表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/30

25

「な、なぁオウド…そろそろ休憩にした方が良くないか?」


「私からも提案するけど、もうずっと歩き通しだよ?それに、もう日も落ちてきたし、寝る所を探さないと…この辺の建物って、勝手に入っていいのかな?勝手に泊まったら怒られるかな?」


オウドたちは、セントクルセイド王国跡地へと転送されてから、真っ直ぐ東へと歩いてきていた

古代遺跡にはモンスターはいないのか、道中は数人の学者のような人たちを見かける位で、ただただ整備された道を歩くという単調なものだった


「…俺に睡眠は必要ない、そもそも眠れないしな。疲れも感じないし、夜目も効くからこのまま歩き続ける」


「えっあ、そうか…終末の森でも寝ないし食べないだったんだよな」


「そもそも、お前たち2人に付いて来るなら勝手にしろとは言ったが、その前に自分で言っただろ、足手まといに感じたら置いて行って構わないと」


「うっ…それは、そうだが」


「俺がお前たちの休憩に付き合う必要性が無い、俺はこのまま行くぞ、それでも付いて来ると言うのなら、勝手に追い付けばいい」


そう言って、オウドはアレクとクレアを残して、先へと歩いて行った

残されたアレクとクレアは、小さくなっていくオウドの後ろ姿を眺めているしか出来なかった


「本当に行っちまった…俺たちのこと、本当に何の関心も無いような物言いだったな…」


「それは…仕方ないよ、オウドにとって私たちは、まだ会ったばかりのほぼ赤の他人なわけだしさ。今無理して付いて行くんじゃなくて、しっかり休んでから、また追い付こう?恩返しだって、無理やりするものじゃないでしょ?」


「それは、そうだけど…でも、仕方ないか…」


それからアレクとクレアの2人は、無人の建物の中で朝まで交代制で休むことにした






夜が明けてきたようだ

あれからそこそこの距離を歩いたと思うが、やはり一向に疲れを感じることは無かった

と、前方に看板のようなものが立っている

ここまで王都跡、ここから先タレリア跡

随分シンプルな内容だ、この看板から先がタレリアとなっているようだ、王都跡とタレリア跡を見比べてみると、何となく王都跡の方が建物の作りが上等な気はするが、特に大きな変化は見られないので、いまいち分かり辛い

タレリアに入り、周囲を見渡しながら歩いていく

ふと、一つの建物が目に映った

それは、周りにある他の建物と比べても、特に変わっているわけでも何でも無かったが、何故か妙にその建物が気になった

近付き、扉を開けて中へと入るとそこには、こちらを見据えて表情を強張らせたスヌゥと、こちらを見て目を見開き、嬉しそうに口を歪めて笑みを浮かべた男がいた






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


来た

本当に来た

一体何故ここが分かったのだろう

スヌゥは、あいつはここへ来る気がすると言っていたが、まさか本当に、こんな短時間で来るとは思わなかった、スヌゥにああ言われて、まだ一日経っていない位だ、にも拘らずここへたどり着いたということは、オウドの中で、何らかの確信があってここまで来たということに他ならないだろう

あぁ…思わず笑みを浮かべずにはいられない

レプリカにはオリジナルの居場所が分かるとでもいうのか?帰巣本能…とは違うか、スヌゥも、俺を探せと言えば居場所を伝えずとも直ぐに探し当てられるのだろうか?スヌゥは、オウドが何となくここへ来るような気がすると言ったな…つまり、同じレプリカ同士ならば育った環境や知識に係わらず、ある程度レプリカ同士の行動が分かるということなのか?それは何故だ?双子はお互いの感覚などを共有することがあると聞く、それと似たようなものなのか?あぁ、もっと知りたい、スヌゥ、オウド、お前たちはこの後どんな行動に出るんだ?スヌゥは俺を守るために俺の前に立つのか?オウドはここへ何をしに来たんだ?さぁ早く言ってごらん?


「やはり来たかオウド、」


オウドの前へ行こうとしたところでスヌゥが俺の前に立ち塞がった

スヌゥ、やはりお前はそうするんだな、俺を守るか…ふふふ、そんな必要ないのになぁ

さて、オウドはどう出るのかな?


