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「俺たちはなオウド、ある目的のために造られた。俺たちのオリジナルにあたるルフィニという元人間(・・・)の細胞を元に造られたレプリカだ」


「レプ、リカ…俺は…ある目的、とは…?」


虚ろな目をしたオウドが弱弱しく訪ねてくる


「オリジナルの好奇心を満たすためだ、そのためだけに俺たちは造られ存在している。最初から全ての事情を知っている俺と、何も知らないお前は一体どんな行動をするのか、というな」


スヌゥはオウドを見ながら思う

自分がレプリカであることが相当堪えたのか、すっかり意気消沈している

これならわざわざ撃つ必要も無さそうだ

だが、オウドが何故これほどまでにショックを受けているのかが理解出来ない

自分は生まれた(つくられた)瞬間から、自分の全てはオリジナルのためにあるのだという考えが頭の中にあった

だが俺がこうしてオリジナルのために行動しているのは、オリジナルにそう言われたわけでも強制されているわけでもない、他でもない、俺自身の意思だ、この意思だけは、俺のものだ、それが、俺の誇りだった

だがオウドは違うようだ、自分がレプリカであるという事実が受け入れられていないように見受けられる

同じレプリカでも、俺とオウドではこうも考え方が違うものなのか

オウドに近づき腕を掴む、抵抗する様子が無い、こちらに引っ張る、やはり抵抗しない、そのままカプセルまで引っ張っていきオウドをカプセル内に放り込む、オウドの顔からはすっかり生気が無くなっている

カプセルの蓋を閉め、学習装置の電源を入れようと手を伸ばし――


「オオオオォォァァアアアッ!!」


オウドが突然奇声を発し、カプセルの蓋を蹴破った


「!?」


「アアアアァァァァッッ!」


跳ね起きたオウドに顔をおもいっきり殴り飛ばされ、壁に叩きつけられた


「がっ…ぐ、くそっ」


完全に油断していた、一体急にどうしたというのだ、ついさっきまですっかり意気消沈していたというのに…

俺が殴り飛ばされた隙にオウドは扉へ向かって一目散に走りだしていた


「くっ逃がすか!」


右手に持った、自身の腕と連結させたままの銃の引き金を引く、完全に破壊しては不味いと思い急所を外して撃ったのが不味かった、オウドの左腕を消し飛ばしたが、それでもオウドはまったく走る速さを緩めずに走り去っていく


「待てっ!」


壁にあいてしまった穴やオウドが壊した扉の修理はとりあえず後回しにし、すぐさまオウドを追いかけるべく建物内を後にした






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「俺は、俺たちは人間じゃない、造られた存在だ」


確かにそう聞こえた

訊き間違いであってほしかった

だがそんな気持ちとは裏腹に、頭の中ではそれが本当であると半ば確信していた

眠気を感じない、眠れない、腹が空かない体――自分が人間ではないのだと思い当たる節がいくつもあった

にわかには信じられないが、恐らくスヌゥは本当のことを言っているのだろう

目的…スヌゥに、俺たちが造られた目的を訊いてみる

さっきから頭の中でけたたましく鳴っている警鐘が、さらに大きくなった気がした


返ってきた答えは想像を遥かに超えたものだった

そんな…そんなことのために俺は造られたのか、そんなことのために…

怒りよりも落胆の方が強かった

自分の存在意義は、生まれた意味は、そんなくだらない理由なのかと

あぁ…このままいっそ、何も知らなかった頃に戻ってしまった方が、と、そんなふうに思ってしまう

すっかり茫然自失している俺にスヌゥが近づいてくる、腕を掴まれた、腕を引っ張られる、そのまま放り投げられるようにカプセルに入れられる

あぁ、もう、どうにでもなれと、生きることを、抵抗することを諦めた

もういいじゃないか      死にたくない!     

今更足掻いて何になる    死にたくないっ!

諦めた方が楽だ        死んでたまるか!

