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【7】


【6】


幸来との公園デートの翌日。

仕事だった私は、社会人になってから久しぶりに筋肉痛にみまわれた。

事務のバイトをするようになってからというもの、歩くのは通勤の時のみになっていた。それでも、歩いているつもりになっていたが、体を十分に動かせていなかったようだ。

あの後、アスレチックを子供にまざって、気づけば楽しくて大人げなく全力で遊んでいた。コースもあるほどのアスレチックを、コンプリートしないと気が済まなくなってしまった結果、主に足が盛大に筋肉痛になっている。歩き方が自分でも痛みをかばうように歩いているので、普段にくらべてみると違う動きになっている。

「おはようございます。って、優香さん、どうしたんですか?」

「ただの筋肉痛です」

職場で同僚に話しかけられ、そう答えると同僚はニヤリと笑みを浮かべる。

「デートですか?」

「公園で思い切り体動かしただけ。しばらく、体動かしてなかったから」

「そうなんですか…たしかに、デスクワークでパソコンばかりに向かっていると、気をつけていても肩こりとかひどい事になりますよね」

あえて、デートという単語を使わずに、事実を言いながら質問を煙にまく。いつのまに、私は深く話したくない事に関して、大人の小賢しさという防衛手段を覚えたのだろうか。

からかおうとしていたのに、違ってしまったという落胆している同僚を見ながら自分の席に着く。

「マッサージした方がいいですか?」

「姿勢、気をつけたがいいかもしれない。根本的な部分が治らないかぎり、対処療法でよくなっても、また再発するから。あとは、自分でマッサージするとか」

「そうですよね…あぁー疲れた時にマッサージしてくれる相手が欲しい」

同僚が心の叫びを言ったところで、朝礼が始まった。

今日の業務に関する目標と昨日からの引継事項と、いつもの決まりきった形式の朝礼を聞きながら、意識の半分は昨日の楽しかった思い出に飛ぶ。

物作りデートが憧れだったのは、デートスポットに出かける事が予定をあわせさえすれば行きやすいのに対して、物作りが好きな人以外だと一緒に行こうと誘うに誘いずらいからだ。作るのが苦手で嫌いだからと相手は言うのかもしれないが、同じ時間に同じ物を作って、一つの思い出作りがしたいと思った。それで、心底嫌いなわけじゃなくて、苦手なだけなら、それで少しでも楽しいと感じてもらえるのなら、それだけで私は満足するのに。

そう思ってしまう私は、やはり、大人げなく我が儘なのだろう。

朝礼が終わり、業務が始まると同時にあくびが出そうになってしまい、持参していた水筒に淹れた珈琲を飲む。

公園デートの後に、最寄り駅近くの落ち着いた雰囲気の居酒屋で、時間を程良い滞在時間でなら、心地良く滞在させてもらえるお店で飲み始めたのがいけなかった。

早めにきりあげる予定が、気づけば、翌日にバイトがある事も、帰宅すれば片づける家事が残っている事も、頭の中から、すっかり追い出されてしまっていた。まだ、夜も浅い時間帯だが、遅くなってしまったので、幸来の家の途中まで送っていき、その結果が、ごらんの通りの睡眠不足になった。

ポケットに入れている携帯が静かに振動して、メールが届いた事を知らせる。

朝礼での話では、今日はかなり忙しくなりそうな仕事の量でもなく、少しのゆとりをもって作業をする事ができる平和な日のはずだ。

休憩時間に、返信しようか。

「優香さんは、マッサージしてくれそうな相手居ますよね?」

ふと満足げな笑みを浮かべている自分に、こんな気持ちになるのは久しぶりだと心地よく感じている。半分聞き流していた同僚の話かけに対して、その相手が幸来だといいなと思いながら返事をしてしまったのは、そんな事を感じていたからだ。

「うん」

声に出して返事をした事に気づいてから、しまったと思っても遅いのはあきらかだ。いつもならば、頷かないのに。もう、視線を向けなくても分かる。気配が変わり、休憩時間に質問される未来が見えた。

「ふーん、後で詳しく聞かせてください」

私の気のせいだろうか。

敬語だけど、敬語じゃない。

詳しく話せよ?と命令されているような気分を味わった。

「ランチ行きましょうね?」

「…はい」


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