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異世界防衛白書  作者: Luciferius
第1章 海風間島探索
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新たなる世界へ

過去に執筆していた小説を改変した小説です。

20XX年5月

快晴の空の下、富士演習場では最新機器の実験が行われていた。

現段階で実験は成功しており、最終試験の段階まできていた。この実験が終われば、この最新機器が認可され他部隊にも配置される。

皆が胸を高鳴らせる中、最新機器が起動した。


その時だった。


どこからともなく何かが軋む音が聞こえ、そして耳をつんざく様な高音が演習場全域に響き渡る。周囲に立っていた隊員全員が歯を食い縛りながら耳を塞いだ。体を動かそうとするが、何故か金縛りにあったように全く動かなかった。


その音は1分程鳴り続け、次第に小さくなりそしてほぼ聞こえなくなった。

体も動くようになり、耳を塞いでいた隊員達は何が起こったのか調査を始めた。


これは最新機器が原因なのだろうか。

しかし、その様な音を出す要素は無い。

もっと巨大な何かが音を出しているようだった。

本部のテントに一人の隊員が急いで入っていくのが見えた。

そしてしばらくすると無線機に連絡が入った。


『最新機器が完全停止した為、実験は中止とする。全員、当初示された位置へ帰投し、待機せよ。なお、復旧の目処は未定。』


「了解。」


無線機に応答し、我々は示された位置へ移動を開始しようとした。


「何だ?あれ。」


一人の隊員が演習場の中央を指差す。

すると何人かがその方向を見て、口々に何だ何だと言い始めた。

隊員の指差す方向には空間に地面から空に向かって大きな黒い亀裂が入っているのが見えた。

黒い亀裂の向こう側には何も見えない。覗き込めばそのまま吸い込まれそうな雰囲気だ。

一体あれは何なのだろうか。

我々はそれが何だか分からないまま待機場所へ向かった。


待機場所へ到着すると煙草の臭いが鼻を突いた。臭いのする方を見ると錆びて所々塗装が剥がれた缶の周りに隊員が数人集まって煙草を吸っていた。

彼等もあの黒い亀裂について話していた。


「あの亀裂はなんだろうなぁ...」


「もしかしてあれですかね。異世界への入口とか。」


「いや、この世の終わりかも知れんぞ。」


口々にそう話す彼等の横を通りすぎ、テントの中に入った。結構広めのテントの端にある簡易ベッドに腰を掛ける。

簡易ベッドの下に置いてあった迷彩のリュックを出し、カレーライスと書かれたレトルトのパックを中から取り出した。

今朝配給されたばかりだが、冷たくなってしまっている。

俺は封を切り、ご飯のパックを開けてカレーのルーを盛り付けた。冷めているのであまり美味しく見えないそれを付属の白いスプーンで掬って食べた。カチカチになった米を噛み砕きながら、缶のお茶を飲む。

早く駐屯地に帰って食堂の温かい料理が食べたいと思いながら、俺は美味しくないカレーライスを口の中に掻き込んだ。


撤収の命令が出たのは2時間後だった。

我々は荷物をトラックに詰め込み、テントを回収した。

結局、黒い亀裂の正体について知らぬまま帰隊することとなった。隊員のほとんどが暇があればその黒い亀裂について話していた。

全てを撤収し終えた頃、日はもう東へ傾いていた。俺はトラックの荷台に乗り込み一息ついた。

そして、出発する前に全員居るか点呼し、演習場を出た。

何れあの黒い亀裂の正体が明るみに出るのだろうか。それとも機密として表に出ないまま揉み消されるのだろうか。

恐らく後者は目撃者が多く、話は直ぐに広まる為、機密にするのは難しい。

明るみに出るならば、世界各国が黙っていないだろう。

一体亀裂の先には何があるのだろうか。

俺は黒い亀裂について考えながら、荷台の柵に凭れて眠ってしまった。


異世界調査部隊が編成されたのは黒い亀裂の正体が分かってから2ヶ月後のことだった。

黒い亀裂の正体、それは異世界への入口だった。黒い亀裂が出現した翌日、亀裂の中へ遠隔カメラを着けたドローンを飛ばし調査することになった。ドローンを亀裂の中へ飛ばすと映像が一瞬途切れ、草花が生い茂った場所の映像が映る。ドローンを上昇させると眼下には草原が広がった。その草原の上空には見たことのない鳥や小さな黒いドラゴンが飛んでいた。

しかしその映像が流れた直後、ドローンは小さなドラゴンに破壊された。


俺はその映像を見せられ胸が高鳴った。まさか異世界が存在するなんて夢にも思わなかった。我々のように文明を築いている種族がいるかもしれない。彼等と交流すれば、もしかしたらこの世界に新たな技術をもたらすことも出来るはずだ。

日本政府も考えていることは同じだった。総理大臣は異世界調査部隊を編成し、異世界を調査せよと命令を下した。


その異世界調査部隊には俺も加わることになった。

出発当日、亀裂の前には調査部隊の隊員と資材を積んだトラック、戦闘車両がズラリと並んだ。トラックには荷物と一緒に隊員達が乗り、車内は寿司詰め状態になっていた。


午前9時、状況開始の合図と共に部隊は亀裂の中へと進んでいく。高まる期待と緊張の中、我々の乗ったトラックは亀裂の中へ入った。

トラックの中がトンネルに入ったように暗くなり、しばらくするとまた明るくなった。どうやら異世界に着いたようだ。荷台の覆いの隙間から外を覗くと綺麗な草花が咲く大草原が広がっているのが見えた。

トラックが停車し、下車した俺は空を見た。

そこにはドローンの映像で見た小さな黒いドラゴンや見たことのない鳥が飛んでいた。

足元には膝上まで伸びた草が生えている。この草は日本でも見たことのある一般的な雑草だ。

近くに生えている木には黄色い不思議な形をした木の実が枝からぶら下がっている。トラックから下りた隊員達は新しい世界の光景を目の当たりにし、皆口々に感嘆の声をあげていた。

しばらく辺りの景色を見ていると、トラックからドライバーが下りてきた。


「宮本3尉。」


「お、どうした赤城士長。」


「我々はこれから周辺の調査をするそうなので全員トラックの前に集合するようにとのことです。」


「了解。よし、全員準備しろ!」


俺はトラックから下りた隊員達に声を掛けた。



周辺調査をする為に集まった隊員は30名。

その内の10名を俺が指揮することになった。

先程声を掛けてきた赤城もその10名の中にいた。射撃検定特級の彼がいれば何かと安心できる。

俺は彼等を2列横隊で並ばせ指示を出した。


「現在地から北方向へ前進する。全員、弾倉を装填しろ。」


そう言うと全員弾帯に付けた弾のうから弾倉を取り出し、小銃に装填した。全員が弾倉を装填したのを確認し、俺は小銃のコッキングレバーを引いた。


「今回は実弾を使用する。全員銃口に注意すること。安全装置は掛けておけ。なお、現地人への発砲は命の危険にさらされた時以外使用しないこと。以上。」


そして俺は分隊を縦隊にし、前進させた。

今回初投稿になりますが、今後も時間があれば掲載する予定です。

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