基礎から終わる学校生活
茶番にお付き合いください
休みの日の前、要するに金曜日はどうして足が軽くなるのだろうか……。
「明日は何をしようかなぁ」
顔がにやけてしまう。アニメを見ようか。小説を見ようか。登校しながら明日のことを考えてしまう。恐ろしや休日……
「ひーくん、なんで気持ち悪い顔で歩いてるの……?」
「いや、さ、明日から休みじゃんって……うぉい!なにさりげなく隣歩いているんだよ!」
ちーちゃんこと玉原 千夏が俺の隣を歩いていた。
最近ではすっかり打ち解け、コミュ障もなくなった。
「お兄ちゃん、隣歩いている女の子はだれかな?」
「あぁ、まだ紹介してなかったな。この人は同じクラスでダンジョン学でパートナーの玉原 千夏さんだ」
「よろしくお願いします、千夏さん……」
ん?
「おい、美聖お前、前に清水さんと俺が仲良くしていたら嫉妬していただろう?」
「そ、そんなことない!」
美聖は顔を真っ赤にさせて否定してくる。
「ほん、本当に違うもん!本当に、本当にあいつは危険だもん」
本当だといわれてもな……。何が危険なのかもわからないし、てかそろそろ美聖が泣きそうなので話を戻す。
「そう言えばちーちゃん、俺と登校してる意味が分かっているのか?」
「どういうこと?」
不思議そうな顔をするちーちゃん
「遅刻確定だと思え」
「別にいいもん……」
うわぁ、本当に別にどっちでもいい顔だ。
まぁ、本人がいいならいいんだろう。それに俺と登校しているわけだし、俺の方に注意が行くだろう。
俺は……いつも通り謝ればいい話か……。
「すみません、寝坊しました」
学校に着き、いつも通りの言葉を言う。
「影野、お前何回遅刻したら気が済むんだ?」
担任の神代先生がこれまたいつも通りの言葉を言う。
俺はそれを笑って誤魔化す。今日もいつも通りの日常。そう思っていた……。
授業合間の休み時間、その日常は大きく崩れた。
「影野くん、今日の放課後少し空いてるかな?」
清水さんから声をかけられる。
教室で清水さんが俺に話しかけてくることは珍しい。
「べつにいいよ。放課後に何かあるの?」
「いや、私事なんだけど…伝えたいことがあるから……」
伝えたいことって何だろう。
「まぁ、いいよ。別に用事ないし……」
家帰ってもゲームぐらいしかしないしな。
「よかったぁ、じゃあ今日の放課後に屋上でね」
「あぁ……」
って屋上!?告白イベントのド定番じゃん!もしかして……
いやないな。絶対違うことなので清水さんが俺のことを好きだなんてことは考えから外す。
そして気づく、いつもとはなにかが違うクラスの視線に……。
「マジで!?清水さんが影野のことを?」
「ないわぁ……」
「死ね、影野」
うわぁ、勘違いされてる……。
「ひーくん……どうするんですか?」
あ、ああ。どうしよう……。
とりあえず相談しよう。俺には頼れる友達がいるからな。
「日向ぁ、聞いてくれよ……」
「ひ、孤!?ど、どうひたんだよ?」
日向が噛んだ……
あぁぁ、もうこの事が他のクラスまで伝わっているのか……。
でも……
「話が早くて助かる。で、どうしたら良いと思う?」
「まぁ遅かれ早かれこうなることはわかってはいたが…」
「分かっていたなら言ってくれよ……」
「いや、こればかりは俺が言ってはいけないしな……」
何か言えない理由でもあるのだろうか?……もしかして何かサプライズ?……違うな、そもそも何かした覚えないし。
「もしかして、新手のいじめか何かか?」
「それは違うと思うぞ?まぁ、何があるかは行ってからのお楽しみじゃないか?」
「あ、後、周りの人たちに俺と清水さんはただの知り合いだと言っといてくれないか?」
こればかりは今までボッチ高校生ライフを歩んできた俺にはどうしようもない。
人脈や信用性なら日向に頼んだほうがいいと思った。
「それぐらいなら任せとけ」
日向は気のいい返事をしてくれた。ありがとう、日向。心の友よ……。
「そういえば、ちーちゃんは何か知らないのか?」
「私は何も知らないよ?」
そうなのか……
嘘つけ!お前スキルで心読めるだろうが!
「さて、何のことでしょうか?」
ちーちゃんは笑いをこらえるのに必死そうだ。
今俺は初めて女の子を殴りたいと思った。
「でも本当に知らないよ……清水さんのスキル、結界だったっけ?それに阻れるから……」
なるほどだから、本当に知らないのか……。
でも……
「じゃあ、なんでさっき笑いを堪えていたんだよ」
「それは……、だって、同じコミュ障の人がピンチの時は見ていてとても面白いから……」
「いい性格してるなおい!」
「えへへ……」
褒めてないんだが、俺はツッコまないぞ。
こうしてる時間ももったいないし、放課後なんてどうでもよくなってきた。
それに今できることといえば周りの誤解を解くことだけだ!
そのあとは日向と俺でできるだけ誤解を解いていった。
結論を言うとほとんど誤解は解けたのだがほぼ全て、いや、全て日向が解いてくれた。
ちーちゃんはというと……言わずともわかると思うが逃げた。
しかも今日の剣術での授業で「あほ~!」と言いながら何も防具をつけてない俺に竹刀を振り下ろしてきやがった……。おかげで今、頭に大きなたんこぶができている。
そして時は放課後……
そういえば放課後といえば放課後ティー〇イムを思いつくのは俺だけだろうか。
そうだ。明日の休みは、『けい〇ん』を見よう。そうしよう。
「よし、行くか……」
現実逃避もこれぐらいにして、さっさと要件終わらせて帰ろう。
俺には待っている嫁がいるのだから…。
「来てくれたんだ、影野くん……」
「まぁ、な……」
俺がそう答えると少し長い沈黙が続く……。
清水さんの頬は少し赤くなっているような気がした。
流石の俺でも緊張してきた。いつまで続くんだこの沈黙。
「あの!」
長い沈黙を破ったのは清水さんだった。
「あの、もしよかったら、」
どんどん鼓動が早くなっていくのを感じる……
「つ、つ…」
あ、いやな予感がする……。
「付き合ってください!」
「へ?」
俺の時間が止まった。