありがとう! じぃじ! だーい好き! これであたしもカードゲームが出来るでやんす!」
トンカチ棟梁に抱き着く程の大はしゃぎだ。そしてハクアがデッキの説明を僕の代わりにする。流石に僕は出来ないだろうからね。事前にハクアに説明をしておいた。そしてトンカチ棟梁が言う。
「……仕事は無しだな」
トンカチ棟梁がそう言うとホゥがおちょくる気満々の顔で現れた。
「むっふっふー。あんなだらしない顔をしておいて、それは無いんじゃないかなー? トンカチ棟梁。それにカンナちゃんは喜んでいるよ?」
「お前……見てやがったのか」
「ホゥちゃんは何でも見てるんだよー」
「ち……まぁ、約束は約束だ。作ってやるよ」
そこからは家の話をする。するとやはり亜人と人間の家にはだいぶ差があることが判明した。まず彼らの家はぶっちゃけ木を蔓で繋げただけの家らしい。こうなると床は当然凸凹になるし、蔓が解けたら家は倒壊することになるだろう。そんな危ない家に住みたくない。しかし彼らのやり方にいちゃもんを付けるのも問題な気がする。
「さて、どうしたもんかな……」
「あの……すみません。ちょっといいですか?」
「君はお兄さんのバールさんだったかな?」
「はい。あの……我々が作る家と人間が作る家ってだいぶ差があると思うんですが、大丈夫でしょうか?」
「さっき話を聞いて困惑している所だよ」
パールさんが頭を抱える。
「やっぱりそう思いますよね……」
「わかるんだ?」
「はい。私達が住んでいる家は先祖の人間が作った家ですから自分達が作る家と比べ物にならないほど立派なのはみんな分かっているんです」
なんとなく察していたけど、彼らの先祖はやっぱり大工さんだったみたいだ。
「その人間から家の造り方とか教わらなかったの?」
「一緒に作ったそうなんですけど、肝心の所が何も残っていないんですよね。死んでしまった先祖が残した物も少しだけ読み方が伝わっているだけで読めないんです」
もしかして家の造り方とか残しているのかな?だったら、行けるかも知れない。きっと日本語だろうからね。
「それって見せて貰えないかな? きっと読めると思うんだけど」
「本当ですか! では覚えているので、地面に書きます!」
書かれたものに僕は絶句した。
欲しい物
・トンカチ
・ハサミ
・きり
・カンナ
・クランプ
・銅線
・釘
・パール
・すし
・焼肉
・すき焼き
・アイスクリーム
・コーヒー
・パンツ
・エロ本
ここで僕はパールさん止めた。変な方向に向かっているのが分かったからだ。
「もしかして読めたんですか?」
「うん。でも欲望が書かれているだけで家の造り方とかは書かれていないよ。後、これを子供の名づけに付けるのは止めた方がいい」
いつの日かエロ本君とかエロ本ちゃんとかが現れた大変だ。将来その名前を付けられるかも知れない子をここで救わないといけないと思った。
「はぁ……一応意味など教えて貰いますか?」
嫌だと思ったけど、説明した。するとパールさんは顔を真っ赤にして、僕が言ったことを理解してくれた。こういう反応を見ると自分が汚れている気がして来るね。さて、これで家の造り方が分かる手段は一つしかない。
「僕の友達が家の造り方に詳しいから聞いてみる?」
「え!? 良いんですか!?」
「僕もいい家に住みたいからね」
そこであっきーに連絡を入れて、作り方を教して貰おうとしたが簡単には行かないようだ。
『一言で木で家を造るといっても色々な手法があるぞ。大工道具がないならまず何があって、何が出来るのか教えてくれ』
『なんか本格的だね』
『当たり前のことを聞いているだけだぞ?』
そこでバールさんがスキルで木を加工する技術はあることが判明し、僕の筆記用具の中には定規と罠用のロープなどがあることでなんとかあっきーは家を造ることが出来ると言ってくれた。
そして造り方を僕が説明することになるんだが、あっきーではなく何故か僕がバールさんから尊敬の目で見られる。説明しているのが僕だからどうしようもないのかも知れないけど、何度も僕じゃなくてあっきーが教えてくれたことだと説明した。
『凄いね。わざわざ穴をあけて、そこに木を入れることで釘の代わりにしているんだ』
『そういう事だな。釘とかがない時代はこうやって家を造っていたらしいぞ。正確に測らないと出来ないことだから定規があって、良かったな』
『まさか定規が役に立つ時が来るなんてね』
『分からないもんだよな』
数学のグラフで線を引く時に使ってから出すのが面倒臭くて入れっぱなしにしていた定規だ。時には面倒臭い気持ちも役に立つものだと思った。
更にあっきーが地形を聞いて来た。
『川が近くに会って、水溜まりがすぐ出来るならなるべく高さを出した方がいいな』
『どんな家を造るつもりなの?』
『材料からしてログハウスを造ることになるな。ただし地べたに造るログハウスじゃなくて支柱を地面に埋め込んで地面から浮かすログハウスを造るべきだ。恐らくその地形で普通のログハウスを造ると床上浸水になるぞ』
なるほど。確かにそれは勘弁して欲しい所だ。こうして造る家の話はまとまったわけだけど、ここで問題が発生する。
「お前がこいつと家を造らせて欲しいだと? ふざけたことを言ってんじゃねー! お前のような半人前に何が出来るって言うんだよ!」
「確かにまだまだ実力不足なのは分かってます! だからこそあの人から技術を学んで我が家と同じような家を造りたいんです! 許可してください! トンカチ棟梁!」
「生意気な事を言ってんじゃねー! 小僧はすっこんでろ!」
二人が喧嘩してしまった……バールさんが帰って来る。
「もしかしなくても仲悪いんですか?」
「えぇ……トンカチ棟梁は自分の仕事に誇りを持っているんです。だから全然仕事を任せてくれなくて、いつもお手伝いばかりされているんですよね……ははは」
執事のお手伝いをしていたからシンパシーを感じてしまった。すると騒ぎを聞きつけたカンナちゃんがやって来る。
「お兄ちゃん! またじぃじに怒られたでやんすか?」
「あはは……違うよ。カンナ。この人から人間の家造りを教わってね。一緒に造って見たかったんだけど、許可して貰えなかっただけだよ」
「そうなんだ……良かったやんす。ん? ということはお兄ちゃんはその人間と仲良しになったってこと?」
「まぁ、そういう事になるかな? この人はご先祖様のように優しい人だよ」
「お……お兄ちゃんが取られたでやんすーー!」
猛ダッシュで行ってしまった。
「これって、僕が悪者になってない?」
「す、すみません! カンナの誤解を解いて来ます!」
しかしそれよりも早くエル達がやって来る。
「「「「泣かせたー」」」」
「これって僕が悪いのかな……」
まぁ、泣かせてしまったことは事実だし、何かお詫びとトンカチ棟梁にバールさんが許可を貰えるように何か作るとしよう。




