地球貫通トンネル:MANNHOーRU
「マンホールの中ってどうなってるの?」
夕暮れ時の街に、下校中の小学生が地面をずっと見つめていた。
私は少しずつその男の子に近付いていく。彼の横を通り過ぎようとした所で、そう呼び止められたのだ。
突然の言葉に、
「えっと…」
と私は言葉をつまらせた。
私は男の子に、夢を与えるべきなのだろうか。それとも、もっと現実的な事を教えるべきなのだろうか?
私は少年の目を見つめた。真っ直ぐと、透き通るような瞳には、自分が映し出される。
「どうなっている思う?」
自分でも、どうして聞き返したのかは分からない。でも、何となく答えを教えては駄目気がした。この子の好奇心を、私なんいうつまらない大人が止めてはいけない。そんな思いがあったのかもしれない。
男の子は、パチパチと意識的に瞬きを数回した。そのあとで、口角を目一杯広げながら笑顔でこう言ったんだ。
「ブラジルまで繋がってる」
きっとこの声は、地球の裏側にまで届いたと思う。