「スヌゥ、お前もいるとはな…一瞬見えたが、後ろにいるのがオリジナルだな?俺はオリジナルに会いに来た、そこをどけスヌゥ」


そうか、オウドは俺に会いに来たのか、一体どんな用で会いに来たんだ?お前は俺に何をする気なんだ?言ってごらん、ほらスヌゥ、そこにいたらオウドの顔が見えないじゃないか

言って、スヌゥの手を引き横にどかせる


「ちょっ危険です、下がっていてください」


スヌゥが首だけ振り返らせて抗議してくる

まぁまぁそう怒るなよ、危険なことをしてくるかもしれないだなんて、別にそれはそれでいいじゃないか――いやそんなことよりも今、あのスヌゥが俺の行動に対して抗議した…やはりオウドが絡むとお前は俺の予想外の行動をするようだなぁ、嬉しいよ

おや、よく見ればオウドの左腕が無くなっているじゃないか、スヌゥがやったのかな?あいつも中々大胆な事をするじゃないか、どれ、新しく治して(つくって)あげるからこっちへおいで


「お前がオリジ、ナル…か…」


「その通り、俺がお前たちのオリジナルだ、ところでオウド、お前腕を破損しているじゃないか、治してあげよう」


「だ、黙れ、俺はお前に…あな、たに――」


あれ?オウドの様子が変だな

今にもこっちを射殺すような視線をむけてきていたのに、急に頭を抱えて苦しみだした…妙だな、俺たちの神経系に痛覚は存在しないのに、何故苦しそうなんだ?

オウドが何に苦しんでいるのか悩んでいると、オウドはおもむろに自分の頭を殴り出した

一体どうしたんだ?俺たちに自傷行為なんて意味がないし、そもそもこのタイミングでそんなことをする意味が分からない…分からない?はっそうか…俺は、お前たちがどんな行動をするのかが知りたい

それを知ったお前は、だからこんな理解不能の行動をしてくれているのか?だとしたらオウド、お前は何て素晴らしいんだ!最高だよ、何て親孝行な奴なんだ!


「ぐっ…はぁ、はぁ…俺は、俺だ!他の何かになんてなってたまるか!」


頭を押さえていたオウドが腕を振り払い叫び、迫真の表情で再度睨んでくる

…オウドの言っている言葉の意味が分からない、他の何かになる?一体何のことだ?

オウドが苦しみだしたのは俺を視た直後だ、俺とてレプリカの全てを把握しているわけではない、俺と会うことで、オウドの中で何かがあったのかも知れない…あぁ、まだまだ俺の知らないことが世界には溢れている、さぁオウド、もっと俺に教えてくれ…俺の好奇心を満たしてくれ…!






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


建物の中に入ると、スヌゥと男が一人いた

スヌゥが男を庇うように身を乗り出したせいで一瞬しか見られなかったが、あれは…

スヌゥに退くように言うと、そいつはスヌゥを退かせ、自ら前に出てきた

やはり、こいつはオリジナルだ、俺の中の何かが、そう確信させる

こいつに一言言ってやるのだ、俺は俺のために生きると、俺の存在意義は、俺自身が決めるのだと

…だが

オリジナルを見た瞬間、俺の中にあったオリジナルに対する憤りの感情が急激に薄らいでいくのを感じた

これは、この感覚は、協会に会った会長の肖像画を見た時と同じ…いや、あの時よりも強い…

貴方は、俺の…俺は貴方のために――

自分でも、何を言っているのかよくわからない、ただこの方に尽くせと、何かが俺に語りかけてくる

この声に従わなければならない、そんな気がする。そして、この声に身を任せてしまえば、とても楽になれる気がした。でも同時に、俺が俺でなくなってしまうような気もした

俺はどうすべきなのだろうか、いや、何故どうすべきかなどと迷っているのか、この声に従う以外に選択肢などないというのに――

俺の中の何かが消え入りそうになった瞬間、頭に強烈な衝撃が走った

一体何が起こったのか…衝撃を感じた右側頭部に意識を向けると、どうやら無意識の内に自分で自分の頭を殴ったようだ

だが、強い衝撃は感じこそすれ、相変わらず痛みは感じない

ふと、さっきまであった声がしなくなっていることに気が付いた

俺はさっき、何を考えていた…?オリジナルのために尽くさなければならない?ふざけるな!冗談じゃない、こんな、洗脳紛いのことをされてたまるか!


「ぐっ…はぁ、はぁ…俺は、俺だ!他の何かになんてなってたまるか!」


オリジナルが嬉々とした表情でこちらを見つめてくる

俺は、お前なんかの物になってたまるか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