矛盾した考えが頭の中をぐるぐると駆け回る

俺は、どうしたら…その時ふと、カプセルのガラス越しに、装置を起動しようとしているスヌゥの姿が見えた

その瞬間、足がカプセルの蓋を蹴り飛ばしていた

次の瞬間、スヌゥのことを殴り飛ばしていた

ふと気が付くと、自分の足は扉に向かって一直線に駆け出していた


どうやら俺は、受け入れがたい現実を突きつけられても尚、生きていたいようだ

例え生まれた意味がそんなくだらない理由だったとしても、思い通りになんてなってたまるか!俺は、俺のために生きる!他の誰でもない、俺のために!!

自分が生きていたいのだと実感したその時、スヌゥの声が後ろから聞こえてくる、さっきは不意打ちだったから上手く当たったが、恐らく次は無い、絶対に捕まるわけにはいかない

より一層走る足に力を込めたその時、左腕の感覚がおかしいことに気が付いた

左腕に視線を移すと、肘のやや上あたりから先が無くなっていた

先端が黒く炭化していることから察するに、後ろからスヌゥに撃たれたのだろう、だが不思議と痛みは感じなかった、今はとにかく、走る速度を緩めてはいけない

後ろを振り返ることなく、ただひたすらに走り続けた






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


もう、今日起きたことは悪い夢だったと思うことにしよう

こうして現実逃避でもしなければ、精神がどうにかなってしまいそうだった

現実逃避は立派な自己防衛方法だと自分に言い聞かせ、誰にするでもなく言い訳をし、自分を納得させる

ここはもう自分の縄張りなので、周りを気にすることなく地帝狼は適当な木に体を預けて体を休めていた

ようやく気が休まると思い、一眠りしようかと思った矢先、見知った気配が、二度と会いたくなかった気配が急速にこちらに近づいてきていた

せっかく休めると思っていた地帝狼は冗談じゃないと思い、どうかこのままここを立ち去ってくれますようにと、茂みに身を隠し祈っていた

しかし、気配が近づいてくるにつれ、その姿がいやでも視界に入ってくる

ついさっき別れたばかりだが、先程とは様子が明らかに違う

まず左腕が無くなっている、それに何か必死な表情をしている、まるで、何かから逃げているような…

出来ればもうこんな化け物とは関わり合いになりたくないと思っていたが、これは好機だ、あの化け物が何故左腕が無くなっているのかは分からないが、とにかく奴は手負いだ、今ならやれる、やるなら今しかない!傷が付いている左腕ならば、この牙も突き刺せるはずだ!

そう思い、一直線に走ってくる奴の前に躍り出て傷ついた左腕に渾身の一撃をくらわせるべく、飛び上がり牙を突き立てる――しかし渾身の一撃はあっさりと弾かれた

逆に噛み付いたこっちが痛い位だ、肝心の奴はこちらを一瞥することなく、まるで噛み付かれたことなんて無かったとでもいうように走り去っていった

…やはり、あれと関わるのはもう止そう、あれがこのまま走っていけば、縄張りからも、この森からも出ていくことになる、それでいいじゃないか、あれは、そう、自然災害のようなものだと思えばいいのだ、どうしようもないのだ


「こいつは…地帝狼か、オウドめ、いつの間に手懐けやがったんだ、だがこんな程度では足止めにもならんぞ」


またも現実逃避をして途方に暮れていると、後ろから声が掛けられた

奴の気配ばかり意識していたからか、まったく気が付かなかった

今の自分は体調が良くないから、殺さずに見逃してやろうと思い後ろを振り返ると、奴に似た男がこちらを見ていた、何だ、こいつ…男と目が会った瞬間、自分の死がやけに鮮明に想起された

慌てて自分の体を見ると、どこにも傷は無かった、今のは、幻覚か…この男も奴同様、化け物だ、恐らくこの男が、奴に傷を負わせたのだろう、となると、この男は奴以上の化け物ということに…


「主人を庇って仁王立ちとは健気だな…ほら、かかってこい犬っころ」


何やら挑発されている

おかしい、何だこの状況は

つまり…この男からしたら、自分は奴を追わせないように庇っているように見えているということか…

いやそれはおかしい、最悪の形で勘違いされてしまった、こんな化け物と戦う気なんてこっちにはさらさら無い、早々に退散するべき――


「どうした、こないならこっちから行くぞ!」


えっちょっ

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