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#31 クロスボウトラップと白虎への襲撃

リースの機嫌取りなどをしていた僕に癒夢ちゃんから手紙が届いた。そこにはお酒から消毒液を作る方法である蒸留について、書かれていた。


「わざわざ絵まで描いてくれるなんて頼りになる」


本当に見やすく書かれている。だからこそ今、足りない素材がはっきりわかる。一番の問題となるのは氷だ。この世界に来てから見たことがない。アークスさんに聞いてみる。


「氷かい?」


「はい。手に入りませんか?」


「氷は氷魔法で作れるが手に入れることはこの季節では無理だね」


「暑いからですか?」


「正解だよ。この町に氷魔法が使える人が居ればいいんだけどね」


冒険者に依頼する手もあるけど、氷魔法の使い手は少ないらしい。つまりかなりの高額で雇うことになる。それを消毒液を作る期間、ずっと依頼することに考えるととてもじゃないがお金が足りない。


この結果、気温が下がるのを待つことにした。それからこつこつとお金を稼いだ僕は念願のクロスボウを手に入れた。このクロスボウは木製の単発式で最も安いクロスボウだ。


「そのクロスボウを買って何を考えているんだ? まだステータスも必要なスキルも取っていないようだが?」


「罠と連動したクロスボウを作れないかなと思いまして」


イメージ的には糸で足を引っかけるとクロスボウが発射されるトラップだ。あれを上手に作れたら、罠の発動と共に木の上に設置したクロスボウが自動で標的を狙えるトラップを作れるんじゃないかと思った。


「凶悪な罠を考えるな」


「僕は戦えませんからね。こういうところで知恵を絞らないといけないんですよ」


僕がマリドの町で買い物している間に亜人の樹海では、厄災が発生していたことを僕は知る手段がなかった。



帰って来た僕は早速罠の作製に入る。まず木の上からボーガンを撃って、標準を定めると木に固定する。後は引き金が自動で引かれるようにマジックアイテムの縄をセットすれば準備完了。後はハクア達と村人にここには近づかないように言えば大丈夫だろう。


そしてその日の夜に念願の時を迎えた。


『どうやら経験値が入ったようです。主』


『やった! それじゃあ、ボアラを倒したってことだよね?』


『はい。おめでとうございます』


ここに来てから既に数か月が経過して僕はやっとモンスターを一人で倒すことに成功したのだった。しかしそんな僕をよそに事件は起きる。


翌日の夜、エルとリースとカードバトルをしていると傷だらけのハクアがやって来た。


「……負けた」


それだけ言って、ハクアが倒れる。


「ハクアちゃん!? どうしたんですか!? ハクアちゃん」


「リース! 下手に動かしちゃいけない! 僕が見るから代わって」


「は、はい……すみません」


僕はハクアの傷を確認する。無数の噛まれた傷に加えて、爪に引き裂けれたような怪我をしていた。酷い怪我だけど、これならなんとかなる。


「治癒!」


ハクアの傷が治り、顔が安らかになる。


「カナタ様? ハクアちゃんは」


「出血が酷かったけど、もう大丈夫だよ。リースには悪いけど、ハクアを見ててくれる? エル、悪いけど一緒に来てくれない?」


「えぇ!? 危ないですよ」


「だから来て欲しいんだよ。ハクアがこんな状態だったら、白虎達も怪我をしていると思う。それに今まではハクアがこの村を守っていた。それが崩れたとなるとこの村がどうなるか分からない。だから行かないといけないんだ」


エルがおろおろするとハクアに目が止める。するとエルは覚悟を決めた。


「わかりました! 行きます! でも、戦闘は出来ませんからね!」


「分かってるよ。僕も死ぬつもりはない。アンドレイさんに助けて貰おう。一応エルは剣を持って」


「え、でも」


「ハクアでこんな状態なんだ。武器がないと大変なことになるよ」


エルは僕が最初の騎士から奪った剣を手に持ち、僕達はアンドレイさんの所に行き、一緒に森へ様子を見に行くとすぐに白虎達を見つけた。やはり全員が傷付いている。


「白虎の群れが全滅だと!?」 


「それに白虎達の住処はもっと奥のはずです。こんなに村から近い森にいるなんて」


「あぁ……っ!」


アンドレイさんが森に銃を構える。


「何か森の奥にたくさんいるぞ……今のところ向こうも警戒しているようだ」


「警戒をお願いします」


僕は白虎を治癒しながら動物念話を使う。


『く……は!? ハクアは! ハクアは無事ですか? 我々を庇って風爪が直撃を』


『ハクアはもう治療したから大丈夫だよ。今は僕達の家で寝てる』


『そうですか……感謝します。旦那様』


もうその呼び方は決まっていたのかな?


