神々の集い②
ー 神々の集い② ー
海王星軌道上・神殿構造体
内部では三十柱の神々が円卓に着こうとしている。
だが本当の緊張は、外にあった。
外縁防衛ライン
巨大構造体の外周リング。
そこに立つのは――
神帝タカヤ。
神帝キング。
神帝モック。
ノアが静かに周回している。
キングが腕を組む。
「大袈裟すぎる気もするがな。神々三十柱だぞ?」
タカヤは海王星を見下ろす。
「だからだよ…」
「……来ると思うか?」
「さあね…」
短い返答。
その目はすでに戦場を見ている。
キングは苦笑する。
「相変わらずだな。」
神殿下層、エネルギー制御区画。
大神官ノノカ、センドウは宇宙を見ていた。
「警戒は万全…来るなら来い…」
「さすがノノカちゃん。完璧だな。」
ノノカは静かに微笑む。
「完璧は存在しませんよ、センドウ君」
ノア管制官が端末を確認する。
「未確認反応、外縁に微弱波形。」
センドウが武装を起動。
「来るか?」
ノノカの目が鋭くなる。
「まだ様子見でしょう。」
ノア地下ドック組
地下格納層。
整備班は最終チェックを続けている。
「万が一の退避経路は?」
「三本確保済み!」
「転移ゲート、起動まで15秒!」
ノアはただの運び屋ではない。
今日は“神の避難艦”だ。
再び外周。
タカヤの背後に光が揺れる。
キングが呟く。
「神々は中で政治。俺たちは外で泥臭い役目か。」
タカヤは振り返らない。
「誇りなよ。」
「何をだい?」
「護る側であることを。」
一瞬、沈黙。
「キング、そこ変わってもらえるか?タカヤと話したい事がある。」
ダヴィンチがそう言いながらこちらに向かって歩いてきた。
「いいよ、じゃーメイン達の方に加勢してくる。」
キングは怠そうに歩いて行く。
「お前は相変わらずだな。」
神帝ダヴィンチ。
白銀の装束に、無数の幾何学式が浮かんでいる。
「内部はどうだ。」
タカヤは問う。
「神々はいつも通りだよ。秩序、均衡、責任、未来 言葉だけは立派だ。」
ダヴィンチは海王星を見下ろす。
「だが現実は違う。人類圏は拡張を続け、神域との摩擦は増え、旧神は力を失い、新しい神は増殖している。」
タカヤは無言。
「今の宇宙は“過渡期”だ。創世でも終末でもない、中途半端な時代。」
ダヴィンチは横目で見る。
「だからこそ君のような存在が必要なんだ。」
「神々はなぜ介入を渋ると思う?」
唐突な問い。
タカヤは答える。
「地位を手放したくないからだろ?
私達の神達は支配を好まない良い神だね…」
「半分正解。」
ダヴィンチは微笑む。
「神は均衡を好む。劇的な変化は嫌う。自らの座が揺らぐからだ。」
ダヴィンチは一歩近づく。
「だが私達は違う。私達は“創られた神格”。
人の意志から生まれた新しい概念だ。」
空間に幾何学陣が広がる。
「私達神帝が覚醒すれば、既存神系は再編される。」
「タカヤ。」
声が静かになる。
「君はもう気づいているはずだ。自分が“神になれる”ことを。」
タカヤの瞳がわずかに揺れる。
「神格反応値は臨界域を越えている。あとは受け入れるだけだ。」
「受け入れたら?」
「私達は神帝ではなく“神”になる。
人類も神々も、その上に立つ存在へ。」
沈黙。
宇宙風が二人の間を抜ける。
「断る。」
即答。
ダヴィンチの眉がわずかに動く。
「理由は?」
「神の地位に興味はない…その様な力は要らないよ」
タカヤは初めて正面を見る。
「神は俯瞰する。俺は現場に立つ。」
静かな怒気が宿る。
「人が泣いている時、神は議論する。俺は手を伸ばす。」
ダヴィンチは目を細める。
「理想論だ。」
「そうかもしれない。」
タカヤは背を向ける。
「だが、俺は神になるつもりはない。」
ダヴィンチの背後に無数の演算式が展開する。
「残念だ。」
「期待していたか。」
「もちろん。君は“更新”の鍵だからね。」
一瞬、空気が冷える。
「だが意志は尊重しよう。」
ダヴィンチは踵を返す。
「ただし覚えておけ。神にならぬ選択はいずれ神と対峙する選択でもある。」
タカヤは答えない。
ただ、海王星の彼方を見つめる。
円卓では神々が秩序を語る。
外では、神にならぬと決めた男が宇宙を護る。
思想は、ここで分かれた。
(続)
次回より物語が動きます。
しかしどう動かそうか悩んでます!
次回もよろしくお願い致します!




