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銀白の無能力者  作者: 幻想卿ユバール
第壱章-紅白ノ開戦ー
2/2

紅白ノ開戦編‐第1話 「非情な世界」

あの日もこんなにもこんなにも寒い冬の日だっただろうか。

ボクは手をすりすりとこすり合わせては器のようにした手に息を吐く。

生暖かい吐息が両手に伝わる。

空は曇り、雪は降り、そして空気は冷たい。

ボクはそんな中この無人駅の様な誰もいない駅のホームで列車を待っている。


ボクの名前は【シルバー・ウィルコンティ】だ。

おそらくこの物語の主人公、そうに違いない、絶対にそう。

髪は銀髪で長くとっても綺麗なはず。

長いからこれをツインテールにしている。

今日のコーデは可愛い黒く綺麗なゴシックロリータ。

フリフリしていて袖のフリルがとっても可愛い。

まるで大きなお屋敷のお人形さんになった気分だ。

ソックスは右足がダイヤ模様で左足が縦線の入った白黒のシンメトリー。

とってもオシャレだ。

さて、そんなボクは今何をしているのかだが。

特にこれといってやりたいことがあるわけでもなくただあてのない旅をしている。

たまに人助けをしてヒーロー気取りしたい人生だ。

何かに夢中になれることもなく、情熱というものを失ってから平成に生きる若者の様な冷たいごく普通の人間に成り下がってしまった。

別にそういう人が悪いわけではないが、自分は実につまらない生き方をしていると思ってしまう。

無理に夢を見て熱くなることもないのは知っていても、どうしても何かこうモヤモヤする。

自分にはもっと良い生き方があるんじゃないかとか

夢を追いかけて走ってみるのもいいんじゃないかって

恋をして、いい思い出を作ってみたりとか

そういうことしてみた方がいいんじゃないかって。

でも、それって意味のあることか無い事かで言うなら意味はない事だと思ってしまう。

何故なら、嫌な思いをしたくないからだ。

夢を追って途中で現実を思い知って傷ついたり、愛し合って傷ついたり。

そういう風になるくらいなら最初からしなきゃよかったんじゃないかって思ってしまう。

だからしない方がいい、するくらいなら無駄に無気力に流れるように生きた方がマシなんだって思った。


「実につまらない人間だ、自分は」


青くない空に向かってボクは言う。

自分の心に突き刺す様に冷たく吐き捨てる。

自分が嫌いだからそういうことも簡単に口から出て言える。

なんて可哀想な人なんだろう。

いつからこんな生き方をするようになったんだろう。

昔はもっと今よりは情熱のある人間だった気がするが・・・。


グチャッ!!


ふと思い更けていたら自分の足に大量のアイスが足にかかっていた。

下をチラッと見下げてみると小さな女の子が3段アイスをボクの足にぶつけてしまっていたのだ。


「ああ・・・アイスが・・・」

「す、すみません!!ダメじゃないか!はしゃいで走っちゃ!!」


女の子の少し後ろにはお父さんと思われる人がいた。

かなり心のこもった荒い声で女の子を叱っている。

教育関係のしっかりとした親子だ、愛があって羨ましい。

しかし、今はそんな感傷に浸っている時ではない。

泣き出しそうな女の子にむかってボクは屈んでポケットから5枚の金貨を取り出し。

女の子の手を広げてあのセリフを優しい声で言う。


「ごめんね、ボクの足がアイスを食べちゃった!次はパパさんに10段くらいのを買ってもらうと言いよ!」


そう言って無言で汚れたソックスの汚れをハンカチでふき取り立ち去るボク。

ああ、一度言ってみたかったスモ〇んのセリフが言えてうれしい。

一度は言ってみたいセリフだったからまさか生きてて言えるとは思わなかった。

3段アイスが足を食う事ってあるんだ、ボクはこの偶然が産んだ産物に感謝しながら微笑みこの場を立ち去り、反対側の方へと歩き移る。


と、その時だった。


ガッ!!


立ち去りこの場から離れようとしていた時、突如前から掴まれる感覚。

向こうから誰かがボクに体当たりでもしかけて来た?

突然掴まれたボクの体にしがみつく小さな女の子の姿。

目に光のないオレンジ色の瞳に白く美しいセミショートボブ。

髪の毛の後ろはマゼンタの様な色がインナーカラーで入っていて。

服は紺色のコートの様なモノ1枚を羽織って首には長めのマフラー巻いている。

後ろにはパーカーが見える、普段はこれを被っているのだろうか?

と、女の子をじっくり観察していた所にそこにさらに重心が加わる・・・。

身長が低いわりに持つべきモノをしっかりと持っている女の子の胸がボクに当たる。

これは間違いない・・・バイオツッ!!


