神格境界(しんかくきょうかい)③
ー 神格境界③ ー
海王星神域上空。
漆黒の宇宙を裂き、白銀の巨艦が姿を現す。
月で建造され、奪取されたノア型宇宙空母"ユニコーン"
その艦首に刻まれた紋章は、新たな名を掲げていた。
"神格再編機関"
甲板が開き、光の柱が立つ。
ルシファーに押され、膝をつきかけた神帝ダヴィンチは、その光に包まれ艦へと転移する。
「逃がすか!」
神帝達が動こうとした瞬間
「待て。」
低く、しかし絶対の声。
"パンドラ"が一歩前へ出る。
「今ではない…」
ユニコーンの主砲がわずかに光り、空間が歪む。
追撃すれば、海王星は一瞬にして戦場になる。
神々の集いは瓦解する。
その一瞬の判断で、タカヤ達は動きを止めた。
ルシファーは黒翼を収め、空を見上げる。
ユニコーンは静かにワープを開始。
空間が折り畳まれ、巨艦は光の裂け目へと消えた。
静寂。
残ったのは、神々の動揺だけ。
パンドラはゆっくりとルシファーを見る。
「……遅かったではないか。」
その声に、わずかな安堵が混じる。
"ルシファー"は肩をすくめる。
「久しいねパンドラ、私は面倒な会合には遅れる主義でね…」
だがその視線は鋭い。
「ずいぶんと厄介な芽を育てたものだ。」
パンドラは微笑む。
ルシファーは、彼女のお気に入り。
神に従わず、しかし神を理解している存在。
「芽ではない。」
パンドラは静かに告げる。
「嵐だ。」
こうして海王星・神々の集いは、事実上の閉幕を迎えた。
秩序の象徴であった円卓は、今や不安の象徴へと変わる。
閉幕後。
その場に居た神帝五柱が呼び止められる。
現れたのは三柱。
菅原道真
天照大御神
ポセイドン
重鎮たちの視線が刺さる。
天照が口を開く。
「賢い神帝達よ…深追いはするな。」
菅原道真が続ける。
「神格再編機関は、理論と狂気が両立しておる。」
ポセイドンは低く唸る。
「今の奴らは潮目を読んでいる。力も、勢いもある。こちらも準備が必要になる。気は抜くな、ダヴィンチの支持率は高かった…故に敵も多いかもしれん…」
天照の視線がタカヤを射抜く。
「無理をするな。」
「奴はもう人間ではない…神を相手にする戦いだ。焦れば呑まれるぞ。」
タカヤは拳を握る。
だが反論はしなかった。
今、はっきりしていることは一つ。
神格再編機関―
ダヴィンチは、確実に“神域”へ踏み込んだ。
そしてそれは、
神々の時代の終わりか、
あるいは再構築の始まりか。
宇宙は、再び動き出す。
(続)




