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#19 モンスター講義のモンスター狩り

まずはモンスターの基礎知識の勉強から入る。


「この世界のモンスターは俺達の世界のモンスターと呼ばれる存在と大した差はない。基本的にモンスターのカテゴリーとしては二種類ある。一つ目は人間の脅威となる生き物だ。例を挙げるならドラゴンなどが当てはまる」


モンスターをモンスターと決めているのは人間側だからこういう定義が発生してしまうんだろう。そう思った時にふと動物達から見た人間こそモンスターじゃないかなと思った。


「二つ目は生き物が魔素(まそ)の影響を受けて、変貌した場合だ」


魔素(まそ)は獣医学の勉強でも習いましたけど、治療法がない極めて危険な毒なんですよね?」


「あぁ。俺達の世界で言う所のウイルスに似ている。イメージ的には狂犬病ウイルスに近い」


狂犬病は神経から脳に影響を出す感染症ウイルスだ。症状は異常に興奮したり、水や風などを急に恐れたりするようになる。魔素の場合は理性を失い凶暴化するそうだ。その為、モンスターは駆除対象になっている。


「そういえばお肉を売ってましたけど、あれも一つ目の例のモンスターなんでしょうか?」


「いや、ボアラは猪が魔素の影響を受けたモンスターだ」


「ちょっと待ってください。それを売っているんですか? 毒なんですよね?」


思いっきり食べたから心配だ。まぁ、あれからだいぶ時間が経過しているから大丈夫だとは思うけど、一応聞かないといけないところだ。


「問題ない。基本的にモンスターになると魔素は無くなるらしいからな。寧ろ肉に影響を与えて美味しくなったりする」


「基本的にということは魔素が無くならない場合があるんですか?」


「あぁ……冒険者の間では魔毒(まどく)と呼ばれている特殊な魔素がある。この魔毒はモンスターになっても消えない魔素でしかも人や動植物に接触感染する極めて危険な物だ」


「獣医学で教わりました。確か魔素は肉眼では確認出来ないけど、魔毒は見えるんですよね?」


「そうだ。だから魔毒に感染しているモンスターは一目でわかる。これはありがたいことなんだが、魔毒に感染したモンスターはどれもレベルが桁違いに高いモンスターでな。凶暴性も上がる上に魔毒もばら撒くからディザスターモンスターと呼ばれている。まぁ、こいつに関しては相手にしないことだ」


「分かりました」


アンドレイさんの雰囲気から戦ったことがあることが分かる。そしてこれ以上、踏み込むのはやめておいた方がいいと思った。


「他にもモンスターとしてあやふやな亜人や幽霊などもいるがこれは個人の見解に分かられる。冒険者ギルドでは人間に危害を加えた者を討伐対象にしている感じだな。モンスターの説明はこんなところだ。何か質問はあるか?」


「ありません」


モンスターの種類とか聞きたいことはあったりするけど、数が多そうだし、後で教えて貰えばいいだろう。


「次に狩りの方法についてだが、罠を使う」


「罠ですか?」


「あぁ。罠を作る手間がかかるが、その分安全だ。まずは俺の狩りを見た方が理解が早いだろうな……明日の夜は時間があるか?」


「大丈夫です」


こうして僕は夜にアンドレイさんのモンスター狩りを見学することになった。



そして約束の時間、僕は出かける際にエルに声を掛けて見た。


「モンスターと戦わなくていいじゃないですか。それよりもトランプをしませんか?」


エルにまで言われると決意が揺らぎそうになったけど、ここで動かないとたぶん後悔することになるから僕はアンドレイさんの家に向かうとアンドレイさんが待ってくれていた。僕はどうしてもアンドレイさんの装備に目が行ってしまう。


「それって、銃ですか? あれ? でも銃弾がないって」


「あぁ。これは魔法銃というものだ。銃弾の代わりに魔法を込めた特殊な弾を放つ武器でな。魔法の才能がない者でも魔法が使うことが出来る武器として絶大な人気がある。これがあるせいで俺の勇者武器に必要な銃弾を作ることが出来ない訳だ」


魔法銃というのはよくわからないが僕が想像しているようなビームが出る銃なら僕が知っている銃が負けるのは当然だと思うし、銃弾が作られないのも理解できる。でも気になることがある。


「え? でも、この国の騎士は持っていなかったと思いますけど」


思い出してもみんな剣と盾だった。


「物凄く高価な物だからな。まぁ、銃使いの憧れの装備だと思っていればいい」


そんなものを持っているということはアンドレイさんは相当なレベルな訳だ。ちょっと安心した。そして二人で夜の森に入った。


「そう緊張するな。このランプは魔除けのランプというアーティファクトでな。この森に生息しているモンスター程度ならまず襲ってきたりはしない」


「これがアーティファクトなんですね」


アーティファクトは魔法と機械を組み合わせたものの事を言うそうだ。因みに魔法と武器で魔法剣などという呼び方をされて、それ以外はマジックアイテムという種類に分けられているらしい。魔除けのランプの効果は僕がこの町にやって来る時に使った馬車と同じ物みたいだ。


「凄く準備がいいですね」


「こんなことは当たり前のことだ。狩りで一番怖いのはいきなり襲われることだからな。その対策にこういうランプがある。お前も狩りをするならこれだけは覚えておけ。人間は弱い生き物だ。ちょっとの油断であっさり死ぬ。だからモンスターの狩りをするときは絶対に油断するな」


