#27 ハクア達との狩り
翌日、ハクア達に認めて貰った僕はハクアに一つの提案をすることにした。
「……一緒に狩りをする?」
「うん。僕が設置した罠のところにボアラを追い込んで欲しいんだ。直接戦闘するよりずっと怪我のリスクが減るはずだからやってみない?」
「……ん~。みんなに聞いてみる」
「お願い。僕が使った物は限られているんだ。魔毒をいつでも治せるわけじゃないからさ。よく考えて欲しい」
そのお願いの一方で僕は消毒液のことで動く。まずはお世話になったラウ先生に相談する。するとラウ先生は驚愕した。
「魔毒を治療出来たのか!?」
「はい。先生には話しましたけど、異世界の消毒液の力です」
「話には聞いていたが異世界の医学は凄まじいな」
その異世界の医学もこちらの世界でここまで効果があるとは思ってないだろうな。
「それでですね。異世界の消毒液を作れないかと思いまして」
「作り方を知っているのか!?」
「はい。えーっと……」
ポケットを探る。スマホはお亡くなりになっているんだった。しかもここじゃあ、ネットは使えないんじゃん。慣れって怖い。
「あぁ~……すみません。今のは無しで……ちょっと聞いてみますので、時間を下さい」
賢吾達に消毒液の作り方を聞くために手紙を書き、フーリエさんに渡す。一応消毒液のエタノールはアルコールなのは知っている。でも、詳しい違いや製造法となると流石に知らない。学校で実験をしたような気がするけど、思い出せないんだよね。まさかこんな時にこんな勉強が役立つとは思ってもみなかった。
ただ授業でやったことは間違いないし、癒夢ちゃんならきっと覚えているはずだ。学年で一番賢いからね。
「よろしくお願いします」
「任せてください」
返事を待っている間にハクア達が決断した。
「……やってみることにした。でも具体的に何をすればいいのかわからない」
「だろうね。罠の設置もあるし、僕が直接説明するよ」
ハクア達と作戦会議をする前に識別をさせて貰った。
名前 ハクア 獣人族Lv35
属性 土
生命力 215
魔力 80
筋力 230
防御力 232
魔法攻撃力 0
魔法防御力 30
走力 204
知力 15
スキル
石爪 気配察知 気配遮断 闘気 夜目
水泳 俊足 跳躍 獣化 白虎の加護
称号
《白虎の王女》
名前 なし 白虎Lv30
属性 土
生命力 196
魔力 50
筋力 188
防御力 200
魔法攻撃力 0
魔法防御力 30
走力 152
知力 10
スキル
石爪 石牙 気配察知 気配遮断 闘気
威嚇 夜目 俊足 跳躍 水泳
スキルの検索結果がこちら。
石爪:石の爪を作り出し、土属性のダメージを与えることが出来るスキル。
石牙:牙が石になり、土属性のダメージを与えることが出来るスキル。
気配察知:敵の気配を察知するスキル。
気配遮断:敵に気配を察知されなくなるスキル。
闘気:闘う気を纏うことで筋力と防御力をあげるスキル。
威嚇:大声をあげて、相手を驚かせるスキル。稀に麻痺されることがある。
夜目:暗くてもある程度、視界を確保できるスキル。
俊足:速く走れるスキル。
跳躍:大きくジャンプすることが出来るスキル。
水泳:泳げるようになるスキル。
獣化:獣の姿になるスキル。基本的に強くなる。
白虎の加護:状態異常になりにくくなり、物理攻撃を半減されるスキル。
強いとは思っていたけど、本当に強いぞ。ハクアに至ってはステータスの合計数値が1000を超えている。これを参考に作戦を考えないといけない。
更にボアラのことが色々判明した。
まずハクア達の縄張りはロメリアの村から見えてる森全域で農作物の匂いに誘われて、たくさんのボアラの通り道になっているそうだ。
逆に言うと村への被害をハクア達が抑えていたとも言える。村人が知ったら、守り神にもされそうだな。流石にこの世界ではそれはないか。
問題の作戦だが、ハクア達が後ろから追い掛ければ誘導出来ると思っていたけど、逃げるどころか向かって来るらしく、この作戦は潰れた。
「そっか……なんとかして誘導出来ないかな……」
僕は夜空を見上げる。そしてあることを思い付いた。
