妹に酷く怒られていますっっっ!!!!誰か私を助けてくださいぃ…!!
光り輝く熱持つ光弾。バトル漫画ではおなじみだった、なんのオリジナリティもなければ、アィディアも含まれないような、退屈な攻撃方法。
観客席から見ていれば、つまらないとヤジやポップコーンを飛ばしてくるような変哲の無い攻撃。
だが……
「ふははははは!!シンプルとは無駄の無い完璧な姿だ!
連々と受け継がれるものには、常に完成されているという理由があるものだよ、離人。」
「ちっ…パクリを声高々に正当化してんじゃねえよ発想が死んでるだけだろうが--熱えっ!?」
両手を広げて突っ立ってるだけの、稚拙さが際立つ脳死グミ撃ちの光弾。
撃っては次へ、撃っては次へ。
獲物を追い込む計算も、回避が叶わない大きさも無い。手のひらサイズをただ撃つのみ。
それでも、白夜離人という凡人を相手にするには充分過ぎる。
当たり前のことが、当たり前に起きているだけ。
銃弾潤沢の機関銃をバカスカ撃ち放題の人間対ただの人。
勝ちの概念は無いだろう。
だが……
「ふむ……そろそろ千発は撃ってると思うんだがなぁ。
全く命中しないとは、どういうことなのかな…?」
「--たがか千発でサル同然の頭使ってんじゃねえよカス!!
こっちはそろそろ1キロは蛇行で走ってんのに健気に足に乳酸ため続けてんだよ!!」
言いながら、未だ離人は全速力で走り続けているが、二人の距離間は微塵も変化が無く、走るのを止めればすぐに灯飛の周りにフヨフヨ浮いている光弾に吸い込まれて焼き殺される理不尽な環境に閉じ込められ続けている
「ふふふふふ。これも父の躾の内さ。」
「サルの辞書には虐待って言葉が刻まれてないらしい。
猿はサルらしく……」
ダンと地面を蹴って、前宙で背後を確認しながら
「--森へ帰れ、類人猿!!」
バァン--!!!!
いつの間にか両手に構えていた拳銃を発砲した。
「おっと。」
解き放たれた銃弾は余裕を持って回避され、その背後に飛んでいき、見えなくなった。
「フハハハ!!その無理やりな体制から、光弾の盾を掻い潜った直線ルートを見極めて瞬時に発砲。
いいぞいいぞ。離人。
【1/898】でもそのくらいは出来なくてはな。私の子とは名乗れない。あの最低の《《失敗作の代わりに》》森へ行って、還ってきただけのことはある。」
ピタリ。それまで地を蹴り続けていた脚が止まり、瞬時にその場所は灯飛の門前に換わる。当然、そこにあった熱持つ光弾は、離人を焼きにかかった。
「バカが」
バァン--!!!!
だが、多少の火傷を負いつつも、直接的な攻撃として襲われていない中でなら、人類を殺す武器を持つ離人にも、充分に反撃の機会が与えられる。
「ぐふっ!???」
今度は避ける暇も無かった銃弾が、腹部と内蔵を手当り次第にグシャグシャにして体外に排出される。
堪らずに蹲る灯飛の足元には、ボドボドとおびただしい血が。口元には耐えきれずに吐血した血潮が溢れる。
「俺が銃を持っているのを見てすぐ、この空間の仕様を変えなかったお前に褒められても、滑稽にしか見えねえよ。」
ガァン--!!!!
その様子の父親に、離人は血の繋がりがあるとは思えない無情なトドメを、脳天に向けて刺す。
「死ね。」
その後、間髪入れずに残りの弾丸も発砲し、計4発の鉛玉が、生身の人体に撃ち込まれた。
空になった薬莢を排出し、すぐさまリロードを行い、周囲を警戒する。
自分の身体を焼いていた光弾は消え去り、辺りには人の声が戻ってくる。そして、目の前には
「……………やっぱり、《《何もない》》か。」
コンクリートの地面には、生身を撃ち抜いた筈の鉛の玉が3つ。
ソレ以外には、なにもなかった。
「あの小物がわざわざ正面切って湧いてきてる時点で、本物ってことはねえだろうとは思ってたが……影武者でも無かったのか」
いつの間にか、手に持っていた拳銃は消え失せ、近場には、さっき買ったばかりのボクサーパンツが入ったビニール袋(有料)が落ちているだけ。
「マジで何しに来たんだあのサル。
はぁ……形見の銃、弾使い切っちまったな。
俺に銃弾の購入ルートなんか無いし、コイツはもう感傷用だな……。
許せよ、ボブ。天国でサムズアップでもしながら、なんかいい感じに、浮かんでいてくれ……」
などと取り留めのないジョークを呟いた離人が、初めてのお使いから帰還した家には……
「--7年ぶりに帰ってきた家族を、いきなり買い物に出すとか、何考えてんのよバカ女!!!!」
「ごっ、ごめんなざいいいいいー!!私はただ、せめて風呂に入れてやろうと思っただげなんだぁー…」
「だったらお風呂の掃除も給湯も買い物も全部自分で行けば良いでしょう!?
おかげで私、お兄ちゃんに会い損なったじゃない!!!!」
「がえっでぐるがらあー!ちゃんどっ、がえってぐるがらー!!あああああああー!!!」
怒髪天を衝く勢いで姉を叱り散らかす妹と、惨めなぐらいの泣き顔で妹に縋り付く姉の二人が、そこに居た。
「………うわぁ…帰りてぇな……いや、家はここか………俺に、帰る場所は無いんだった……はぁ……」
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