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#15 文字の勉強とロメリアの村の家

翌朝、リースが来て、僕達の体のサイズを計ってくれた。僕には執事の服。エルには私服が必要だからだ。そこでエルが下着を()いていないを伝える。


「下着をいていないんですか!? え、でも一緒に寝て」


物凄い誤解を受けて、リースが大混乱している。暫くして落ち着いたリースがエルと下着について話し合う。


「えーっとね……エルちゃん。エルちゃんは女の子なんですから下着は()かないといけないんですよ?」


男は履かないでいいように聞こえた僕は性格がひん曲がっているのかな?これを聞いたエルは当然疑問を言う。


「なんでですか? みんなそんなの履いてませんでした」


ここに竜人族は全員ノーパン説が浮上した。というか竜人族は空を飛ぶんだよね?大変なことにならないか?これ。そして説明をしないといけないリースも大変だ。


「なんでって……それは……その~……大切な所を守るためと言いますか」


「大切な所ってどこですか?」


これを聞かれて、リースは詰んだ。リースが僕のほうを見る。これを説明なんて僕には出来ないし、僕が出来るのは小屋から出ていくことだけだ。小屋から出るとアークスさんがこちらに向かっていた。


僕は改めて感謝を言い、今後のことを話し合う。


「取り敢えず今は空き家の手配と執事として君を迎える準備をしている所だ。空き家は明日には準備が整う。執事としての仕事は服が用意できる5日後からになるね」


「分かりました」


「何か他に困っていることとかないかな?」


衣食住いしょくじゅうとお金を稼ぐ手段は確保出来た。しかしやらないといけないことは山済みだ。差し迫った問題はまずこれだな。


「……実はこの世界の文字が全く読めないんですよね」


これが地味にきつい。店舗名や看板の有難みがこの前の町で実感した。他にも文字の読み書きはどうしても生活していく上で必要になって来るだろう。


「それは不憫だろうね。それなら基本的な読み書きの本やいくつか絵本を持ってきてあげよう。私はこれからやることがあるからリースに教えて貰うといい」


「ありがとうございます」


僕はアークスさんから本を借り、リースに教えて貰うことになった。するとエルも退屈だったこともあり、興味を持つ。


「何しているんですか?」


「文字が分からないからそのお勉強」


「お勉強ってなんですか?」


まぁ、知らないか。


「学問や技能を学ぶことになるのかな? ってわからないか」


「はい!」


「そうだな……例えばエルが空を飛ぶ方法を教わることが勉強ってことになるのかな?」


「へ~……ならいいです」


エルは耳を閉じてごろごろする。分かっていたことだが、エルは勉強が苦手なタイプであることが判明した。僕達の世界で言う所のひらがなを覚えた所でリースが思い切った様子で聞いて来た。


「あの! カナタ様の世界の物語を聞かせてはくれないでしょうか?」


「別にいいけど、興味あるの?」


「はい! ずっと病気で本ばかり読んでいたら、すっかり好きになってしまったんです。でも家にある本は全部読んでしまいまして」


「飽きたと」


「はい……」


リースは相当本好きみたいだな。物語なら創作だし、問題はないだろう。問題があると言うなら僕の記憶の方だ。漫画やアニメ、ゲームなら見たりしたけど、口だけで伝えるのは難しそうだな。


「上手くできるか分からないけど、それで良ければ」


「ありがとうございます! それでは夜に聞かせてください」


この時、僕はリースの物語好きを舐めていた。


「リース。もう寝る時間だぞ」


「えぇ!? ちょ、ちょっと待ってください! お父様! 今、凄くいいところで!」


「もう何度目だと思っている! 済まないね。カナタ君、エル君。ほら、リース」


「うぅ……このままじゃあ、眠れません」


そう言いながらもリースは帰って行った。


「カナタ! カナタ! 続きを話してください!」


勉強には興味を持たないエルだったが、物語には興味を持ったようだ。話を聞いてみるとこういう物語を聞いたことがなかったらしい。こうしてエルは退屈な時間を潰す最初の娯楽を覚えたのだった。


次の日にリースはエルの服を持ってきてくれた。普通の服に尻尾や羽を出すための穴を開けないといけないからすぐに用意は出来なかったのだ。


外で待たされていると家の中から物が倒れる音などが聞こえて来た。


「カナタ! 助けて下さい! リースに襲われています!」


「襲っているわけじゃないですよ!?」


「はぁ~……着替えるだけで何しているの?」


「あ、ダメ!」


僕が部屋の中に入ると長い布一枚の二人の姿があり、僕はドアを閉めた。


「閉めないで助けて下さいよ!? カナタ」


「どうしてこの状況でカナタ様を呼ぶんですか!? エルさん!?」


もう滅茶苦茶だ。事情を聞くと服を着替える前にエルの身体や髪の毛を洗おうとしたのが原因だったようだ。エルからするとただ水をかけられて終わりだと思ってたらしく、いきなり身体を触れて、さっきの発言が飛び出したようだ。