「はい!」


「良い返事だ。そろそろポイントだな。罠に掛かってくれていればいいんだが」


アンドレイさんが事前に罠を仕掛けたところに向かうとそこには足が縄で拘束された猪がいた。ただ僕が知っている猪と明らかに違う点は体中から角や牙が発生している所だ。


「これがボアラですか?」


「そうだ。というかわざわざ聞くということは識別スキルを持っていないのか?」


「……はい」


「はぁ……狩りをするなら取っておけ。まず敵の事を知らないと狩りなんて出来ないからな」


おっしゃる通りだと思った。するとアンドレイさんが銃を弾丸を装填し、構えると魔法銃の銃口に魔方陣が描かれる。そして引き金を引いた。すると魔法銃から火球が放たれ、ボアラに命中すると爆発した。


「凄い……」


本当に凄い光景だと凄い以外の感想が出て来なくなる。魔法があることは知っていたけど、まじかで見る迫力は相当なものだった。


「……倒したな」


アンドレイさんがボアラの死体を確認した後に僕を呼ぶ。


「こいつに使った罠がこいつだ」


「これはくくり罠ですか?」


「ほぅ。知っているのか」


山にペットの施設を作る時に野生の動物が問題になって、狩猟免許を持っている人に駆除の依頼をしたことがあった。その時に使われた罠の一つにこのくくり罠があったのを覚えている。


簡単に説明するなら地面に輪っかがある罠だ。この輪っかの上を通ると縄が足を拘束して逃げられなくする罠で漫画ではよく見かける罠の一つだろう。すると気になったことがあった。


「あんなに爆発したのに縄が切れていませんね」


「そこに気が付くか。察しの通りこの縄は普通の縄ではない。くくり罠用の特別な縄でな。縄の中を通った存在に反応して、縄が勝手に締まるマジックアイテムだ」


「それって滅茶苦茶便利じゃないですか?」


僕の記憶では簡単な罠だけど、色々素材が必要な罠だったと記憶している。


「あぁ。何せ罠自体がこれだけで作れてしまうからな。しかも冒険者ギルドやお店で普通に買うことが出来る上に価格の安い」


なんて素晴らしい縄なんだ!しかし釘を刺される。


「だが、くくり罠は動きを封じる罠であって、攻撃を封じるわけじゃない。だから遠距離でモンスターを仕留められる奴に向いている罠と言えるな」


「じゃあ、僕には向いていない罠じゃないですか……」


「そうだが、今は俺がいる。この世界の経験値はどんな形でも戦闘に貢献すれば経験値が貰える仕組みになっている。つまりお前が罠を作って、その罠に引っかかったモンスターを俺が倒せば経験値はお前にも入ると言う事だ」


そういう事になるんだ。罠を確認すると僕達の世界のより遥かに作りは簡単なように見える。というか縄を木に固定して輪っかを作っているだけみたいだ。これならたぶん問題はない。しかしこうなると申し訳なさが出て来る。


「僕としては非常にありがたいんですけど、アンドレイさんに得がないように思えるんですが」


「そんなことはない。罠を作るのも設置するのも意外に苦労するものだ。まぁ、流石に魔法銃の銃弾もただじゃないからボアラの討伐の報酬の分け前は俺が多く貰うことになるな」


これは当然の主張だろうな。寧ろアンドレイさんの儲けがマイナスにならないようにしないといけない。


「高いんですか?」


「ギルドからの討伐報酬に加えて、村からの討伐のお礼金も出る。しかも素材を売ることが出来るから稼ぎは悪くない。少なくともこいつ一匹で戦闘分の儲けにはなる」


どうやら報酬とお礼金が儲けのほとんどになるらしい。ならこれを全額アンドレイさんに渡すことにした。遠慮されてしまったけど、狩りの講義代とレベル上げに付き合って貰うお礼金と言うとアンドレイさんは納得した。


「どうにもお前と話していると調子が狂うな。何かスキルを使っていないか?」


「え? 無職の人にそんなスキルを獲得することが出来るんですか?」


「なるほど……天然なのか」


「天然!?」


僕が一人ショックを受けて、狩りは終了した。


「ただいま~」


「食べられませんでしたか!?」


「食べられていたら、僕はきっと帰って来てないよ」


「良かったです。カナタがもしいなくなったら、ご飯もお金も家も無くなってしまうんですからこれからモンスターと戦うのは禁止します!」


どうやら僕がいない間にエルは色々考えたみたいだ。僕の存在価値がこれしかないと言うのは悲しいことだけど、心配してくれたのは、素直に嬉しい。


「そっか。心配してくれて、ありがとうね。エル」


「心配なんてしてま……ふぁわあぁぁぁ……なんですか……これぇ~……」


エルの頭を撫でたら、エルが倒れてしまった。


「ちょ!? 大丈夫!?」


『これが我が主の必殺技! 頭なでなで! 主よ! 今こそ愛撫スキルを獲得する時かと思います!』


『まだ諦めてなかったんだね……黎明』


『無論です』


こうして僕の初めての狩りの一日が終わった。そしてこの狩りの様子を木の上から見ている影がいた。


「たくさんの守護獣を宿している人間……間違いない無さそうかなー。あの人が予言の人間……やっときてくれたんだねー」


僕が知らないところで何かが動こうとしていた。

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