「ボアラと白虎ならどっちが速いかな?」
「……わたし達。でも長い距離で直線だと負けるかも知れない」
冷静な分析だなぁ。心強い。そしてこれなら多分ボアラは誘導可能だ。
「白虎達には野菜でボアラを誘導してもらう」
「え? それで追ってくるんですか?」
「多分ね。ボアラの目的が本当に野菜なら必ず食い付くはずだ」
エサで誘導するのは、基本だしね。作戦方針は決まったし、後は僕の準備次第だ。
翌日アンドレイさんと罠を買う為にマリドの町に向かった。
「随分買い込んだが、元は取れるのか?」
「たぶん大丈夫ですよ。あ、アンドレイさんにも説明しますね」
僕が説明するとアンドレイさんが呆れられる。
「白虎達を飼い馴らしたのか……」
「飼っているわけじゃ」
「似たようなものだろう? 確かにその作戦なら罠は無駄にはならんだろうな。わかった。俺もお前の作戦に乗ろう」
「ありがとうございます!」
やっぱり何かあった時のための保険は必要だ。帰った僕は罠の準備をして、アンドレイと一緒に罠を設置する。その時に沢山罠があったので、時間節約の為に罠設置スキルを獲得する。必要なスキルポイントは5pt。ついでにステータスポイントも黎明のすすめで知力に振ることにした。
名前 カナタ 無職Lv12
属性 無
生命力 50
魔力 0
筋力 50
防御力 25
魔法攻撃力 0
魔法防御力 25
走力 50
知力 41
スキル
治癒 鑑定 識別 検索 罠設置
動物念話 電耐性 守護獣の加護
称号
《獣医学を学びし者》、《動物の守護者》、《本を愛する者》、
《罠の狩人》
ステータスポイント0pt、スキルポイント16pt
そして罠の説明と作戦を白虎達に動物念話で話した。
「完全に猛獣使いだな……というかなんでお前は無職なんだ?」
「知りませんよ。勝手に決められたんですから」
「そうだったな……罠は設置終えた。作戦開始は」
「明日の夜ですね」
そして作戦が開始される。僕が用意したのは皮が剥かれた野菜をたくさん括り付けた縄だ。これを咥えた白虎が縄張りの一番奥に行く。
すると野菜の匂いにつられて沢山のボアラが縄張りの外から白虎に群がる。それを確認した白虎は走り出す。
そしてある地点で待っていた白虎に縄をバトンタッチする。長距離が苦手ならリレーすればいい。
バトンタッチした白虎が罠のある方向に向きを変えるとボアラ達は野菜を運んでいる白虎の後を追った。その様子を僕達は木の影から確認した。
「カナタの作戦通りですね!」
「誘導成功か……よくこんなの考えついたな」
「白虎達のスピードと能力があってこその作戦ですけどね」
「確かに人間では厳しい作戦だな」
スピードもそうだけどランプの灯りで夜の森を全力疾走するのは無理がある。転んだりしたら、死亡確定だしね。
その点、白虎には夜目があり、森を走ることに馴れている。まさにこの作戦はハクアと白虎達の協力あってこその作戦だ。
バトンを受けた白虎は別の白虎にバトンタッチし、いよいよ罠のゾーンに入る。白虎は罠を器用に避けて、走ると追ってきたボアラが次々罠に引っ掛かる。
そして罠を設置したコースを白虎達はバトンタッチしながらぐるぐる回り、全てのボアラを罠に嵌める事に成功した。参考にしたのは障害物競走だ。
「……本当に動けないんだ」
「これなら少しは安全でしょ?」
「……うん。みんな、仕留める」
「頑張ってください! 私は罠作りを頑張りましたから!」
流石に今回は餌で誘導したからエルの罠にも引っかかっている。まぁ、誘導が上手だった白虎達を褒めるべきだ。しっかりボアラの動きを見ながら罠に嵌めていたからね。黎明が知性が高いとは言っていたけど、予想以上の戦果だ。
全員がダメオーラを出すエルを見る。しかし何を言っても無駄だと悟り、ボアラ狩りに専念した。無事に全滅されたハクア達は倒したボアラを自慢げに持ってきた。
『『『『焼いたお肉』』』』
うん。ちょっと目的が違ったか。
『あっちの怖い人に持って行って』
「うお!? な、何故こっちに来るんだ!?」
「解体お願いします」
「そういうことは白虎に言う前に言え!」
確かに白虎の群れが急に向かってくるのは怖いか。反省した。




