私小説 フェミニズムの力の届かないこの世界で
僕は自分のことを僕って言いたかった。俺、とも言いたかった。なんでかって、別に私は女だけど、だって、僕とか俺っていう男の人ってえっちじゃないでしょ。だから今から私は僕って言うんだ。性別から抜け出して、ただあるがままで僕だ。
「ボクっ娘かわいいw」
僕は、いや、私は結局客体だった。主体性を持って何かを成すことなんてできっこないのに何を勘違いしていたんだろう。
牙を折られた僕は死に、整えられた私が生まれた。
私は顔にピアスを開けた。顔にピアス開けた女って怖がられたり嫌われたりする。同類だけが集まる。私はそう信じた。
「そういう系ね俺好きだよw」
私が怖い?ただ顔に金属があるだけで?何を馬鹿なことを考えちゃったんだ。何したって私は庇護の対象で、怖くなんてなれない。だってこの細い腕じゃ、何も殴れない。
私は筋トレをした。腕はそこそこ太くなった。立派な脚に盛り上がった肩。嬉しいな。これで強くなれるかな。
「俺ケツフェチだからw」
そんなことを言うひょろい男に腕相撲で負けた。
私は諦めることを知らない、知らない、はずだった。
いつからか、そう確か第二次性徴を終えて、目の前にいても画面の中に囚えられた私は、ただ憂鬱に綺麗に笑っていた。
斜め前に私の人がいる。太い腕にピアス、男らしく厳ついひと。私は1歩後ろを歩いた。それが正しいんだって、学んだから。




