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「珈琲、おかわり」

仕事帰りに、いつもの喫茶店に立ち寄って珈琲をおかわりしただけだというのに、店員のルカは、酔いがだいぶまわっているのに酒のおかわりをする困った客に向けるような視線を無言で向けてくる。

「何よ?今は私の執事でしょ…お嬢様におかわりの珈琲淹れなさいよ」

「いくらなんでも飲み過ぎですよ、お嬢様。家でも紅茶とか飲むでしょうに」

私の方が年上なのに、年下の困った子をたしなめるような口調で言う。

「1日の適量は、守りましょうね」

同じコップに淹れてもらっているので、そこまで飲んでいるようには見えない。それでも、来てから5杯は飲んでいるので、そろそろひかえた方がいいとは頭では分かっているのだが。

「アルコールよりは、いいと思うのよ」

「どっちも飲み過ぎは身体に悪いです」

夏美は、心配そうに注意してくる。

「よかったじゃないですか、自分の事を書いてもらえて。大切に想ってもらえているって事だから」

「…だから、よ」

今は素直に嬉しいだけの感情を抱けていけそうになかった。自分でもゆらいでいるのはどうかと思う事もあるけど、美空の事を嫌いになったわけではない。好きだから、困ってしまう。正直、今、そんな詞を書くなんてずるい。言い過ぎかもしれないが、落ち着きつつあった感情に、隕石を投下された気分だ。気持ちがあっちにいったりこっちにいったり、嬉しくて、ずるくて、どうしてくれようかと思い、たかぶった感情を冷却しないと感想は書けそうにもなくて。

「大体ね、ルカが悪い」

「え? 俺、何もしてない」

「している。ルカが作品作って、美空の事を刺激しているから、ますます、作品が上手くなっていっているし」

「えーと、向上心持っているのも、他の作品に刺激を受けるのも日常であって、俺のせいじゃない、よ。な?」

「んー…私は、何も言えないかな。でも、上手くなれているのは羨ましい」

「どうして、あの公園を幸来に紹介したの?」

まだ残っていた水を飲みながら、ジト目で夏美を見る。

「優香さんが、好きかと思って」

「あぁ、その公園、いつかは、俺もそういう場所に行きたいなぁって思っていた」

「何それ?」

「物作りできる綺麗な公園、趣味を満喫できる場所なんてそうそうないから…」

夏美の声が一段冷えている。それに気づいていないルカが説明しようと、口を開いたところで冷や汗を流し始めている。

「いつも、特に行きたい場所はないって、言っていたよね?」

「それは、ですね…会うのが目的だから、場所にこだわりがなくて…公園に関しては、付き合わせるみたいで誘いづらくて、ですね」

「そういう事を話して、って前に話したよね?」

「……はい」

叱られた子供のように落ち込むルカを見て、意地悪くいい気味だと思うと少し気がはれた。だから、助け船を出す事にする。

「本当に風景が綺麗な公園だった。ゆったりした時間が流れていたよ」

「そうだったんだ。まだ、行った事はないから、行ってみたい」

「じゃ、今度な」

『会うのが目的だから、場所なんて何処でもいい』なんて、受け取りようによっては殺し文句が計算なく出てくるのは、ルカだから、なのだろう。

それでも、いつも行きたい場所を自分から提案していると、この人にとって自分は特別な時間を過ごしたいと思われてなくて、大切なのではないんじゃないかと寂しく感じてしまう事があるのは、欲張りだろうか。

閉店ちかくの時間では、来るお客も限られている。もしかして、と思いドア付近に視線を向けていると美空がやってきて、珈琲を頼むと夏美さんは店の奥に淹れに行った。


「あれ、優香も来ていたの?」


来週の予定が、昨日書けてしまったので投稿します。

もうしばらく続く予定です。

主人公にしているのもあって、優香さんが書いていて楽しいです。

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