一つだけ君に
僕は目を閉じて顔を空に向けながら、そこで何も考えずにただ立っていた。
僕をこの世界から消すようにただずっと。
「何をしているの?」
そう隣から聞こえたので僕は目を開けた。
首を傾げながら彼女が僕を見ている。
「何もしていないよ」
「そう」
彼女は隣で僕と同じことをやり始めた。
すー、と目を閉じて体の力を抜いた。
この時に僕たちの中で時間が止まった。
少なくとも何も変わらなくて、だれも動かない。
そんな錯覚をした。
次に目を開けたときに日が眩しく感じた。
世界を止めた代償はそれだけのようだ。
「何がしたかったか分からなかった」
残念そうに首を振った。
僕は笑って、首を振った。
「僕にも分からなかったよ」
「じゃあ、なんでしたの?」
「試したかったから、かな?」
「何を?」
「さあ?」
周りを見渡した。
それは広くて何もなかった。
ここにいる僕たちが異物であるようで場違いに見えた。
だから、ここに溶け込んだら僕も消えるかもしれない。
そんなことを試してみたかった。
僕が消えてなくなればもしかして世界は騒がしくなるのかもしれない。
この世界も一緒に消えてしまうのかもしれない。
「君は消えるのかな?」
隣にいる彼女のことを思った。
僕のいない世界の彼女のことを。
「何のこと?」
「何でもないよ」
きっと僕の内面を覗いたならそこは大きな穴になっている。
穴の中がずっと見えないそんな穴に。
僕はそこに何かを詰めたくて、その何かをずっと探していた。
しかし、その何かを見つけることができなかった。
もしかして僕は八つ当たりがしたいのかもしれない。
自分で穴に入ってその中でずっと自分の腕を抱きながら誰にも影響しない、そんな八つ当たりを。
そしてその後に最初から何もないように消える。
隣の彼女は涙を流すのかもしれない。
強がって笑うのかもしれない。
僕と同じように消えてしまうのかもしれない。
彼女がどうしようと僕は何かをするつもりは無い。
それがどんな選択をしても僕のためにしてくれたと光栄に思うことにしよう。
それでも一つだけ、たった一つだけだ。
僕は彼女に一つだけ頼みたい。
「僕を一人にしないでね」
これはわがままなお願いで、僕が言っては台詞だ。
そうだとしても僕は彼女を最後まで見ていたい。
消える直前まで彼女の顔をずっと。
「逃げられると思ってるの?」
彼女は悪戯っぽい笑顔でそう言う。
僕は笑いが止まらなかった。
ただ狂ったように笑いながら、僕はずっとそこにいる。
僕の穴を埋めるものを探すのは諦めたけれど、そこに僕が存在した証を見つけることができた。
君が僕を見つけてくれたことが、僕がそこで生きていた証。
それを握って僕は眠ろう。
この世界で誰にもばれないようにひっそりと。
途中から迷走気味ですが気にしないでください。
直せる機会があったら直すつもりです。




