故人、再び相見ゆ
主人公無双が書きたくてうずうずしているこの頃w
【校庭】
「さて剣術だが、事故防止のため実戦演習以外の時間は木刀を使って貰う。武器は基本、貴様らに最も合うやつを使って貰うつもりだ。よってこの時間に軽い適性試験を行う!」
必要以上に肥大化した筋肉に無数に刻まれた古傷。
目の前に仁王立ちする筋肉ダルマの様なこの男性は、体術の教師である。
整列中のエドワード.アイリーンは憂鬱そうにため息をついた。
理由は二つだ。一つ目に父親であるエドワード.ペリーシャが教壇でかましてくれた事。
友人はやはり言いづらいのだろうか、「お父さん。すごい人だね」と言うに留まった。だが、今はいいとしてもこれで試験に落ちた誰かが私を恨むんじゃないか。アイリーンはそんな不安でいっぱいだった。なるべく円滑な友人関係を築きたいと思っていた矢先にとんだ爆弾を置いていった父に殺意が止まらない。
そして、二つ目は、これが最も緊急な解決優先事項なのだが、体術教師のフレデリク.ユングと目があっている事。
だが、アイリーンが解決策を見つけるより先に、ユングが口を開いた。
「エドワード!ぼーとしている暇があったら倉庫より全員分の木製の剣を持って来なさい」
やはりか...。別にぼーとしていたわけじゃない。ただアイリーンは体術が苦手なのだ。
体術に対する嫌悪感を全身で体現化していただけなのだが。
「分かりました」
内心、舌打ちしつつアイリーンはあくまで丁重に優等生らしく答える。
こんなつまらない事で目をつけられては厄介だ。
倉庫はたしか第3校舎の裏にあったはず。
頭に地図を描きながら歩くアイリーンの前に“空から男が落ちてきた”。
急いで後ろに跳び回避しようと試みるが、運動が苦手なせいもあって尻餅をついて転んでしまった。
いやこういうのは大体、美少女が相場ではないのか?
それとも陰で流行っているのか空から落ちる系男子。
一方、ユアンは無事着地できたこと確認すると、体についた砂を払いつつ立ち上がる。
なんで空から降ってきたかとか、なんで着地できたかとか、この男に言いたいことは沢山あったが、取り敢えず嫌味を言ってやろうとアイリーンが顔を上げる。
「「え?」」
二人の声が重なる。
「もしかしてアイリーン?」
「やっぱりユアン君だよね」
それはアイリーンの父がまだこの学園の教師になる前のこと。
よく父に連れて行かれたデヴィッド邸で遊んだ思い出が懐かしくアイリーンの胸に蘇る。
幼馴染であると同時にユアンはアイリーンの想い人でもあった。
そんな想い人の口から魅惑的な言葉が漏らされる
「一緒にサボる?授業」
。。。。。。。。。。。。。。。。
【職員室】
「申し訳有りません。私の教育不足です」
体術教師のユングに深々と頭を下げるエドワード.ペリーシャ。
それに対しユングは苦笑いしつつ頭を横に振った。
「いえいえ、この学校は実力主義ですからね。試験さえ合格してくれれば誰も文句は言えませんよ。ペリーシャ先生の愛娘ですもん、実力はバッチリでしょ?」
「いえ、あいつは...」
ペリーシャは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
この人は娘が運動ができると思っている。
娘、エドワード.アイリーンは比較的優秀な頭脳を持っているが、運動の方は全くダメなのだ...とは言い出せなかった。
それは、プライドからではない。
自分の反対を押し切ってまで冒険者になることを望んだ娘に対する期待からだった。