そしてエルの希望で何故か僕が髪の毛を洗うことになった。リースに襲われると完全に思い込んでいるエルにとって、他に選択肢は無かった。


「どうしてこうなるのか意味がわかりません。私が悪いんでしょうか?」


「やり方に問題があったんだと思うよ?」


エルのシャンプーに使うのは石鹸のようなものだった。これで泡を立てて、使うらしい。見た目が石鹸だから違和感が半端じゃない。


僕はエルに事前にやることや注意点などを話しかけ、エルが驚かないように少しずつ大丈夫か確認をしながら髪の毛を洗う。ペットも洗うのが苦手な子や初めての子には徐々に馴れさせていくのがシャンプーのコツだ。


「あうあうあうあう……あ~う~……」


「これでよし。水で流すよ。大丈夫?」


「大丈夫です」


「それじゃあ、ゆっくり水を流すからね。目と口は絶対に開けちゃダメだからね。いくよー」


こうしてエルのシャンプーを終えた。次に身体を洗うのはリースにバトンタッチする。


「え? カナタがしてくれるんじゃないんですか?」


「僕がすると尻尾とか触ることになるよ?」


「リースでお願いします」


こうしてエルの身体を洗う作業を終えた。


「着替えましたよ! カナタ!」


僕が小屋に入ると白のワンピース姿にサラサラのロングヘアーになったエルがいた。この姿を見て、僕は始めてエルをお姫様だと思った。


「どうですか? カナタ? ちゃんとパンツも履いているんですよ! ほら!」


「ちょ!?」


エルがワンピースを捲ってパンツを見せてきた。これにリースが慌てる。


「エルちゃん! 女の子が男の子にパンツを見せたら、ダメです!」


「なんでですか?」


またこれだ。僕は小屋から出ると気持ちを落ち着かせる。いや、流石に見惚れている時の不意打ちで顔が赤い。子供の頃は葵が僕の反応が面白いのかパンツを見せて来たこともあったけど、まさかこの年であんな光景を見ることになるとは思ってなかった。


その後、改めてエルに可愛い服を褒めるとまんざらでもない様子だ。そして僕が勉強を始めるとごろごろし出す。リースの説明はエルには効果があまりなかったようだ。パンツを気にしている素振りがない。


まぁ、見ないようにするしかないかな?いつかこの日を後悔する日がエルにも来るだろう。そしてこの日は僕達の住居の準備を手伝う事にした。


家具は自分達で用意することにしたから机といす、布団、ランプ、食器などを村の店で購入し、木造建築の空き家の掃除を一人でする。これぐらいはしないと罰が当たる。その後、購入した物を飾っていき、家の準備は整った。


深夜になると僕達は家に入る。深夜じゃないとエルの存在が村人にバレることになるから夜に移動するしかなかった。すると掃除された家と布団に感動したエルが家中を転がり出した。


ここでエルには約束事を決めることになった。


「まず一人で外に出ないこと」


「任せてください! ずっと寝ているのは得意ですよ!」


まぁ、ずっと娯楽がないニート生活をしていたエルにとっては余裕なことかも知れない。


「大声は出さないこと。取り敢えずこの二つを守ってね。もし村人にエルが見つかると僕達はこの村にいられなくなる。当然この家にもいられなくなって、寒い野宿生活をすることになるからくれぐれも気を付けるように」


「わ、分かりました」


エルも野宿には戻りたくはないだろうからこの辺は協力してくれる。しかし翌日、エルは初めてのトイレという文化に触れて、絶叫することになった。原因はこの世界のトイレが僕らの世界ではかなり昔のトイレであるボットン便所というものだったからだ。


洋式や和式の便所と違うところはトイレをすると下に落ちて、溜まっている水のところに落下すると水が跳ねることがあるトイレなのだ。その水の跳ね返りにエルが驚いてしまった。すると当然村人が集まって来る。


「わ、私の声です! ごめんなさい!」


リースがトイレを教えるためにいてくれたことで何とか誤魔化すことが出来た。そんなことがあった昼間だった。因みに村人がいなくなってからリースは真っ赤な顔を手で隠していた。

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