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#41 騎士団襲来とカナタが選んだ道

アークスさんが王都に着いてから二日が経過した夜。王都で動きがあったことが賢吾との念話通信で判明する。


『悪い……真央の奴に言葉攻めにあった』


『わざと変に言っているよね? しかもそれって、自分に返って来ているよ?』


『そうだな。これは聞かなかったことにしてくれ。本題に入るとお前の生存とお前と亜人との関わり、手紙の連絡手段、ディザスターモンスターの討伐の件がバレた。念話の事は手紙で誤魔化してバレてはいないが連絡役の人に伝えてくれ』


『了解。僕がお世話になっている田舎貴族さん達のことは何処までバレているの?』


『お前が名前を明かさなかったことが幸いしてな。田舎貴族と村娘という情報しか出ていない。後はお前次第だ』


因みに名前を伏せさせたのは賢吾とフーリエさんの指示だ。ここで僕は疑問を賢吾に言う。


『分かったのっていつの話?』


『昼だ。どうしてすぐに動かないのか疑問か?』


『うん。あ、もしかして僕がお世話になっている田舎貴族さん達が帰って来るのを待っているのかな?』


『正解だ。真央はお前を狙っているが腐った大臣どもの狙いは田舎貴族で間違いない。動いていないのがその証拠だな』


また気になることを言ったな。


『真央の奴は来ると思う?』


『あいつにそんな度胸があると思うのか? この国の法律でお前を死罪にする気満々だよ』


『それは勉強不足だね。ま、真央に言っても無駄な事だけど』


真央は勉強とは無縁の奴だったからこの世界でもきっと変わらないだろう。


『それじゃあ、俺はお前に言い負けて帰って来る騎士どもの顔を楽しみにして、待つとするか』


『あぁ……もしかして今、ピンチだったりする?』


『安心しろ。俺だけが牢屋に入っているだけだ。現に主犯は俺のようなものだがな。ま、脱獄する準備は整っている。脱獄のついでにお前に負けた騎士達の顔を見学するとしよう』


賢吾がそういうなら本当に脱獄しちゃうんだろうな。そしてその後は単独行動を取って、情報収集をするだろう。


『一人で逃げ出すと葵達に怒られるよ』


『仕方ないだろう? ここには俺しかいないんだからな。今までお前のフォローをして来たんだ。今度はお前がフォローしろ』


なんとも賢吾らしい。


『分かったよ。それじゃあ、僕も動くね』


『あぁ。遠慮はいらん。ボコボコにしてやれ』


騎士達に相当フラストレーションが溜まっているようだ。それは葵達も同じで昨日の愚痴のマシンガントークは凄まじかった。


僕はフーリエさんに事情を説明して、守護獣を贈呈する。


「贈呈! ハム(ぞう)


現れたのはハムスター。名前の由来は服部半蔵(はっとりはんぞう)。名前を考えるときにゲームのガチャで決めることにして、出て来たのが服部半蔵だったからハム蔵となった。


