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#33 ウインドウルフの獣人族

僕達は森で睨み合いを続けている白虎達と合流し、僕は森の奥に声を掛ける。


「僕は人間のカナタ! ウインドウルフの獣人族のガロロ! 応じる気があるなら出てこい!」


これで無視されると僕は森で大声を出している変な人になるから無視はしないで欲しい。


「ふん! 誰から俺の名前を聞いたか知らないが用件があるならそっちから来たらどうだ?」


「分かった。そういうなら今から向かう。みんな、行こうか」


僕達は罠があるところを抜けて、ハクア達の縄張りへと入る。すると緑の毛並みの狼達が現れた。そして白虎とウインドウルフがお互いに威嚇し合う。そんな中、僕は前に出る。


「カナタ!?」


「ガァアア!」


「ひゃ!? ごめんなさい!」


エルはハクアの後ろに隠れる。


「……そこで逃げないで欲しい。色々台無し」


「し、仕方ないじゃないですか!」


エルの気持ちはよくわかる。正直僕も怖い。でもここで引くわけには行かない。


「約束通りやって来たよ。そっちは約束を破るのかな?」


「なんだと!」


「おい! 人間の挑発に乗るな! 白虎と竜人族と一緒にいる人間なんだぞ!」


ぞろぞろウインドウルフの獣人族が現れた。ランプで照らすと確かに怪我をしている。それにほとんどが子供だ。ランプで照らしたことで向こうは威嚇しながら距離を取る。エルとハクア達の効果は抜群だな。すると最初に聞こえた声がした。


「お前ら、邪魔だ」


ウインドウルフの獣人族達が道を開けると彼らと同じくらいのウインドウルフの少年が姿を見せた。あの年でリーダーをしているのか……凄いな。


「俺がガロロだ。言っとくがここは返さねーぞ。返して欲しかったら、そこの白虎達だけで実力で奪ってみろよ」


何気に僕とエルの参加を拒否してきたな。昨日のエルの放電が効きすぎたのかな?


「……いきなり襲って来た癖によく言う。そっちがその気なら」


「はーい。そこまでー」


姿を消していたホゥが現れた。


「悪いのは、ガロロ君達の方だよー。それぐらいは分かっているよねー?」


「うるせー! お前のせいで俺達の仲間はたくさんあいつに殺されたんだ! 今更お前達が決めたルールなんて従えるかー!」


「おい! 待て!」


一人のウインドウルフの獣人族がホゥに襲い掛かった。かなり早いけど、目で追えている。そしてウインドウルフの獣人族が飛び上がると空中で動きが止まる。


「こう見えてホゥちゃんは結構強いんだよー」


「が!? ぐ……ぐるし……」


あれはまさか念力だろうか?初めて超能力をまじかで見たぞ。


「おい! やめろ!」


「お姉さんへの口の聞き方がなってないー」


「ぐ……やめてください」


「良く言えましたー」


ウインドウルフの獣人族が解放される。なんかガロロがホゥにいいように遊ばれている感じがするな。それを見たハクアが感想を言う。


「……流石不意打ちしか出来ない卑怯者」


「なんだと!」


また一発即発の状態になる。


「やれやれー。ここは人間のカナタ君に任せるよー」


「ここで丸投げするの?」


「もちろんだよー」


何か考えがあるように思えるんだけど、読めないんだよね。


「あぁ……一応君達の状況はホゥから聞いたよ。ディザスターモンスターに縄張りを襲われたんでしょ?」


「俺の名前を教えたのはお前か……確かに俺達は住処を化け物に襲われて、たくさんの仲間を失った。それでお前は何が言いたいんだよ?」


「ホゥの話じゃ、その化け物は君達を追ってここに向かって来ているらしい。はっきり言うけど、ここで僕らが戦っても時間の無駄でしかない。その化け物が倒されるまで休戦しない?」


「へー。ディザスターモンスターを倒すつもりなんだー?」


どうやらホゥは何か誤解しているみたいだ。


「僕は倒さないよ?」


「……え?」


ホゥが初めて固まった気がする。


「だって、彼らは結局縄張りを奪われたからここに来たんでしょ? それだったら、人間にディザスターモンスターを倒させてから縄張りに帰ればいいじゃん。そうすれば被害は出さずに縄張りに帰れるでしょ?」


「「「「確かに」」」」


ホゥ以外の全員が納得する。


「ちょっと待ってよー! そこは力を合わせて戦おうとか言う所じゃないのー!?」


「僕は勇者じゃないし、任せられるところは任せる主義なんだよ」


元の世界でも賢吾達に結構任せている。僕の話を聞いたガロロが僕の提案に答える。


「話は分かった。だがお断りだな」


「どうして?」


「決まっている。人間の言う事なんて聞けるか!」


ウインドウルフの獣人族が賛同の声を上げる。やっぱり無理か……散々人間に家族や仲間を誘拐されて来たんだからこの反応は当然だ。だからと言って、彼らを放置したら、死ぬ可能性が高い。ほっとくわけにはいかないな。


