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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
2章 星域突破

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19/33

秘書官ウォンの休日


ー 秘書官ウォンの休日 ー


コロニー標準時 06:47…


秘書官ウォンは、目覚ましより少し早く目を覚ました。


任務はない。

報告書も、会議も、スケジュール管理もない。


今日は完全な休日。


黒のショートヘアを整え、

軍服ではなく、ダークグリーンの軽いジャケットを羽織る。


鏡の中の自分を見て、ふっと息を吐く。


「今日は、“秘書官”じゃない。」



午前 ― 丘の公園


コロニー中央区画の丘。


木製ベンチに腰掛け、

温かいドリンクを手に街を眺める。

挿絵(By みてみん)

眼下には川沿いの住宅街。

小さな商店。

図書館。

湖のほとりのカフェ。


中層ビル群の向こうをモノレールが静かに走る


規則正しいリズム。


ウォンはその軌道を目で追う。


ただの風景として。


「……綺麗。」


ドーム越しの空は青く、

人工太陽が柔らかい光を落としている。


「私がいなくて神帝様達は大丈夫でしょうか…」


ウォンは少し心配しているようだ…



昼 ― マーケットエリア


ウォンは丘を下り、

市場通りへ向かう。


ノアでは現金は使われない。


手首の認証デバイスを軽くかざすだけ。


《決済完了》


音も小さい。


新鮮な野菜、焼きたてのパン、

小さなスイーツを一つ。


「休日ですか?」


店員が微笑む。


「ええ。今日は完全にオフです。」


穏やかな声。


軍の冷静な秘書官とは少し違う。



午後 ― 図書館


図書館の大きな窓際。


ウォンは本を開く。


戦術書ではない。

歴史でもない。


植物の写真集。


コロニー内で育てられている花々の記録。


ページをめくる指先がゆっくりになる。


時間に追われない感覚。


それが新鮮だった。



夕方 ― 再び丘へ


人工太陽が橙色に変わる。


街の灯りがひとつずつ点き始める。


モノレールが光の線を描く。


湖には小さな帆船。


子どもたちの笑い声が遠くに聞こえる。


ウォンはベンチに座り、

静かに街を見渡す。


今日1日….

ただ生活が流れた。


「……いい街。」


小さく呟く。


秘書官としての誇りはある。

だが、それ以上に――


この“普通の1日”を守りたいと思う。


通信は鳴らない。


警報もない。


夜は穏やかに訪れる。


ウォンはゆっくり立ち上がり、

モノレール駅へ向かう。


ガラス越しに映る自分は、

少しだけ柔らかい顔をしていた。


コロニー標準時 19:32。


夜のモノレールが滑るように駅へ入る。


仕事のない一日を終えたウォンは、

静かな気持ちでホームに立っていた。


ジャケットのポケットに手を入れ、

光る街を眺める。


そのとき――


「ウォン?」


澄んだ声。


振り返ると、白と淡金を基調にした私服姿の女性が立っていた。


大神官ノノカ。


いつも見る厳かな装束ではなく、

柔らかなワンピースに薄い羽織。


それでも、どこか神聖さが漂っている。


「ノノカ様……いえ、今日はお互い休暇ですね。」


「ええ。様はいりません。」


二人は小さく笑う。


神帝タカヤに仕える者同士。


立場は違えど、

背負うものは似ている。


偶然の再会は、そのまま夕食へ。


湖のほとりにある落ち着いた店。


全面ガラス張りの窓から、

夜の水面と街の灯りが見える。


注文はタブレット端末。


「こうして外で食事をするのは、久しぶりです。」


ノノカが微笑む。


「私もです。秘書官は裏方ですが、意外と時間がありません。」


運ばれてくる温かい料理。


湯気が立ち上る。


挿絵(By みてみん)


しばし、静かな時間。


話題は自然と、あの人へ


「神帝は……お変わりありませんか?」


ノノカが尋ねる。


ウォンは少しだけ柔らかい表情になる。


「ええ。相変わらず無茶を考えては、私の仕事を増やしています。」


「ふふ…それがあの方らしい。」


二人の笑い声が重なる。


忠誠ではある。


だが盲信ではない。


支える者としての、現実的な視点。


「強い人です。でも…」


ウォンは湖を見る。


「一人にしてはいけない人でもある。」


ノノカは静かに頷く。


「ええ。光が強いほど、影も濃くなります。」


大神官として、

精神の側面を支えるノノカ。


秘書官として、

現実と責務を整えるウォン。


役割は違う。


だが目指す先は同じ。



夜の湖畔


食後、二人は少し歩く。


湖面に映る星。


ドームの向こうに本物の宇宙。


「平和ですね。」


ノノカが呟く。


「はい。」


ウォンも同じ方向を見る。


今日、警報は鳴っていない。


誰も傷ついていない。


神帝も、今は静かな時間を過ごしているだろう。


「私たちは剣ではありません。」


ノノカが言う。


「ええ。鞘ですね。」


ウォンが返す。


二人は顔を見合わせ、少しだけ笑う。


神帝が全力で進むために。


暴走しないように。


折れないように。


支える。


それが自分たちの役目。


だが今夜は――


ただの二人の女性として。


湖を眺め、

穏やかな時間を共有する。


「また、こういう夜を。」


ノノカ。


「ぜひ。」


ウォン。


モノレールの光が遠くを走る。


夜は静かに更けていく。


戦いも、命令もない。


ただ、同じ人に仕える者同士の、

静かな絆がそこにあった。


(続)


今回は神帝付秘書官ウォンの休日でした。

次回は木星到着予定です。


次回もよろしくお願い致します!

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