プロローグ
2066年 4月某日
新宿に建ち並ぶ高層ビルの数々。その中の一つ、「E&R」のヘリポートに夜、世界中から集められた多数の記者が一人の男を取り囲むように集まっていた。
中心に立つその男は、百八十センチはある身長の足首にまで及ぶ白衣と後ろで結わいた長髪を風にたなびかせていた。男の名は、
耶麻 壮爾|<やまそうじ>
彼は、まるで周りには誰もいないかのようにリラックスして話し始めた。
「さて、ここにいる皆さんや画面を見ている方々は私の新薬の発表をお待ちなのでしょう。
ならば喜んでください。新薬です。」
記者達が色めき立つ。壮爾が以前、開発したガンに対する治療薬は臨床実験の段階で完治が九十七パーセントを記録し、実用化を迎えた後もその数字は 九十パーセントを切ることはなかった。この功績は、彼を英雄にするには十分過ぎ、齢二十七歳で新しい製薬会社を立ち上げるまでになった。
その二年後、彼はガンに対する予防接種を全世界の乳幼児に無償で提供した。貧困地域から山奥の村、紛争地域までその薬は届けられ接種率百パーセントという奇跡とも呼べる結果を残した。
しかし、その後十六年間彼から人々が待っているような発表はなかった。
「そっ、それで今回は何に対する新薬なのですか?!」
「噂では妊婦に打つ事により、障害を持った子や未熟児になる事を防ぐものと聞きましたが!!」
止まる事がない洪水のような質問を受けながら壮爾は考える。
人類の歴史には様々な転換点があったが、本当に全てを巻き込んだ転換点にしたのは後にも先にも私だけになるだろうなぁ・・・。しかし、やらなければならない。もし、これで遠くない未来に人類が衰退の一途をたどる事になろうとも・・・。後悔はない。
---ただ一つ
「さて!!皆さんそれではお教えしましょう。
今回の新薬の内容を!!・・・っと言ってもその表現はあまり正しくないのですが」
---彼らに伝えたい事がある
「十六年前の今日、日本時間の二十二時三十八分、丁度、今同じ時間に乳幼児に予防接種が打ち終わったと私は報告を受けました。」
記者達は皆首を傾げ始めていた。何を言っているのかと。
「新薬の効果が出るには十六年かかります。ゆっくりゆっくりと細胞を変化させていくモノだからです。そして、世界中で変化を実感している子供たちがいるのでしょう。わからない子供もいるのでしょうが。」
「耶麻さん!話がよく分かりません!!一体あなたは何をしたのですか?!」
驚きを隠せず動揺する記者達には目もくれず
「投与したのは百人です。世界は、私の発表で大きな転換点を迎えるでしょう。予測されていた未来は今日で崩れます。そして、預けるのです。世界の未来を。十六歳の子供達に」
---全てを背負わせてすまない、と
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2067年 4月1日
日本国東京第1特区 国立防衛高校にけたたましい警報音と共に1人の生徒が編入してきた。
これにより、停滞してた世界の歯車はまた周り始める-----




