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【11】


どんな出来事が「きっかけ」になるのか。

それは、私自身にも分からない。分からないまま、「過去」にしたいと感じるようになっていた事に、驚きも感じている。

正直なところ、美空以外で好きに本気で愛せる人に出会えると、思っていなかった。

あの天然人たらし王子にかなう人物が存在するなんて、思えないでしょ?

大体、美空からしてみれば、私は元恋人で今現在は恋のライバルになるのに、あの子はこの前の飲みの時にこんな事を言った。

『……じゃあ、勝負だね。自覚した以上、誤魔化す事も諦める事もしないけど…優香とは正々堂々勝負できそうな気がする』

どうして?と質問する私に美空はこう答えた。

『気持ちがゆらいでいて自分が嫌いとか思っているかもしれないけど、だからって、好意を利用しようとかしないで、曖昧なまま付き合ったりしないところ、好き。嫉妬しないわけじゃないし、憎いと感じる時もあるけど、卑怯な事はしないって信頼しているから、相手が優香でよかった』

なんて、言ったのだ。

言ったのが、美空でなかったのなら、そんな綺麗ごとを言ってと思い、真にうける事もしなかったのに。


「……近くに、ゲームセンターがあるので、行ってみませんか?」

「しばらく行ってない。今って何があるの?」

「いろいろ? 私もそこまで行かないですけど、この前対戦した時に楽しかったので」

ここに入る人物名は、美空だろうなと思う。それで、音楽のアーケードゲームしかしなかったはずだ。他のゲームには見向きもしないで、通り過ぎていた気がする。

「じゃ、そこにしようか」

「はい」

食べ終わった後に、伝票をとるとそのままレジに向かい、会計をすませる。美味しい肉を食べたいがためにこのお店にしたので、そのまま『これぐらいは大丈夫だから』とおごる事にした。


あれから、幾度か幸来に会っているうちに、憧れるようなドキドキでもなく、特に意識をする事もなく、一緒に未来を過ごしていくのは彼女だと思えるような心地のよさを感じている。

こんな時、ルカならば、上手く言葉にしてしまえるのだろうが、私にはできそうにない。しいていうのならば、自然と気が付いたらそう思えるようになっていた。

少なからず、告白を一回されているのもあると思うけど、隣に居て安心する事ができるのは、甘えではないけど、ありのままでいる事のできる雰囲気に、ひかれている。


「あ、せっかくなので、プリクラ撮りませんか?」

ゲームセンターに入ると、ほどよく温かく感じる。入り口からすぐに見える場所にプリクラの設置されているのは、昔と変わっていないらしい。

「撮ろうか」

学生を卒業してからは、まったくといっていいほど撮っていなかった。


その時の自分の好奇心を、数秒後の自分は後悔する事になる。


プリクラは、背景やスタンプを選ぶだけではなく、どんなポーズをとればいいのか、テーマをあらかじめ提案してくれるコースも存在している。写真を撮る時に、いつもと同じなってしまわなくて、当時は楽だなと思って心の底から楽しんでいた。

心の底から楽しめていたのは、友人と撮っていたからであって、近づこうが変に意識する事なんてまったくない。

人によって違うと思うけれど、私の場合は、撮るのが友人だという条件ならば……あとは、もう付き合っているカップルなら、心底楽しめるものだと思う。

撮っていくうちに、プチっと健全な意味での理性がはずれる音が、心の中でした。

撮り終った後、大人気なく音楽ゲームの対戦モードを本気で遊んでしまっていた。


「幸来って、意外と負けず嫌い?」

「勝負になると、つい……」

「そうなんだ」

次にする太鼓の形をしたゲームは負ける気がしないので、つい、負ける気がしないので、何かを賭ける事にした。

「私が勝ったら、アレおごって」

と、私は自販機を指さす。

彼女は、何か真剣に考えた後覚悟を決めた表情で、こう言った。

「……私が勝ったら、この後の今日の時間と優香さんをください」

「勝ったら、ね」

と、この時の私は、幸来が本気で言っているとは思わなかった。

負けるはずがないという自信があったから、というのもあるし、もし、そうなったら、今の自分の気持ちをきちんと伝えようと思った。


結果、私は、なぜ賭け事などしたのだろうかと後悔する事になる。


もう少しで完結予定です。

二人とも幸せになってほしいです。

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