パンドラという神
ー パンドラという神 ー
人類は彼女を、
「軍神」と呼ぶ者もいれば、
「怠惰な神」と呼ぶ者もいる。
若くして神となったパンドラ…
以前のようには多くは語らない。
姿を現すことも、ほとんどない。
それでも彼女は、確かにそこにいる。
かつて戦争で焼け落ち、地図から消えたヨーロッパの一角。
その更地に建てられた神殿
都市は後から生まれ、軍事施設がそれを囲み、
人々は神殿を中心に生活を始めた。
パンドラは統治しない。命令もしない。
ただ自由で開かれた銀河を…平和を祈る。
パンドラの考えに賛同した者達が神軍となり
銀河の為に戦う…
方舟ノアの乗組員達もその一部である。
ー ノア右舷側滑走路 ー
「キドウ統合司令!出発の準備が整いました。」
司令付護衛隊の軍曹が大きな声で報告する。
ヒメナは軽く頷き、キャデラックワンに乗り込む。
車内には外務司令オレサキ・レンヤ中将
戦争司令アーサー・マッカーサー少将の姿があった。
「久しぶり、元気してた?」
ヒメナは2人に話しかけた。
2人の司令は緊張した面持ちで軽く会釈を返した。
「ん?緊張してるの?」
ヒメナは2人に問う。
「当たり前じゃないですか…相手はパンドラ様、宇宙連合の象徴ですよ…」
とレンヤは言いアーサーは頷く。
「それでは出発致します。」
キャデラックワンは動き出し軍事専用橋をゆっくりと渡り始める。
ヒメナが車窓から海を眺めると遠くにノア型空母2番艦"グリフィン"3番艦"アルゴー"艦影確認した。
「グリフィンにアルゴー久しぶりや、勢揃いやな…」
ヒメナは小声で呟いた。
キャデラックワンは護衛車に先導されながら神殿に向かう…
「統合司令…到着致しました。」
運転手からの報告を受け司令達は小さく頷く。
長い階段を昇り司令達は神殿に足を踏み入れた。
ヒメナは空気が変わったのを感じた。
「静かやな…」
同行していた司令達が、小さく頷く。
神殿内には装飾がほとんどない。
黄金も、神像も、祈りの言葉すらない。
あるのは、天井まで伸びる白い柱と、
中心に据えられた“何もない空間”。
「久しぶりだね、ヒメちゃん」
声は、すぐ後ろからだった。
振り向く必要はなかった。
この神殿で、そんな呼び方をする存在は一人しかいない。
「お久しぶりです。パンドラ様…」
ヒメナは即答した。
「相変わらず疲れた顔をしてるねぇ。統合司令そんなに大変なのかい?」
「すごく大変です。特に地球に降りた後が…
反対派はうるさいし、味方は静かすぎます。」
パンドラはくすっと笑う。
神とは思えない、軽い笑い方だった。
「それが人の世界だよ。歓迎と反対が同時に来るのは、ちゃんとやってる証拠」
「慰めになっていません…」
「でしょ」
二人の間に、少し沈黙が落ちる。
神殿の空気は静かだが、重くはない。
アーサーとレンヤは神の存在感に呑まれその場を動く事もできない。
「これからも自由に動きなさい、その為にノアに自治権を与えたのです。」
ヒメナは少し考えてから、首を横に振った。
「それは…責任放棄ですか?」
「それは違うよ…ヒメちゃん…神の一言は人々の判断を鈍らせる…それは自由ではない…だから私は祈り続ける事しかできない…次私が戦場に出る、それはこの世界が壊れる寸前…
銀河の平和の為にノア、グリフィン、アルゴーがある、宇宙連合がある、神帝がいる…」
その言葉に、ヒメナは何も返せなかった…
パンドラはぽんとヒメナの肩に手を置く。
「これからもノアを頼んだよ…」
パンドラは小さく笑ってヒメナの前から姿を消した。
パンドラの存在感から解放されたアーサーとレンヤは
その場に倒れこみヒメナと神殿職員により外まで運び出されるのであった…
(続)
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公開情報
・オレサキ・レンヤ 23歳 男性 from地球
外務司令部 外務司令 ギフト"言語"
・アーサー・マッカーサー 25歳 男性 from地球
戦争司令部 戦争司令 ギフト"?"
(アーサー王の子孫・ダグラス・マッカーサーの孫)
・司令付護衛隊
各司令の護衛を専門とする部隊
・2番艦グリフィン
ノアの姉妹艦
・3番艦アルゴー
ノアの姉妹艦
今回はパンドラの話を書いて見ました。
次は神帝達や姉妹艦ついて書いてみようと思います。
次回もよろしくお願い致します。