『それよりも何があったの?』


『ウインドウルフどもの奇襲を受けました。そうでなければ我々が……ぐ』


『まだ治っていない傷があるから無理はしないで』


僕はアンドレイさんに敵の事を話す。


「ウインドウルフか……道理で数が多い訳だ」


「どんなモンスターか知ってますか?」


「名前の通り風属性の狼タイプのモンスターでな。とにかく足が速く群れで狩りをするモンスターだ。確実に傷を与えてじわじわ追い込んでいく戦い方をするらしい」


確かに深い傷はほとんどない。厄介なモンスターだな。


「どうして近づいて来ないでしょうか?」


「……お前はもしかして昼に罠を設置したんじゃないか?」


「え? はい。クロスボウの罠と一緒に設置しました。まさか……人間の罠を警戒しているんですか?」


「恐らくな……狼系のモンスターは危険察知を持っているはずだ。罠が沢山ありすぎて警戒しているんだろう」


白虎達には話したから罠を避けてここまで来ることが出来たんだな。まさかこんな風に罠が役に立つとは思ってなかった。だが、簡単には行かないようだ。


「動いた! 来るぞ!」


こうなったら、最終手段を使うしかない!


「カナタ、早く逃げて」


「最初に謝っておく。ごめん、エル!」


逃げようとしていたエルの尻尾を強く握った。


「きゃあああああ!?」


「ぎゃあああああ!?」


僕はエルの放電を浴びて倒れる。


「何しているんですか! 尻尾はダメだって何度も言いましたよね!」


黒焦げになっている僕をエルは叩きまくる。そんな僕達の様子をアンドレイさんが見ながら言う。


「お前、スキルは使えないんじゃなかったのか? ん? ウインドウルフ達が引いた?」


エルの放電が威嚇となって、ウインドウルフ達を引かせたのだ。


「大した奴だ。完全に引いたみたいだから取り敢えず大丈夫だろう。そいつを運ぶからどけ」


「う……はい」


アンドレイさんが苦手なエルは従うしかなかった。



翌朝、僕は家の布団で目覚める。


「我ながら無茶したな~」


『全くです。ウインドウルフ達に襲われないためとはいえ、もう少し命を大切にするべきだと思います』


黎明に怒られてしまった。僕もあれは最終手段だったんだけどな。僕は痛みを快楽に感じるタイプの人間じゃないから基本痛いのはごめんだ。


「さて、エルにもう一度謝らないと」


「……んん!?」


布団の中で何かを握ってしまった。


「なんだ? これ?」


「……あ!? う!? ……ふにゃぁ~」


僕が握ったり、触ったりするたびに声を布団の中から声が聞こえて来た。布団を捲るとハクアがいた。


「……ぐー」


「うむ」


「……にゃ!? あ!? ダメ」


「何しているんですか?」


ハクアが寝た真似をしていたから僕が握っていたハクアの尻尾で遊んでいるとエルが冷たい目で見ていた。


「エルは触らせてくれないからつい」


「昨日思いっきり触りましたよね!?」


「そうだった。ごめん」


「う……いきなり謝られると困るじゃないですか……」


あれ?この前と少し反応が変わったな。そう思いながらハクアから詳しい事情を聞くためにまずは朝食を貰うために屋敷へと向かった。


「すみません。朝食を三人分下さい」


「はい。あの~……後ろを見た方がよろしいかと」


「後ろ?」


フーリエさんに言われて振り返るとリースがいた。


「私がどれだけ心配したか分かっていますか? カナタ様? 最初に無事な姿を私に見せるように言いましたよね?」


「え!? そんな聞いてな」


「問答無用です!」


「ふぅ~……朝から二人は元気だね~」


アークスさんは優雅に紅茶を飲みながらそう言う。お願いだから助けて欲しいと思わずにはいられなかった。

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