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今日という日を、生涯決して忘れることは無いだろう

あの後、こっちには戦う気なんて無いのに訳の分からない勘違いで襲ってくる化け物から必死に逃げ続けた

反撃しようなんて考えは一切無かった、間違いなく過去最高の逃げ足だっただろう、言ってて悲しくなってくるが、もはやプライドなんてものは粉々に砕け散っているので構わなかった

一切合切逃げに徹したからか、何とか生き残ることが出来た、逃げ続け、やがて化け物が諦めてくれたのか、それともこっちに攻撃する意思がないことが通じたのか、それまで続いていた猛攻が止み、化け物は捨て台詞を吐き、奴を追いかけていった

…今度こそ、真の安息が訪れた

勝負には負けたが、試合には勝った、つまり…これはもう勝利したと言っていいのではないだろうか

…疲れと極度の緊張状態のためか、何だかとんちんかんな事を言っているような気がするが、そんなことは些細な問題だ、とにかく嵐は過ぎ去ったのだ

やっと終わった、解放されたと思った瞬間、一気に気が緩む、流石に体力も気力も尽き果て、その場で横になり、微睡みの中、妙な清々しさを感じながら意識を手放し泥のように眠った






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


オウドを追いかけ走りながらさっきまでの自分の行動を振り返る

一向に攻撃してこず逃げに徹し、オウドが逃げ切るまでのあからさまな時間稼ぎをする地帝狼を追い掛け回す自分…

くそっ冷静に考えれば、別に地帝狼の相手をする必要なんてなかったのだ

立ち塞がる地帝狼を無視し、さっさとオウドを追いかければよかったのだ、しかし自分は、そうしなかった

…嫉妬、していたのかもしれない、地帝狼に庇われているオウドに。自分には、あそこまで必死に庇ってくれる存在はいるだろうか…別に、そんな誰かが欲しいと思ったわけでも、思っていたわけでもなかった、それでも何だか、自分のために必死になってくれる存在がいるというのが、羨ましいような気がした

あいつは、オウドはまだ目覚めたばかりのはずなのに、もうそんな存在がいる、そもそも地帝狼は誰かに靡くような種族じゃないはずだ、それを、あいつは…

思わず拳を握りこんでいた、自分でも、可笑しいと思う

だってこれは、生まれたばかりの赤ん坊に嫉妬しているようなものだ、そんなことは、何だかとても惨めで、ひどく哀れで――

…だいぶ、ネガティブな思考に陥っていた

やはりオウドのことになると、冷静でいられないようだ、あいつに会うまでは、先に造られた(うまれた)自分の方が優れている、何も知らないあいつなんて取るに足らない存在だと、興味も湧かず気にも留めなかった


「それにしてもオウドの奴、何処へ逃げたのか…地帝狼の相手をしていたせいで完全に見失った、いや、落ち着け…あいつと俺は同じ存在なんだ、俺なら何処へ逃げるかを考えれば、自ずと見つかるはずだ」


オウドを見失ってしまった以上、ただ闇雲に探しても見付けられないだろうと思い、一度立ち止まり少し考えてみる

考えながら、未だ右腕に連結されている銃との接続を解除する

銃から外された管は手首の内部に見える機械の骨組みの中へと収納されていき、剥がされていた皮膚は、あたかも開いている蓋を閉めるかのように戻された

そんな動作を、さも当たり前のように行いながら独りごちる


「いや、そもそもあいつは、誰に俺の存在を聞いたのか…一度何処かの都市へ行っているのか?いや、それは無いか、都市の名前を知らないあいつに転送装置は使えない、となると誰かがこの終末の森へ来て、そいつに聞いたということになるか…?そうなると、そいつから何処かの都市の名前を聞いている可能性もあるか…くそっ各都市を虱潰しに探していくしかないか、それだと時間が掛かりすぎるな…なら、その前にオウドの記憶の上書きに失敗したことを報告に行くのが先か…」


スヌゥはとりあえずオウドを探すのは止め、一度オリジナルであるルフィニの元へ報告に戻るべく、転送装置に向かって走り出した


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「はぁ、はぁ、スヌゥは、来ていないな…間に、合ったか…」


オウドはスヌゥから何とか逃げ切り、転送装置の場所まで来ていた

追い付かれてしまうかも知れないと思っていたが、結局追い付かれることなく到着出来た


「走る速さはこちらの方が上なのだろうか…いや、スヌゥは同スペックだと言っていたな、それは違うか」


流石に今回は、転送装置からあの建物の場所までの道を覚えながら進んでいたため、迷うことなく戻ってくることが出来た

オウドは今にも後ろからスヌゥに追い付かれるかもしれないという焦りもあり、慌てながら転送装置のボタンを押し、起動させる


オハヨウゴザイマス

コチラハ終末の森入口デス

ドチラニ転送ゴ希望デスカ


「バルフレアまで転送してくれ」


了解シマシタ

現在検索中デス


何とか間に合ったと思い、オウドは一息ついた

左腕を失ってしまったが、生きているだけで、自分が自分でいられるだけマシだと思った


(…それにしても検索にやけに時間が掛かっているな…イエロが操作した時はこんなに時間が掛からなかったのに)


――協会で発行されるギルドカードを読み込ませるとスムーズに話すんだよ、何故かな――


イエロがそんなことを言っていたのを思い出す

恐らく処理能力全体が向上するのだろう、急かしても結果は変わらないが、早くしろと言いたくなる


検索終了シマシタ

都市バルフレアニ転送を開始イタシマス


検索が終わり転送準備が完了し、足元に幾何学模様が浮かび上がる

模様が一瞬輝き、オウドはバルフレアへと転送されていった

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