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あるちいさな物語

作者: えりどら

僕がまだ小さかった頃、鳴き続ける僕を抱きしめながら

『おかあさん』が言ったんだ。

「おまえを幸せにしてあげる。一緒に幸せになろうね」って。

子供の僕には『おかあさん』の言ってる言葉の意味が良くわからなくて


幸せって なぁに? 幸せって どういうこと?


僕は聞いたけど、上手く聞くことが出来なくて

『おかあさん』は少し困ったような顔で僕をやさしく撫でてくれた。


春が過ぎて、夏が過ぎて秋が近づいた頃

『おかあさん』は僕に聞いた。

「おまえは今、幸せ?私はおまえを幸せにできているのかな?」

大人になった僕は、『おかあさん』の言葉はわかるようになったけれど

それでも今でも幸せの意味はわからない。


幸せって なに? 幸せって どういうことなんだろう?


今でも『おかあさん』は時々、思い出したように

「おまえは今、幸せ? おまえの幸せって何だろうね?」

僕に聞くけれど、ごめんね『おかあさん』

僕は猫だから、『おかあさん』の言う幸せって

どんなもんか本当にわからないんだ。


ただ『おかあさん』のやさしい声で呼ばれ、

『おかあさん』の温かい手で撫でられて、

『おかあさん』の傍にいるのが一番大好き。

飢えることもなく、お天気の心配をしなくてもいい。

僕にとっては、それだけで充分。


それだけじゃダメなの?

それは幸せとは言わないの?


僕は『おかあさん』の数倍の速さで、歳をとる。

もう前のように早く走れないし、

高い所にも登れなくなってしまった。

美味しいご飯もあまり食べられなくなった。

息も苦しくなってきた。

『おかあさん』はすごく辛そうな顔で、僕を撫でてくれるけど

笑って、いつものようにやさしい声で僕を呼んでよ『おかあさん』


悲しいけれど、大好きな『おかあさん』と一緒にいられるのは

もうあんまり長くないみたいだ。

僕は猫だから、なんとなくわかるんだ。


今でも幸せって言葉の意味はわからないけれど

大好きな『おかあさん』と過ごせた毎日は、

幸せっていうものなのかもしれない。


『おかあさん』は僕と居て、幸せだったのかな。

『おかあさん』も幸せだったら嬉しいな・・・・・

そして僕が居なくなっても、

毎日『おかあさん』が幸せでいられますように。


僕は想うよ 僕は祈るよ 『おかあさん』が好きだから





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