星域突破 ー惑星エリス防衛戦線ー
ー 星域突破 ー惑星エリス防衛戦線ー ー
太陽圏外縁宙域…
ノアは静かに航行していた。
灰色の装甲はかつてよりわずかに明るく、しかし威厳は失われていない。
冥王星での会談を終え、ノアはついに決断した。
太陽系を出る…
目指すは外縁準惑星…
反宙帝勢力の拠点、惑星エリス。
ー コロニー区画
艦内コロニーは今日も平和だった。
中央広場では
「バルサルナ様ー!」
「こっち来てー!」
小さな子供たちに囲まれるエルフの少女。
緑の長い髪を揺らしながら、バルサルナは少し困った顔で笑っていた。
「順番、順番です…!」
彼女は早くも人気者だった。
冥王星から住み込んで以来、コロニーの子供達は彼女に夢中だ。自然魔法で小さな氷の花を咲かせ、雪の精霊を呼び、即席の物語を語る。
その様子を少し離れた上部デッキからヒメナが見ている。
バルサルナはふと上を見上げ視線が合う。
一瞬だけ…
無言のやり取り。
「行くのですね?」
「ああ。」
言葉はない。
だが通じていた。
太陽圏境界線、航行士官の声が響く。
「まもなく太陽圏離脱。ヘリオポーズ到達」
巨大な推進光が背後に伸びる。
太陽が遠ざかる。
水星、金星、地球、火星、木星……
土星、天王星、海王星、冥王星。
全てが過去になる。
ノアの声が艦内に静かに流れる。
「本艦は星域突破を行う。目的地惑星エリス」
エンジン出力上昇。
空間が歪む。
光が伸びる。
そして――
太陽系は背後へ消えた。
ー 惑星エリス宙域
白く青い氷の巨星。
だが冥王星とは違う。
その周囲には多数の艦影。
宙帝紋章を焼き払った旗を掲げる艦隊。
反宙帝勢力の拠点。
通信が入る。
「こちらエリス防衛艦隊。識別コードを提示せよ」
ノアは沈黙。
圧倒的な存在感だけが宇宙に広がる。
艦隊司令が息を呑む。
「あれが…噂の宇宙空母か…?」
副司令シャルルは短く答える。
「敵ではない。」
その瞬間、
エリスの衛星軌道に展開していた宙帝偵察部隊が姿を現す。
数十隻。
小規模だが精鋭。
「宙帝艦隊確認!」
反宙帝艦隊がざわつく。
ノアは静かに前へ出る。
「下がれ」
その一言。
灰色の装甲が発光する。
次の瞬間。
―閃光。
宙帝艦隊は、
反撃の機会すらなく消滅した。
宇宙は再び静寂。
エリス艦隊は沈黙する。
あまりにも、圧倒的。
通信が入る。
「…歓迎する。ノア」
その声は若い女性。
エリス反宙帝代表である。
消滅した宙帝偵察艦隊の残骸が、静かに漂っていた。
外縁ワープゲート…空間が裂ける。
黒金の紋章、宙帝本隊、跳躍。
旗艦"アビス・レガリア"
全長二十キロ級。
そのブリッジ中央に立つのは――
宙帝直属帝神“氷葬のヴァルケイン”
「ついにここまで来たか…"方舟"」
冷たい目。
「外縁反乱勢力と接触。想定通りだ、我が艦隊がまとめて相手してやろう…」
艦隊は三百隻規模。
戦列艦、制圧母艦、空間阻害艦。
本気だった。
エリス防衛線、警報が鳴り響く。
「超大規模跳躍反応!」
「数……三百以上!」
エリス側は震える。
先ほどの小艦隊とは桁が違う。
反宙帝司令官の声が揺れる。
「……防衛線展開!」
だが恐怖は消えない。
そのとき。
静かに前へ出る灰色の巨艦……ノア。
「エリス艦隊は後退、氷衛星裏へ退避」
「な…しかし!我々の星は我々で守る!」
「そーか…」
ヒメナは一言返す。
ー 開戦
宙帝艦隊、主砲斉射。
