#28 くノ一の亜人
アンドレイさんが解体する間、僕達は火の準備をする。
「出来たぞ」
「こっちもいけます」
ボアラのお肉を焼いていく。
「美味しそうです〜」
「……エル、何かした?」
「罠を作るのを頑張ったって言いましたよね!?」
まぁ、エルの頑張りは僕しか見てないからね。ただエルの頑張りはレベルアップという形で反映させている。
名前 エル 竜人族Lv14
属性 雷
生命力 130
魔力 130
筋力 166
防御力 35
魔法攻撃力 138
魔法防御力 105
走力 126
知力 20
スキル
飛行 放電 雷撃 充電 落雷 雷龍の加護
称号
《竜人族の王女》
僕とのステータスの上がり方の差に泣きたくなる。しかしレベルの上昇では僕が上回り、新たな称号を獲得した。
名前 カナタ 無職Lv18
属性 無
生命力 50
魔力 0
筋力 50
防御力 25
魔法攻撃力 0
魔法防御力 25
走力 50
知力 47
スキル
治癒 鑑定 識別 検索 罠設置
動物念話 電耐性 守護獣の加護
称号
《獣医学を学びし者》、《動物の守護者》、《本を愛する者》、
《罠の狩人》、《モンスターを率いる者》
ステータスポイント0pt、スキルポイント22pt
罠の量が圧倒的に多かった結果だと思う。罠設置のお陰だ。称号の《モンスターを率いる者》はアンドレイさんによると猛獣使いが獲得する称号らしい。これ称号で調教スキルが解放されたけど、現時点で興味はない。気になっているスキルが指揮スキル。指揮下にある味方を強化するスキルらしい。
後は黎明によると動物念話の範囲がこの称号の効果で拡大されたらしい。その範囲はロメリアの村から森までの範囲だ。それを聞いた僕はハクア達と念話するには微妙な距離だと思った。
そしてハクア達も当然レベルアップした。
名前 ハクア 獣人族Lv38
属性 土
生命力 214
魔力 84
筋力 234
防御力 238
魔法攻撃力 0
魔法防御力 30
走力 210
知力 18
スキル
石爪 気配察知 気配遮断 闘気 夜目
水泳 俊足 跳躍 獣化 白虎の加護
称号
《白虎の王女》
名前 なし 白虎Lv32
属性 土
生命力 200
魔力 52
筋力 192
防御力 204
魔法攻撃力 0
魔法防御力 30
走力 156
知力 15
スキル
石爪 石牙 気配察知 気配遮断 闘気
威嚇 夜目 俊足 跳躍 水泳
レベルアップは少ないのはレベルが高いから当然だ。それよりもエルよりステータスの上りが弱い気がする。まぁ、エルは最強クラスの亜人らしいし、そこが原因なんだろう。
さて、お肉が焼けた。
『最初はハクアからでいいかな?』
『『『『妻を優先するとは流石旦那様』』』』
『違うって!』
なんか尻尾が揺れているし、おちょくられている気がする。まぁ、いいか。
みんなにお肉を上げているとアンドレイさんが言う。
「まさか亜人やモンスターと一緒に飯を食べる日が来るとはな……わからないものだ」
「流石予言の人間だねー……あ、そっちのお肉をお願いー」
「はいよ……ん?」
知らない声に振り返ると知らない女の子がいた。
「「誰?」」
「鳥人族だと!?」
「……あ、ホゥ」
「色々なリアクションをありがとー。この森を監視している鳥人族のホゥだよー。よろしくねー」
なんかのんびりした話し方をする子だな。
「ハクアの知り合い?」
「……うん。この森で起きた事を色々教えてくれている。多分この森でホゥだけが全ての縄張りに入れる」
「いやー。そんなことを言われるとホゥちゃん、照れちゃうよー。ハクアちゃーん」
目を細めた姿がほっこりした梟の顔にそっくりだな。そこで茶髪の頭にミミズクの耳羽っぽいくせ毛を見つけた。服装は梟の羽で全身隠しているから不明だ。
「んー? ふっふー」
自慢げに羽を広げてくれた。そして着ていた服がお披露目される。お腹を出しているくノ一の服装だった。
「あれー? 興奮しないねー? あ、でも格好が気になる感じかなー? お母様の服なんだけどー」
「そ、そうなんだ……」
残念ながらくノ一はフーリエさんで見ているから驚きは少なかった。
「その様子じゃ、この服装を知っているみたいだねー。それなら私のお母様と似た世界の出身かもねー」
「そうかもね……ん?」
僕は勇者召喚された人間だとはこの子には話していないぞ。
「ふふー……私がどうして君が勇者召喚されたことを知っているか気になるー?」
「……気にならない」
「ふっふー……強がっちゃって可愛いー」
ホゥが僕の頬を突いて来る。ダメだ。なぜかこの子には勝てる気がしない。するとアンドレイさんが答えを言う。
「俺達を監視していたのか?」
「そうだけど答え言うの禁止ー」
「俺に触れるな!」
「おっとー……怖い怖いー」
僕の後ろに隠れないで欲しい。魔法銃で撃たれそうじゃん。
「……ホゥは攻撃したら、ダメ」
ハクアが動いたことで白虎達も動く。完全に殺伐とした空気になってしまった。流石にこの空気はまずい。
「あぁ……ちょっとみんな、落ち着こう。監視していたなら、何で姿を見せたの?」
「へぇー。ここでそれを聞いてくるんだねー」
「……もしかして森で何かあった?」
「何もない……は違うかー。亜人同士の縄張り争いや人間の悪巧みとかいつものことは起きてるけど、差し迫った危機とかはないよー」
僕は人間の悪巧みについて狩りや伐採、薬草の採取とはちょっと違う印象を受けた。
「ならどうして姿を見せたの?」
「たくさんの守護獣を宿している君に接触するためかなー? 後はご飯のつまみ食いー」
はっきり言ったよ。
「こいつに何の用だ?」
「実は私のご先祖様がある予言を残しててねー。いつか異世界から沢山の守護獣を宿した動物に愛され、動物を愛する人間がやって来るってね」
あれ?これで予言は終わりか?
「その予言って途中じゃない?」
「そうだよー。でもここから先は話さないほうが良いと思うんだよねー。予言って未来が確定しているわけじゃないから変に伝えると君も困るんじゃないかなー?」
確かにあなたは勇者になりますとか予言されても困るな。
「理解してくれたみたいだねー。それじゃあ、ホゥちゃんは用事が済んだし、帰るとするよ」
「「「「あ……」」」」
ホゥの両手にはお肉を沢山持っていた。いつの間に……抜け目がないな。
「またね。カナタ君」
そういってホゥは影の中に潜り、姿を消した。
「なんか変わった子だったな」
「……ホゥはいつもあんな感じ。でも人間に姿を見せたのは多分今回が初めてだと思う」
「それだけお前を重要視しているということか……確かにこれを見るとその気持ちはわからんでもない」
アンドレイさんがエル、ハクア、白虎達を見る。ちょっとした戦力であることは間違いない。
僕達は村に帰る途中、アンドレイさんに明日の予定を言われる。
「明日は別の国の町に行くぞ」
「へ? 急にどうしたんですか?」
「モンスターを狩り過ぎたからな。これを全部マリドの町で売ると流石に怪しまれる。俺とお前だけで倒せる数じゃないからな」
そこについては考えてなかった。
「別の国なら大丈夫なんですか?」
「あぁ……何せ明日行くのは魔王が治める国だからな」
こうして僕がこの異世界で初めて旅行しに行く国は魔王の国と決まった。




