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死ね

何なんだこれは、これは現実か

何てざまだ、もういい、もうやめだ、勝てるわけがない、いくら噛み付こうとも眼前のこいつは終始笑顔を浮かべている、一体何の冗談だ

所詮己も井の中の蛙だったということだ、上には上がいる、つまりはそういうことだ

こちらはこれだけ敵意むき出しで攻撃しているのに、この変人に敵意がないことが唯一の救いか、一体何が目的なんだこいつは…ッ!?急に体を締め上げてきた、ま、まずい、抜け出さなくては――

そう思い体に力を入れるがまったく抜け出せる余地が無い、こいつ一体どれほどの力で…敵意がないなどと、まったくそんなことはなかった、殺され――いや、もはや逃げられない、攻撃も効かないこんな相手にこれ以上どうしろというのだ

もう諦めた、もはやプライドはズタズタだ…煮るなり焼くなり好きにするがいい

渇いた笑い声が口から出てくる、脱力しこいつの体へと倒れこむ、しかし一向に殺しに来ない、一体何故…じわじわと恐怖を与え嬲り殺しにするつもりなのか

そんな最悪の展開を予想していると、ふっと締め上げていた手が緩み、拘束が解かれた

…なるほど、理由は不明だがどうやらこいつは森の最奥にある建物に行きたいようだ、その道案内をさせたいらしい。…自分でそこから出てきたくせに道を覚えていないのか

まぁそんなことはどうでもいい、さっさとその建物で用を済ませてもらい、とっととこの森から出て行ってもらおう、それにしても、いつの間にかさっきまで追いかけまわしていた雑魚2人はどこかへ逃げたようだ、まぁあんな奴ら何て今更どうでもいい、今はこいつだ


しばらく建物に向かい森を歩いていく、きちんと付いてきているか確認するために何度か振り返る、そのたびにこいつはこっちを見て笑みを浮かべる

正直こんな化け物に背中を向けているのは生きた心地がしないが、今のところ奴に敵意は無いから大丈夫だと自分に言い聞かせ歩いていく

ある程度進み、もう一度振り返ってみると、何やら木に生っている実をもいでいる…腹でも減っていたのだろうか、だがあれは殻がとても硬く、とてもじゃないが素手で割れるものでは――

割れた、もう何なんだこいつは、非常識すぎるだろう、と思っていると何やら手招きしている、何だ、何だよ、行けばいいんだろ行けば

まったくもって近寄りたくなかったが、しかたなくそばに行くと割った実を差し出してきた

…こいつ、まさか自分が食べるためではなく――

別に、この程度でこいつの評価を改めるつもりはまったくないが、せっかくだからありがたくいただいておこう

実を食べているとこいつも新しい実を割って食べだした、結局自分も食べるのか…まぁいいけど

食べ終わると、何個か実をもぎ始めた、気に入ったのだろうか、取り終わったのを確認すると歩くのを再開する

またしばらく歩いていると、後ろから声が掛かる、どうやら今日はここまでにして夜を明かそうということらしい、なんともまぁ、この森で丸腰で野宿をしようだなどと、普通ならば到底考えられないがこの化け物ならば何処でだろうと快適に過ごせることだろう

こいつがこれ以上進む気が無い以上、ここで休まざるを得ない

こいつが朝起きた時に自分が傍に居ないと一人でふらふらと歩いて行ってしまうかも知れない、そうして迷いでもされたらたまったものではない、こいつにはとっとと用を済ませて森から出て行ってほしいのだ

適当に木の幹に体を預け眠る振りをする

こいつの目の前で、こいつが眠る前に自分が眠るなどと、そんな事はとてもじゃないが恐ろしくて出来ない、こいつが寝付いたのを確認してからではないと――おいふざけるなよ近いんだよ何でこんなに近くで横になるんだよ、もっと離れろ生きた心地がしないんだよ

…今から起き上がって離れるのは不自然だ、ここは我慢して、寝付いたのを確認した後に離れよう…

そう考えこいつが寝静まるまで耐えていたのに――

おいふざけるなよもう夜が明けそうなんだが何だこいつ寝ないじゃないか横になっているだけでまったく眠っていないぞ、おかげでこっちも一睡も出来ていないんだが

…そうこうしている間についに夜が明けた、隣でこいつは起き上がり伸びをしている、本当に眠らなかったな、にも拘らず顔には疲れの色がまったく見えない

流石化け物だ、もはやわけがわからない、何なんだこいつは

考えても答えは出ないので自分も起き上がる

ここからならもう、然程掛からずに目的地に着ける距離だ、もう少しだと自分に言い聞かせ歩き始める

後ろでは昨日取ってきた果実を頬張りながら歩いている、暢気なものだ

それから少し歩くと、漸く建物に到着した、漸くだ…

肉体的な疲れよりも精神的な疲れが強い、後ろを振り向き、顔を窺う

連れてきてやったぞ、これで良かったんだろうと考えていると、どうやらここまでで大丈夫らしい

やっと解放される…長かった、さっさとこいつの元から離れようと足早に立ち去る、出来ればもう関わり合いになりたくないものだ、もうこんなことは沢山だ

立ち去る途中、何故か背筋が寒くなったが気のせいだと自分に言い聞かせる

あぁ、とにかく休みたい、十分な休息が必要だ…

地帝狼はどこかくたびれた印象をを与える雰囲気を醸し出しながら、森の中へと歩いて行った

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