宇宙が白く染まる。
ノアは動かない。
光が直撃――
だが。
灰色の装甲に走る薄青い紋様。
攻撃は霧散。
ヴァルケインが眉を動かす。
「やはり噂通だ…」
ノアのレーザー放射が爆発的に広がる。
次の瞬間。
距離ゼロ。
巨大な衝撃波。
宙帝前列戦艦群がまとめて吹き飛ぶ。
空間そのものを殴るような近接衝突戦。
ノアの側面砲列が展開。
無数の蒼い槍。
一斉掃射。
二十隻消滅。
三十隻沈黙。
宇宙が裂ける。
コロニー内部
衝撃が伝わる。
子供達が不安げに空を見上げる。
バルサルナは両手を握りしめる。
「ノアなら大丈夫だよ、そう信じている」
ー 宙帝旗艦
「前列、殲滅」
命令は短い。
主砲解放。
空間を削る重力圧縮砲。
エリス主力艦三隻、同時崩壊。
悲鳴も届かない。
「反宙帝ごときが、星を名乗るな」
彼にとってこれは戦ではない。粛清。
灰色の巨艦が前進する。
「方舟を沈めろ。」
主砲斉射。
命中。
だが沈まない。
「耐えるか。面白い…」
宇宙連合"神帝"が艦外へ出る。
タカヤとモック。
ヴァルケインは立ち上がる。
「奴らが神帝か…私が直接相手をしてやろう。」
彼は大きな矛を手に取り艦外に姿を現す。
彼は理解している。
自分は“帝神” 皇の直下。
戦場の理そのもの。
だが彼の情動は誰にも抑えられない。
その時…後方演算補助艦の数値が乱れる。
「……何?」
小型艦隊が突入している。
エリス艦隊。
特攻。
「愚か者ども」
迎撃指示、しかし突破…補助艦が爆散。
一瞬。
空間制御が乱れる。
ヴァルケインの眉が初めて動く。
「チッ、面白くない、この続きはまた今度としよう…」
ヴァルケインは直ぐに艦橋へと戻る。
「次などあってたまるか…」
タカヤのその言葉を皮切りにノア主砲、最大出力。
蒼い閃光が宙帝旗艦側面に直撃。
装甲が裂ける。
艦橋が揺れる。
宙帝副官が叫ぶ。
「損傷重大! 継戦可能ですが――」
ヴァルケインは手を上げる。
沈黙。
戦域を見渡す。
エリス艦隊は壊滅寸前。
「もーいい…」
彼は理解する、この戦は勝てる。しかし“消耗する”。
帝神が傷を負う意味は重い。
皇の前で無様は晒せない。
「全艦、離脱準備」
副官が驚く。
「しかし、勝機は――」
「ある。だが今ではない」
彼は静かに言う。
「次は完全殲滅だ」
通信回線を開く。
「今日は退く。だが次はない」
黒銀の艦隊が整然と後退。
戦場に静寂が戻る。
ヴァルケインは損傷箇所を見つめる。
「神帝…」
目を細める。
怒りではない。
興味。
「潰す価値がある」
玉座に深く座る。
「次は息の根を止める…」
帝神は退いた。
敗北ではない、それは選択。
「惑星"セドナ"に戻り体勢を整える。兵も休ませよ…」
(続)
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公開情報
・ヴァルケイン 31歳 男性
宙帝 帝神 ギフト"ロック"
・惑星エリス 太陽系外縁天体 反宙帝星
・惑星セドナ 太陽系外縁天体 宙帝支配星
巨大基地、都市有り
・エリス防衛艦隊 惑星エリスを防衛する独自の組織
・宙帝艦 旗艦"アビス・レガリア" 巨大艦
今回で2章は完となります。
次回から新たに3章頑張って書いていきたいと思いますので次回からもよろしくお願い致します。
良くも悪くも評価を頂けると頑張れますのでよろしくお願い致します!