「か、可愛い……良いんですか? 私に守護獣を与えたりなんかして」


「色々お世話になりましたから。後、どれだけ時間が掛かっても構いませんからルチア王女様などに触れさせていただけるとありがたいです」


「なるほど。そういう事ですか……分かりました。では、お先に失礼致します」


こうしてフーリエさんは先に村を出た。僕はリースから村に到着する時間を聞いて、準備を整えた。そして運命の時が来た。


「【聖竜エル】を召喚! マジックカード! 【竜の宝玉】を発動します! これで裏守備表示モンスターを攻撃! 撃破したのでカナタのライフを一つ奪います!」


カードゲームの真っ最中に騎士達が突撃してきた。


「そこまでだ! 観念しろ!」


「ちょっと待ってください! もう少しでカナタを倒すことが出来るんです!」


「【守護獣風太郎(ふうたろう)】のリバース効果が発動。デッキの上から一枚破棄」


「計算通りです! これで壁役はいません! 【雷竜エル】でカナタに直接攻撃」


「「「「無視するな!」」」」


騎士達に外へ強引に連れ出される。そこにはアークスとリース、そしてルチア王女と一緒にいたエルフと僕が知っている騎士、多くの村人達がいた。


「ふん。久しぶりだな。無職の出来損ない。まさか生きているとは思ってなかったぞ」


「その節はどーも。お金を支払って僕を殺そうとした騎士様だったかな?」


最初の頃に馬車の騎士にお金を渡していた騎士だった。


「さて、これはどういうことだ? ブルンハイム卿。この村に竜人族と暮らしている人間がいるとは聞いていないぞ」


「そんなことを言われてもな。私にも意味が分からない。どういうことか説明してくれるかな? カナタ君」


「私が黙って彼女と暮らしていました。何か問題がありますか?」


「これだから異世界人は困る。調査に来て正解だった」


へぇー。調査で来たんだ。カリュドーンボアの事を全く調べに来なかった癖にね。まぁ、エルの事は賢吾に伝えているから安全だと思ってここに来たんだろう。


「いいか? モンスターを飼うことは法律で禁止されている。よって、貴様には死罪を言い渡す!」


「モンスター? 何処にモンスターがいるんですか?」


何処を見渡してもいないね。


「そんなことも分からないのか! そこにいる竜人族だ!」


「彼女は亜人であって、モンスターではないはずですが? 法律にも亜人がモンスターという記載はありませんでした。よって、あなた達には僕を裁くことは出来ません。法律を変えてから出直して来てくださーい」


法律を語るならせめて法律を学んでから来て欲しいものだね。


「な、何を馬鹿なことを言っている! 亜人はモンスターに決まっているだろう!」


「あなたの勝手な思い込みで国の法律を曲げないでくれます? では、お聞きしますがそこのエルフの方はどうなっているんですか? 彼女はエルフ。つまり亜人ですよね?」


「ふん。エクリス様は国王様が特別に許可を出している亜人だ。そこにいる竜人族とは格が違う」


出たよ。王族だけの特別待遇の法律。これでエルフを仲間にしていたんだな。納得した。因みにこれを聞いたエルはムッとしている。


「なるほど。それは知らず申し訳ございません。ですが法律で亜人をモンスターと定義することは不可能なんですよ」


「なんだと?」


「だって、亜人をモンスターと定義すると奴隷として亜人を使えなくなります。さて、この国の貴族に一体誰だけ人が亜人の奴隷を持っていますかね? モンスターと定義した瞬間、彼らは僕と同じ罪になります。法律を変えることなんて出来ると思いますか?」


「そ……それは……」


亜人の奴隷は貴族の他にも商人などが使っているそうだ。何せ人間よりもステータスが高いから貴重な労働力となる。それを失うと大打撃となるだろう。ま、これを決断するのは国だ。僕は関係ない。アークスさんが前に出る。


「確かに君の言う通りかも知れないが竜人族は危険な亜人だ。到底村で暮らすことは許可出来ない。即刻この村から出ていきたまえ!」


「お父様の言う通りです! 騎士様達もそう思いますよね?」


「あ……あぁ! その通りだ!」


僕はこの時のリースの辛そうな顔を忘れることは無いだろう。本当に僕は罪深い。いくらアークスさんとリースに危害が(くわ)わらないようにするためとはいえ、リースにあんな顔をされてしまったのは、他ならない僕だからだ。


「分かりました。領主様がそうおっしゃるなら従います。エル、出て行こう」


「はい」


僕とエルが森の中に入ると目の前に魔方陣が展開され、騎士達が現れる。これが転移魔法か。厄介な魔法だな。


「「「「はぁあああ!」」」」


「カナタには指一本触れさせません! 雷撃!」


「「「「な!? ぎゃあああああ!?」」」」


襲い掛かって来た奴らが黒焦げになる。


「な!? おい! スキルを使ったぞ!?」


「どういうことだ!? 情報ではスキルを使えない雑魚じゃなかったのか!?」


「それは私の事ですか?」


「「「「ひ!?」」」」


再び森で雷鳴が発生する。彼らはエルがスキルを使えるようになったことを知らなかった。そりゃそうだ。僕はこのことを賢吾達には伝えていない。カリュドーンボアを討伐したことから少しは推理出来そうなものだけどね。


「こんなの聞いていないぞ! 引け!」


「村に向かえば手出しは」


「そんなこと、僕が許すと思っているの?」


騎士達に白虎とストームウルフ達が襲い掛かった。転移魔法はそこに術者がいないと当然転移することは出来ない。楽勝だと過信して、術者を連れてこなかった彼らの失策だ。僕を殺そうとした騎士が言う。


