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辺りを一通り調べて解ったことが1つある

否、正確には何も解らなかった、ということが解った


周囲に置いてある機械は触っても何をしても動かないし、それ程広くないこの部屋には、訳の解らない機械類と、自分が入っていたものを含め、カプセルが3つあるという以外、何も無かった


男はこれ以上ここにいても進展は無いと考え、外へ出て人が居たらその人に此処が何処なのかなどを聞いてみようと考えた


いざ外へ出ようと扉に手をかけると、扉は歪んでしまっているのか押しても引いても開かなかった

若干の苛立ちを覚えたため蹴飛ばしてみると扉はへし折れ前方に吹き飛んでいった


「…え」


男は急いでその場から立ち去った


「外は森になっているのか、しかしまさか扉があんなに脆いとは思わなかったな」


(壊してしまったがまぁ大丈夫だろう、誰に見られたわけでもないのだ、気にする必要は無いだろう)


辺りは鬱蒼と生い茂る森のようだ

木々のざわめきや生き物の気配がする

視線を下に向けると葉が薄紫色で特徴的な形をした植物が目に留まった


「これはマジックポーションの材料になる薬草だ…こういう知識は覚えているんだな。しかし…」


男は周囲を見回しつぶやく


「こんな森の中に人はいるんだろうか…」


ふと視線を感じ横に視線をやると、頭に角の生えた兎の様な物体が此方を伺っている

近づこうとすると兎は一目散に逃げ出した、臆病な生物の様だ


「今の生物は知らないな」


暫く当てもなくふらふらと歩いていると、今度は犬がいた

全体は藍色の毛並みで、胴体の部分に白い体毛が幾何学的なラインに生えているのが特徴的な可愛らしい犬だ

この犬も初めて見る生き物のようだ

犬は此方をジッと見つめている

男は顔を綻ばせ近付くと


「…」


犬はあっという間に逃げ出してしまった


「俺は動物に好かれない体質なのか…」


少し悲しくなったが直ぐにまぁいいかと、あまり深く考えないことにした






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


終末の森と呼ばれる森がある

大陸の最端に位置する、強力な魔物が跋扈する危険な森である

その森の主、地帝狼はその日産まれて初めて恐怖を覚えた

今まで、自分は最強の存在だと信じて疑わなかった

しなやかな足は誰よりも速く

鋭い爪は容易く他者を引き裂き

強靭な顎と牙は、何物をも噛み砕いた

この世界において、自身は頂点だった


そう、あれを見るまでは


初めに違和感を覚えたのはつい先ほどのことだ

自分よりも強者の存在を感じたのだ

地帝狼はそんな筈はない、気のせいだとも思ったが、何故か言いようの無い不安を感じ、自身の勘を信じて様子を見に行って見ることにした


強者の気配はあそこから感じる

人間が大昔作ったのであろう人工物

地帝狼はもう長い年月を生きているが、あの人工物は自分が生まれる前から変わらずあそこに建っていたらしい

自身のテリトリーに人間が作った物があるのが気に食わず破壊を試みたことがあるが、多少歪む程度で、何度やっても壊せなかった

自らの爪や牙で壊れないことが癪だったが、やがて労力に見合わないと放置していたのだ


その、何度も壊そうとしたが壊れなかったそれが急に壊れ吹き飛び、中から人間の男が走ってきた

男は辺りをキョロキョロと見回し、一匹の角兎(ホーンラビット)を見つけたようだ

こんな危険地帯にも生息している位、角兎はどこにでも生息している。繁殖力が凄まじく雑食なため、いくら狩られようと絶滅しないのだ

そんな角兎は男と目が合うとまさしく脱兎の如く逃げ出した

ふとその男と目が合う


瞬間地帝狼は死を覚悟した

目が合ったそれだけで、自身との力量が圧倒的に離れていることを理解した

その人間は笑っていた

笑ながらこちらへ向かってくるではないか

死――そう思い気が遠くなりそうになるが何とか踏み止まり、力を振り絞って恥も外聞もかなぐり捨て、一目散に逃げ出した


後に地帝狼は考える

あれは本当に人間だったのだろうかと――

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