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Dragons Cry, Destined to Fly ー竜哭の彼方ー  作者: Watt A. Lee
第四十七章

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第四十七章

「……すご……」

 ぽつりと漏れたのは、勇輝子の声だった。怒りも悲しみも、ただ純粋な強さに対する驚嘆に、上書きされてしまった。

 その横に、アントニウスが歩み出て静かに言った。

「あれは――ドレイク殿が考案してくださった対暴虐竜戦の戦術です」

 テオドロスが続ける。

「それを実戦に落とし込んだのが、チェイレイ団長です」

 わずかに微笑む。

「本当に……あの方には、驚かされてばかりです」

 兵たちに囲まれ歓声に包まれ称賛を受け止めるアンドロニコスは、一人一人に応え、笑みを返す。

 一瞬だけ、その視線が夕空へ向く。巨体の影はすでにない。

 それでも、確かにそこに在った彼を見送る。

 それから、もうバルコニーを振り返っていた。アントニウスと、勇輝子が見守ってくれている。

 アンドロニコスは、姿勢を正し深く礼を取った。

 戦いの後始末を指示して室内に戻ってくると、勇輝子が衆目にも構わずに安道に飛びついた。

「ゆっ、勇輝子様!?」

 安道は狼狽するが、相変わらずの剛力は少しも緩まない。

「安道。ごめんね」

「え? どうなさったのですか?」

 勇輝子は身体を離すと、今度は額の角を安道の額へ触れさせた。

「安道が背負ってるものが何なのか、みんなが安道に何を願ってるのか……ちゃんと最初から話してあげるべきだった」

 金の瞳が、わずかに伏せられる。

「これ以上辛い目に合わせたくなくて変に気を回しちゃった。まだ小さいからって、守ることばっか考えてた。でも、それじゃ駄目だったんだよね」

 この子はこんなにも強かった。どんな真実も、きっと受け止めることができていたはずだ。

 幼い子供だと、真綿に包んでしまうべきではなかった。どんな冷気にも当てられないようにと守ってやったつもりだったが、それでは中から何も見えなくなってしまう。息を継げなくなって当然だ。

 勇輝子らからすれば、無慈悲な真実がこの幼い仔竜に与える衝撃に配慮したつもりだったが、例えそれがどれほど酷な内容でも、安道は知る権利を持つ当事者なのだ。それなのに、自分達が事情を伏せたせいで歯車が狂ったのだと、勇輝子は歯噛みする。

 どれほど辛くとも、正しく事情を把握していればドレイクとの出会いも違うものになったのではないか。ドレイクは今度こそ、共に生きる道を選んでくれたのではないか。安道はこのように、せっかく出会うことのできた実の父を、見送らずに済んだのではないか。

 百年前も、自分たちの感情ばかりを押し付けて、ドレイクの抱える苦悩に寄り添ってやれなかった。気づけば今回も、自分たちは彼の仔に、同じ間違いを犯したのだ。

 安道は勇輝子をまっすぐに見つめると、その前に膝を折って右手を取る。美しい鱗板に覆われた手の甲に、そっと口づけた。

「勇輝子様。貴方がたが俺を見つけ出して、ここまで導いて下さったんです。どんなに感謝してもしきれません」

 幼いと思っていた体格の小さな竜が見せたその笑みは、一人前の男の顔をしていた。

「父さんも、同じ思いでいるはずです」

 勇輝子はその言葉を、涙すら感じながら聞いていた。もう一度、親愛の情を込めて角を額に触れさせるのだった。


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