「(うーん、デカい・・・Kはあるな)」


「・・・」


「(おっと・・・いけない)」


なにやら無表情だがかなり冷たい視線を女の子から感じ取った。

ボクはとっさに抱き着いて来た女の子に邪な考えを抱きつつ冷静に戻る。

いくらなんでも初対面の女の子に中学二年生思春期真っ盛りな考えはよくない。


と、そこへなにやら不穏なバタバタとした足音が聞こえる。

とっさに足音のする方へと視線を向けるとそこにいたのは・・・。

黒服だ、この時代に似つかわしくない、グラサン、黒帽子のマフィアの様な男達。

それも3人組と来た。

そしてもう一人、なにやら特徴的な水色のスキンヘッドの男・・・。

その男がねっとりとした声でこちらへ話かけて来た。


「なあ・・・ぼっちゃんさん・・・こういう時どういう態度を取るのが正しいのかお前なら分かるよなぁ?」


首をゆっくりかしげながら口を開きしゃべる狂い乱れた感じを表すスキンヘッドの男。

ボクはそれに動じずいつもの無関心で不愛想な言い方で口を聞く。


「分からない、こういう時そういう態度を取る悪人面のおっさんの言いなりになるのはよくないって俺のヒーロー辞書には書いてあったような気はする」


「キュッキュッハハハッ!!!・・・そうか、そうか、君は素晴らしく愚かだ・・・」


思わず強く言葉を発するボクに対して不気味な笑いを放つスキンヘッドの男。

そして突如、男は後ろに背負っていたカバンからペットボトルを取り出し。

いきなり水分補給を行い始める。


「ングッ・・・ングッ・・・」


「(なんだ・・・この男・・・?)」


なにをしたいのか全意図が伝わらず思わず困惑するボクだったが。


次の瞬間、この世界の残酷さを改めて身に染みて感じる様になる。


男がペットボトルを飲み干して口に含み終わり。

それを勢いよく吐き出して来たのだった。


「ブルュォォォォォォッッ!!」


「うおッ!!汚ねぇッ!!」


思わず瞬間的に女の子を抱きながら下に倒れこむ様に避けたボク。

危ない・・・なんて地味な嫌がらせなんだ。

飽きれた口調で声に出す。


「おい・・・お前いい加減に・・・」


「ぐひぃひゃ・・・ハッハッハッ・・・・」


「・・・?」


その時、男はまたしても不気味な笑い声を放った。


ボクはよくわかっていなかった。

何故彼が大笑いしながらこの場を微笑み楽しんでいたのか。

手を叩きながら愉悦に浸っていたのか、何も分かっていなかった。

でも、何か・・・後ろから背筋の凍る様な恐怖の気配がした。

恐る恐る、立ち上がりながら後ろを振り返るとそこに待っていたのは・・・。


「・・・熱いよ」


あの時、ボクがアイスを彼女から奪っていなければ彼女は最後にアイスを食べていられたのだろうか。

あの時、あの場所にボクがいなければ彼女はきっと今よりはマシな死だったのではないだろうか。


後ろを振り向いた時、そこに待っていたのは。

あの女の子の父親が覆い隠すように女の子を守っていた光景だった。

だが、父親の体はもはやドロドロに溶けて原型をとどめていなかった。

ドロドロに溶けた体の向こう側に女の子はいた。

女の子も徐々に皮膚が焼けている。

じりじりとまるでマグマに焼かれ飲み込まれていくかの様に。


「あ・・・ああ・・・熱いよ・・・熱いッ!!あ゛つ゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ッ゛ッ゛!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!目が痛いッ!!体が苦しいよォォォ!!助けてッ!!お姉ちゃんんん!!助けてッ!!ア゛ア゛ア゛ッ!!!」


突如、謎のあの吐かれた水を受けてしまった女の子の父親は声を出す間もなく死んだのに対して女の子は悲痛な叫びを上げてもがき苦しみそして息絶えた。

僕のあげた金貨を手から放して地面にバラバラにして静かに朽ちたのだ。


そうしてできた静寂の間に空気もよまずスキンヘッドの男はしゃべる。


「くひゃくひゃくひゃッ!!いいねぇ!人の悲劇ってのは美味だねぇ・・・お前が攻撃を避けなきゃこうはならなかったんだぜぇ?しっかりと俺の裁きを受ければこうはならなかったのさ!!俺の含んだ水は千度のマグマの様に熱湯となり相手を大火傷にして殺すッ!!まさに馬鹿げてはいるが最高の能力・・・【口水烈化ホットマウス】ってわけよッ!!」


この静寂に流れる静かなる冷たい風からボクは哀しみの空気を悟った。

燃え上がるなかった怒りの情熱、激しく震え上がる正義の魂。

今、俺は世界最高爆発的に怒っている。


「お前・・・ここに来たってことは列車に乗りに来たんだよな?」


「あ?それがどうした?」


ボクは溢れ出る怒りを抑えきれず思わず口から低い怒りの声を上げる。

それは今まで感じたことも味わったこともない迸る怒り。

それを今、表に出す。


「たった今、お前の地獄行き片道切符を切った・・・あの世に旅立つ覚悟はいいか?」


静かに震える怒りと共に、ボクは人差し指をあのスキンヘッドの男に向けて指すのだった。


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