表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/30

13

「なぁ、あいつの言ってたこと本当だと思うかアレク、クレア」


「言ってたこと?」


「ほら、終末の森にある建物で目を覚ましたってやつさ、で、適当に歩いてきたから建物の場所はよくわからないときたもんだ」


「いやぁどう考えたって怪しいだろ、絶対何か隠してるって」


終末の森の比較的浅い場所で、3人は会話しながら、しかし周囲の警戒は怠らずに、狩る獲物を探していた


「ねぇイエロ、終末の森ってあんまりモンスターがいないの?さっきから全然見つからないよ?」


「いや、俺が前に来たときは沢山いた、それこそこうして探し回る必要が無い位にな。血の匂いは微かにするんだが…中々見つからないな、何かあったのかも知れん、周囲にしっかり気を配っておけよ2人とも」


「…と、ようやくか、狂性大鬼(ベルセルクオーガ)だ…まだこっちには気付いていないようだな」


木々の隙間から、狂性大鬼の姿が窺える

狂性大鬼はこちらに背を向けて下を向いており、まだこちらには気付いていないようである


狂性大鬼

大鬼(オーガ)よりもさらに凶暴性の強い終末の森固有のモンスターの1種である

群れることはせず、基本的に1匹で居ることが多い

凶暴であまり知能は高くなく、近づく生物を手当たり次第に攻撃する

ただ、自分よりも実力が上の相手には自分から攻撃することはない

魔法は使えず、肉弾戦のみで戦う

その膂力は凄まじく、生半可な防具では簡単に拉げてしまう


「…丁度良い、お前ら2人だけで相手してみろ、大丈夫だ、お前らならやれるさ」


そう言いイエロは近くにあった岩の上に腰かけた


「上等じゃねぇか、やってやるぜ!つーか俺1人でも余裕だっつーのったく」


「まったく…アレク、無茶はしないでよね?」


アレクとクレアの2人は気配を殺しながら、狂性大鬼に近づいていく

ふと、狂性大鬼の頭がピクリと動き、こちらを振り返った

口元には血が滴っており、右手には腸が引き摺り出され、頭の潰されたモンスターが握られている

狂性大鬼と目が合った

瞬間

頭の中で警鐘が鳴り響いた

体が硬直し、汗が噴き出す

狂性大鬼が咆哮を上げこっちに向かってくる、それがやけにゆっくりに感じられる

少しでも動いたら殺される

脳裏に自分が捻り潰される映像が鮮明に過ぎる

―俺たちなら悪魔の樹(イビルトレント)憤怒の猿(ラースエイプ)程度楽勝だって―

ついさっきまで、自分はこんなことを言っていた、実際に遭遇したことは無かったが、楽に勝てると信じて疑わなかった

クレアと共に、最年少でS級探索者になった

S級の通過儀礼なんて、所詮容易く突破できると――そう思っていた

思い上がりだったのだろうか、自分はこんなところで死ぬのだろうか、そんな馬鹿な

クレア、クレアは大丈夫だろうか、震える体を何とか動かし、横を見る

固まっていた、瞳孔が開き、畏怖の表情を浮かべている

まずい…どうにかしないと、動いた瞬間、狂性大鬼に殺される想像しか出来ないけど、それでも、クレアをこのままにしてはおけない

こんどは俺が助ける番だ、こんなところで死んでたまるか

震える体に鞭を打ち、頭の中で鳴り響いている警鐘を無視してクレアの元へ走り寄った



狂性大鬼と目が合った瞬間、体が動かなくなってしまった

食事を邪魔された怒りからか、激怒の表情を浮かべている狂性大鬼

ゆっくりとこっちに向かってくるそれは、まるで死神そのものに見えた

これが、S級危険区域に住むモンスターなのか

湧いてくるのは、ただただ恐怖しかない

イエロは、アレクと2人ならやれると言った、実際、私もやれると思っていた、これまでの、S級に上がるまでに受けてきたクエスト同様、簡単に勝てると思っていた

自惚れだったのだろうか、私はここで死ぬのだろうか


「――ア、―レア!」


私の名前を呼ぶ声が聞こえる気がする、誰だろう、でも、何も考えられない

今は、ただただ恐怖に支配されている


「―レア!クレア!!しっかりしろ!」


ハッと我に返った

横を見ると、アレクが泣きそうな顔で私の名前を叫んでいる


「クレア!しっかりしろ、大丈夫か」


アレクがしきりに訊いてくる

大丈夫と言おうとして、上手く口が回らないことに気が付いた、足が震えていることに気が付いた

そんな私の状態を悟ったのか、アレクは今度は俺が守る番だと言い、私に背を向けた

アレクもよく見れば体が震えている、にも拘らず、私を守るため、迫りくる狂性大鬼の方へと走って行った



「かなり危うかったが…何とか及第点ってところか」


岩の上に腰かけながら2人を見ていたイエロはそうこぼした

本来、アレクとクレアの2人なら、実力的には狂性大鬼と戦っても、勝てるはずなのだ

だが、2人はその若さゆえ、経験が圧倒的に足りていない

まして、S級危険区域のモンスターとまともに対峙した事はまだ無い

本来の実力を発揮できればまだしも、相手に怯え竦んでいては勝てるものも勝てない

アレクは何とか恐怖を塗りつぶすことが出来たようだが、クレアはまだ少しかかりそうだ

本当に不味い状況になったら割って入るが、それまではあくまで静観を貫こうと考えていた、でなければ、2人が真に成長出来ないからだ


「さて…ま、これも良い経験になるだろ、頑張れよ、2人とも」


イエロは2人の背中を、自分の子供を見守るような眼差しで見つめながらそう呟いた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