死にかけてた無能
シイ7世に連れられた場所は大きな布がつるされた場所。
「ここはこの世界の地図だ。我が国の魔法と諜報力を使って作らせた。世界でもここまで精密な地図はないだろう。他言無用で頼むぞ。」
シイ7世はそう満足そうに呟き地図の左側のある一点を指さす。
「ここがわが国『シイ国』だ。見ての通り周りに海もない。しかしこの国は先程も言ったように魔力の土地・住む人々の潜在魔力が高いおかげで土魔法で農業や観光地などの建設が。水魔法で生活用水・下水などの衛生面が。火魔法で製鉄やガラス等純度の高い物が・・・と他の国からすればかなり魅力的な国なのだ。魔力のない土地・潜在魔力の少ない他の国が同じ結果を出そうとするのは相当人員を割かなくてはいけない。勿論わが国から引き抜きを狙うものもいるが、基本的にわが国の生活水準を知っているものは他所の貧しい国に行くことはあまりない。作物の味は落ち、下水もままならない為に疫病も考えられる。病を治せる光魔法の使い手はこの国でもそこまで多くはないのだ。」
次にシイ7世が地図の右側を指さす。
「この世界は人間族だけで構成されてはない。まずこの東側の人より寿命は短く魔法もあまり使えないが力が強い獣人族が8か国。次に南側の人間族と見た目の違いはほぼないが、寿命が長く火・水・土・光・闇の5大魔力の内唯一の闇魔法が使えるがとても妊娠しにくく数が増えにくい暗族が5か国。残りの西13か国が我ら人間族だ。種族間同士でも争っているが、同族でも争っていた。しかし・・・。」
シイ7世はそういうとため息をついてその部屋にあった椅子に腰を掛ける。
「最近、獣人族と暗族がそれぞれ族長をたて、手を結び人間族を侵略しようとしている事が分かった。獣人族が手懐けたドラゴンはとても強力で暗族の闇魔法は人間族が使えないから対処が難しい。今まではどちらか片方のみだったから何とかなったが両方となると難しい・・・。なのに・・・。」
シイ7世は歯ぎしりをしながら机を叩く。
「人間族は未だに同族で争ってばかり・・・。このままでは負けは目に見えておる・・・。その時・・・」
シイ7世は日記を取り出した。
「シイ1世の日記に『もし国が争いに巻き込まれそうになったら地球にいる先祖が同じ俺の血縁関係を勇者として儀式で呼べ』と書いてあった。シイ1世もお主等と同じ時代から来たのだが先祖が同じな上に寿命が尽きかけており助ける意味でもこちr・・・」
「ちょっと待ってくれ!?」
俺はシイ7世の言葉を遮る。
「俺らは死にかけてたのか?」
「あぁ、ヨシタカ殿は頭を打ち脳内出血。ヒカリ殿は交通事故だな。今は死ぬちょっと前の元気な状態を呼び戻してある。残念ながら向こうの世界には戻すことが出来ん。戻すとお主等は先程の理由ですぐ死んでしまう。」
「なんてこった・・・」
俺は膝をついて呆然とする。
「お主達がもし、これからも生きる事を願い衣食に困らない様にしたいと思ってくれるならわが国を救ってほしい。」
「どのようにすればいいのですか?」
呆然としてる俺を心配しながらひかりはシイ7世に尋ねる。
「今からどちらが本物の勇者か調べる。そして勇者にはこの者と手を取り我が国を救ってほしい。」
その時、この部屋の扉がゆっくりと開いた。