「そっか。なら戦って決めよう。それがこの森のルールなんでしょ?」


流石にエルとハクア、ホゥは驚く。僕が強くないのは知っているからね。


「は! 別にいいが殺すぜ!」


「いいよ。僕が勝ったら、停戦の申し出を受けて貰う」


こうして僕とガロロは戦うことになった。


「まずはお手並み拝見と行くか! 風爪!」


ガロロが爪を振るうと鎌鼬(かまいたち)が発生し、僕は斬られる。顔から血が流れて、膝を付く。


「おらおらおら!」


更にガロロは連続で爪を振るうと僕は体中斬り刻まれて、地面に膝を付く。


「(滅茶苦茶痛い……けど)」


「何だ? 全然大したこと……ん!?」


僕に付いた傷から光が放たれ、傷が閉じる。僕に状態異常は通用しない。


『我が主を舐めるとはいい度胸だな。小僧』


僕の前に黎明が現れる。そして僕は立ち上がった。


「守護獣だと!?」


これにはウインドウルフ達が動揺する。


『諦めろ。お前のような小僧では我が主の足元にも及ばん。大人しく主の提案を受けるんだな』


「は! 守護獣を宿していても人間だろうが! 遊びは終わりだ! 獣化!」


ガロロが亜人の姿から通常のウインドウルフより大きな姿に変化する。それでも大型犬レベルだ。


「ワオーン!」


雄叫びを上げると僕の首を狙って飛び掛かって来た。獣になるとさっきより速いけど、まだ目で追えている。僕は腕を差し出す。本気で殺しに来ている狼の攻撃を止める為には腕に噛み付かせるしかなかった。


「いいぜ! その腕噛み千切ってやるよ!」


獣状態で話せるだね。そう思えるほど僕には余裕があった。そして僕の腕はガロロに噛まれる。


(何だ? 噛み付いているのに血の味がしない? それに硬い! これが人間の皮膚か!?)


僕は腕に噛み付いているガロロを空いている腕で抱きかかえる。


「てめ!? 何のつもり」


「ごめんね」


「何謝ってやが」


噛まれていた腕が空き、ガロロの頭を優しく撫でる。この瞬間、愛撫スキルが発動する。


「な、何だ~!? これぇぇ~!? ……や、やへろぉぉ~」


ガロロは人の姿に戻ったが僕にまだ抱きしめられている。


「僕は人間が君達にしてきた罪の一部を知っている。だから人間として僕は君達に謝らないといけない」


経験から言うと奴隷や遊女、亜人達へのいじめは人間の罪の一部分でしかないと思う。僕に何ができるかわからないけど、まず謝罪から入らないと何も始まりはしない。


「人間が君達にした罪を無かったことにすることは出来はしない。でも、償うことは出来ると僕は思っている。その為にはまず僕は君達を助けないといけない。だから僕の提案を聞いてくれないかな?」


「うぅ~……わ、わかったから、その手をやへろぅぅ~」


僕は愛撫を止めるがガロロの体は力が入らず、動けない。


「く……負けを認めたんだから、さっさとこの手もどかせよ!」


「え? いやー、それは止めといたほうがいいと思うよ?」


「うるせー! いいから解放しろー!」


暴れるガロロにホゥが状況を話す。


「まさかガロロ君が女の子に裸を見せる趣味があったなんてホゥちゃん知らなかったよー」


「そんな趣味あるか!」


「だって、カナタ君から離れたら、こっちから丸見えだよー?」


ガロロは自分の状況に気が付いた。獣化が解かれたことでガロロの今の姿は裸だ。後ろからは丸見え状態だが、仲間だからまだセーフだろう。


しかしガロロの前、つまり僕の後ろにはエル達がいる。もし僕がガロロの立場でもし見られたら、一生の傷になること間違い無しだ。


「な!?」


ガロロが顔を真っ赤にして、下を手で隠す。そこを女の子に見られたくない気持ちがあって、良かった。それがどうしたとか言いながら仁王立ちしたら、どうしようかと思ったよ。


因みに僕は裸のガロロを抱きしめている状況で既に傷をおっている。葵達がこの場にいなくて本当によかった。一生これで弄られるだろうからね。


「そのままじっとしてて」


僕は上着を脱いで切り傷がない背中部分を前にする形で腰に巻いた。これでとりあえず最低限隠さないといけないところは隠せた。


「お前、それ」


「ん? あぁ……これ? 君達の能力は聞いていたからその対策だよ」


僕の体には木が沢山取り付けられていた。いわゆるウッドアーマーだ。これを僕は装備してから上着を着ていた。木は軽いし、狼の牙や爪くらいなら守れる強度はある。


流石に何度も攻撃させると突破されるかも知れないけど、元々腕に噛み付かせて抱きしめる作戦だったから、ウッドアーマーが一番都合が良かった。この作戦の参考にしたのはテレビで見た警察犬の訓練だ。犯人役の人が腕を噛まれる奴を主出して考えてみた。


「待てよ! お前は風爪を受けて、膝を付いただろ!?」


「あれは演技。僕が膝を付かないと警戒していたでしょ? ほら、これも着て。これでよし」


ウッドアーマーを外してシャツでガロロの後ろを見えなくした。これで僕は上半身が裸になったけど、ガロロの尊厳を守る為ならこれぐらいはする覚悟だ。


「残念ー。でも森の監視者であるホゥちゃんはいつでもみんなの成長を見守っているから問題無かったりするんだよねー」


「おい! それはどういう意味だよ!」


いつでも覗いている覗き魔宣言だったと思う。


「わ、私はセーフですよね?」


「……不公平。エルも裸になるべき」


「嫌ですよ!」


「ホゥちゃんはいつでも待っているよー」


「待たないで下さい!」


すっかり和んでしまったが、とりあえずこれでウインドウルフの問題は片付いた。後はディザスターモンスターがどうなるかだ。

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