「な!? 白虎にストームウルフだと!? 貴様、モンスターと手を結び」


「ご名答。そしてこれを知った以上は生かして返す訳には行かないね。ガロロ」


「待ってたぜ! アニキ」


ガロロが準備運動をしながら現れる。ガロロ達には人間に復讐する権利があるからこいつの始末を任せることにした。


「な!? 亜人!? ま、待て! 我々に手を出せばどうなるか分かっているのか!?」


もう手を出している状況でそんなことを言われてもね。


「知らないよ。だって、ここはルーナリア王国じゃない。だからあなた達は僕達を襲って来たんでしょ? 罠とも知らずにさ」


「な……」


こんな手段に出ることは誰でも想像できる。ましてや僕を殺すという目的が明確だったからそこに保険を賭けておくのは当然のことだよね。


「最後にいいことを教えてあげるよ。法律は命を守ってくれるものじゃない。よく覚えて地獄に行くんだね」


「な、舐めるな! く」


僕が小石を投げつけると盾でガードされる。しかしこれで僕にも経験値が入る。


「嵐牙!」


「ホーリーシールド!」


盾が光り輝いて、バリアを展開する。そんなのお構いなしにガロロは手を構えて嵐牙を放つ。すると噛み付こうとしている風の狼が高速回転しながら騎士の盾にぶつかる。するとここで貫通スキルの効果が発動し、バリアと盾をすり抜けて騎士の腹に嵐牙が命中する。


「何!? あぁあああああ!?」


腹をえぐられながら、ぶっ飛ばれて、木にぶつかる。


「やっていいぞ。お前ら」


「「「「嵐爪!」」」」


ストームウルフの獣人族達が爪を振るうと無数の風爪が騎士に襲い掛かり、身体中から出血する。ボロボロの状態の騎士にガロロは近付く、最後は自らの爪で止めを刺した。


こうして僕はルーナリアの騎士達を全滅されて、ロメリアの村での生活に別れを告げるのだった。するとエクリス様と呼ばれたエルフが転移魔法で現れた。


「派手にやりましたね」


「迷惑でしたか?」


「いいえ。彼らが色々悪さをしていることは分かっていました。ゴミ掃除に使ってしまい、すみません」


このエルフ、結構腹黒だな。


「えぇ。多少腹黒でないとルチアを守れません」


心を読まれた!?っていうかルチアだって?


「もしかしてルチア王女とは」


「ルチアとは親友ですね。子供の頃からの付き合いで苦労させられています」


僕は何故かエクリスにシンパシーを感じてしまった。


「あなたはこれから亜人の樹海で亜人達と暮らすと言うことでよろしいんですね?」


「はい」


「これは茨の道ですよ。それでも進むんですね?」


「はい。確かに茨の道かも知れませんが正しい道だと信じてますよ」


僕の回答にエクリスは笑みを浮かべる。


「真っすぐでいい目です。守護獣があんなにも宿る理由が分かった気がします。あなたを見込んで一つお願いを聞いてくれませんか?」


エクリスが魔方陣が描かれた絨毯を取り出す。


「これには転移魔方陣が描かれています。これを安全な所に飾っておいて欲しいのです」


「ルチア王女の逃げ場としてですか?」


「えぇ。今のルチアにはお城で何かあった場合に逃げ場がありません。もし何かあった時の為に安全な逃げ場を確保しておきたいんです。引き受けてくれますか?」


「分かりました。安全かどうか分かりませんが預かっておきます」


こうして僕は転移魔方陣が描かれている絨毯を受け取った。


「ありがとうございます。それでは竜人族のあなた、一つ派手な攻撃をあちらの方向にお願いします」


「仕方ないですね。竜人族の必殺技を見せて上げます! すぅ……ドラゴンブレス!」


エルの口から集束された風と雷が放たれ、森の木々を一瞬で貫通し、空へと上げっていく。そのとんでもない一撃をロメリアの村のみならず、ルーナリア王国の王都でも目撃された。因みにドラゴンブレスという名前は僕がエルに教えて気に入っている。


「なんだ!? あれは!?」


「ロメリアの村の方角だぞ!?」


「ま……まさか……今のはドラゴンの息吹スキル!? あの村に居る竜人族はスキルを使えないんじゃ無かったのか!?」


「お、おい。この国は大丈夫なんだろうな? まさか仕返しに襲って来るなんてことは無いよな?」


ルーナリア王国の騎士と大臣達の様子を城の上で賢吾は見ていた。


「くくく。カナタに騎士達がやられて慌てふためくのを見れると思ったら、最高の見世物だな。本当にお前はいつも俺を楽しませてくれるよ。カナタ」


賢吾は葵達を監視している騎士に葵達の写真を渡して買収していた。監視している騎士達がいつの間にか葵達に好意を抱いていることを見切った上での買収だった。これにより、あっさり脱獄に成功するのだった。そして賢吾は告げる。


「今まで散々やってくれたんだ。俺達を怒られたら、どうなるかたっぷり教えてやるから覚悟しておくんだな。腐りきった大人共」


そう言うと賢吾は消えていなくなるのだった。

ここで第一章を終わりにしようと思います。


次は亜人の樹海での生活がメインの話となっております。新しい亜人と新たな敵が登場する予定でいますので、お楽しみにです。

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