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作品の感想を書くという事は、私にとって疲れる作業だった。
嫌な意味での疲れるのではなくて、運動直後の気だるいような心地いい疲労感をともなう。ビーズのアクセサリー作りしかしていないけど、一つの作品を作りあげるのに真剣に向き合って作られたものに対しての感想は、こちらも真剣に向き合わなければ、とても失礼だと思う。
人によって違うと思うけれど、感想や作品を作る時にはお酒を飲まないように気をつけている。
さらっと聴いて、作品の第一印象の感想というのも大切な事だと思う。
だが、詞を書くという事は、書きあがるまでに時間がかかる。短ければ短時間で終わるものでもなく、自分の好きな部分も嫌いな部分も、向き合い。書きだした中で、音の数にあわせるという条件にあわせるという事は、より短く、より伝えるために他の言葉はないのか、削る作業は一度書いた自分の言葉を消してしまう事になる。
全部の作業が好きだから楽しくできるものでもなく、嫌になってしまう事があってもやり遂げる忍耐も必要なのではないかと感じている。プロでもアマでも作品を作る中でその部分は変わる事がないと思う。
休日の昼間の時間、朝のうちに淹れておいた珈琲を飲みながら、何回か繰り返し聴いた後に美空に送る作品の感想文を書いていた。
「……こんな感じかな」
書けた感想分を何度か読み直して、メールの送信ボタンを押す。感想を何回書いても、慣れない。送った後に気だるいけれど達成感のある疲労感がおそう。仕事や家事、自分の作品作りでの体力的な疲れもあり、あらがわないままに体を横にすると、眠気がおそってくる。
部屋にかけてある時計を見ると、思っていたよりも、時間が経過していた。
そろそろお昼だ。そういえば、冷蔵庫と冷凍庫の作り置きがない。調理するのが面倒だな。いいか、少しぐらい食べなくても…。
床の上をそのままゴロゴロしていると、携帯が振動をする。片手だけ伸ばして、折り畳み式のテーブルの上に置いた携帯を手に取ると、幸来からのメールだった。
これから会えないかという誘いのメールだった。
「んー…」
どうしようか迷っていると、視界の隅に、この前交換したキャンドルが見えた。
今から外に出られる格好になるのにかかる時間を計算した後の待ち合わせ時間を、彼女のメールで送信すると、数分で返信がくる。
早いなと思いながら、ふと笑みを浮かべた。
「優香さんって、食べますね」
「お昼、まだだったから」
いつもの喫茶店ではなく、ランチの値段が高くもなれば安くない、自分へのご褒美だと言える場所で赤身の柔らかい肉を口に運ぶ。
セットメニューで、パンとサラダ、スープバーでのスープと煮込みの牛肉でボリュームは、働きざかりの男性でも満足するようなボリュームだった。ランチの時間帯というのもあって、良心的な価格で食べる事ができて幸せだ。
休日の朝はいつもぬいているので、煮込み肉のうまみが口の中いっぱいにひろがる。
彼女はサンドイッチのセットを食べている。
「意外です。あまり食べなさそうなイメージがあったので」
「体がもたないから、食べる時は食べるよ。肉食な感じは嫌?」
冗談のつもりで笑みを浮かべると、別の意味を想像してしまったのか、彼女は頬を赤くして視線をそらした。
「嫌では、ないです。むしろ…」
「この後、どうしようか?」
わざとその言葉を聞かないように、重なるように今日の予定を質問してみた。
ゆらいでいる。
そんな部分が自分でも好きではないと自覚はしている。
だから、完全に美空の事を「過去」にできるような「きっかけ」を、彼女からほしいと思っていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
14日頃までは週末に更新予定でいます。
あと、数話で完結予定です。(予定は未定です)




