スキル無双
今俺は一人ぽつんと自分の教室に立っている。
「最悪だ……」
今日は朝から遅刻するは、ダンジョン学の解体の授業では人型モンスターゴブリンを解体したのだが、物凄いグロテスクでかなり精神的にも体力的にも疲れた挙句、遅刻の罰として放課後、一人で教室の掃除をしなくちゃいけなくなった…。
「最悪だ……」
しばらく沈黙が続く……。
今日は妹も友達と帰るということで時間はたくさんあるし、教室に誰もいなくなるまで残っていた。
もう誰も教室にいないよな?
俺は教室に誰もいないことを確認し、スキルを使う。
「スキル、創造」
目の前が光だす。
俺は今、自分のスキルでホコリを材料にサッカーボールを作っている。
俺のスキル、創造は材料さえあれば万物のものを作れる。
しかし、その作る時間が問題で、小さい消しゴム一個作るのに一時間もかかってしまう。
中学生の頃、鉛筆を作ろうとして一ヶ月かかったこともある。
でもこのスキルは、ただ集めて丸めるだけだった場合、1分程度で終わる。
材料は自分の半径5メートル程度にある適当な材料を自動的に見つけてくれる。
俺は以外にこのスキルを気に入っている。
「今日も綺麗になったな」
このスキルを手に入れて思うことがある。
ー俺、掃除だったら無双できてるとー
前にこの自動収集機能で金銀財宝取れるのでは?と思い、神代先生にドヤ顔しながら言って見たが……
「もしお前が言っていることを実行した場合、ダンジョン内ですると上から鉱石は落ちてくるだろうが、その時鉱石と一緒に土砂も降って来て仲間や、お前自身が生き埋めになるぞ?」
と言われた。
まぁ、でもそんなことができなくても掃除が早く終わる点に関してはこのスキルは便利だ。
他に使い所がないけどな……
だからEランクのスキルなんだが……。
「孤、今日一緒に帰ろうぜ」
唯一の友達、日向が声をかけてくる。
「野球はどうしたんだ?」
中学校から野球をやっていた日向は今年も当たり前のように野球部に入っていた。
「今日は部活が休みだから久しぶりに一緒に帰ろうぜ」
そういえば最近、日向と一緒に帰ってなかったな……
そういえば高校に入ってからは清水さんと一緒に帰ってばかりだったけど、今日は誘われなかったな……
別に残念だとは思わないが、今日はどうしたんだろうと少し、ほんの少し思ってしまう。実際は美少女と一緒に下校するクソイベントなど、リアルで存在しちゃダメなんだ。
「いいよ、一緒に帰ろう」
俺は雑念を振り払うかのように二つ返事をした。
「よかったぁ、じゃあ一緒に帰ろっか」
あれ? おかしいな? 幻聴が聞こえるぞ?
後ろを恐る恐る振り返ると、そこには満面の笑みの清水さんがいた。
「清原さんが何故ここにいるの?」
「ごめんな、孤。清水さんも一緒に帰るって言ってなかったな」
「だ、大丈夫だよ」
昨日、妹が清水さんの悪口を言っていたことを思い出し、聞いてみる。
「そういや清水さん、昨日妹がお前のこと批判してたけど何かあったのか?」
「さて、なんのことでしょうか?」
不思議そうな顔をする清水さん。
「昨日清水さんと別れてから、家で妹がお前に近づかないほうが良いって言ってたんだよ」
清水さんは驚いたよ様子で
「そんなことがあったんですか? でも、それって、というか…」
「「嫉妬でしょ」」
日向と清水さんの言葉がハモる。
「え?」
は!?なに!? なんで妹が俺に嫉妬するわけ?
もしかして美聖、俺のことが好きなの?
ってそんなわけないか……。
「あの、口に出てますよ?」
「やべ、出てた?」
「出てたな」
日向が肯定してくる。
「ていうか嫉妬って、美聖は俺のことが嫌いだろ?」
「今さら何言ってんだよ。あの態度見ればさすがに誰でもお前のことが大好きってことぐらいわかるだろ」
一体いつの態度だろうか?本当に身に覚えがない。美聖にそんな素振りは一切なかったぞ?
「でも、やっぱりないな」
美聖が俺を好きだなんてないな。でも帰ったらちょっと聞いてみよう。
俺は鞄を手に取る。
「とりあえず帰りながら話そう」
「そうだね」
「そうだな」
ということで帰りながら話すことになった。そういえば清水さんと一緒に帰る時、今まで何も喋っていないなぁ。なぜか妹と清水さんが仲悪いのは事実だし、その空気でそのまま別れるまで話さないことが多いからな……。
「そういえばさ……」
日向がふと声を出す
「清水さんが持ってるスキルの結界ってどういう効果なんだ?」
そういえば俺も結界ってことは知っているがどういう効果かは知らないな。
「あんまり凄くないよ?使い勝手も悪いし……知りたい?」
Sランクスキルを持っている時点で凄いことは知っている。俺のスキルと比べるなんておこがましい程だ。が、どんなスキルかは是非知りたい。
「宜しく頼む」
「よ、宜しく」
日向に続いて返事をする俺を見て、いつもの笑顔がもっと笑顔になった気がした。
「じゃあ、二人ともしばらく動けなくなるけどきつくなったら言ってね」
清水さんがそういった瞬間、体が動かなくなった。
マジかよ!体が全然動かない。指すら動かない。いや、動かせない……
日向も相当きついだろう。俺は日向の方を見てみる。
「確かにきついなこれは」
そこには普通に動いている日向の姿があった。まぁ、日向のスキルもSランクだからあまり驚かないが……。
日向のスキル形勢逆転は自分がピンチであるという条件で発動するスキルだ。
名前通り、どんな状態でも、どのような状況でも全てにおいて勝つことができるという。正しくチート能力である。
「ごめん、もうやめてくれ……」
俺が言った瞬間、動かなかった体が急に動くようになる。
「大丈夫?影野くん」
流石に2人ともSランクスキルだけあってバケモノである。
「すごいな二人とも」
この2人仲もいいし、スキルも強いしお似合いだな……。
そうこうしている内に、帰っていると清水さんがいきなり用事ができたとかで帰って行った。
「お前良かったな。清水さんみたいな美人と友達になれて」
「まぁ、な」
正直清水さんと仲良くなって日々の学校が楽しくなったことは本当だ。
「でも、一番の友達は日向だよ」
「お、おう。あ、ありがとな」
そして日向とも別れ、俺は家に着いた。
俺はいつも寝る前に思うことを思いながら眠った。
「また清水さんの名前聞き忘れたな……」っと。
ー家に帰ってからの話ー
そういえば、妹に聞いとかなければ…「ねぇ、もしかしてお前って俺のことが好きなの?」と…。
その夜、妹が顔を真っ赤にさせ怒りながら、電撃で殺されそうになった。