宇宙の朝
ー 宇宙の朝 ー
宇宙に、朝はない。
太陽は昇らず、沈まず、ただそこに在る。
だが、ノアでは、確かに“朝”が訪れていた。
「太陽圏外縁まで、残りこのままの速度で362時間」
航法士の声が静かに響く。
窓の向こう、青い地球はもう小さな宝石だ。
代わりに視界を満たすのは、果てしない黒と無数の星。
ヒメナは腕を組み、前を見つめる。
「太陽系を抜けるか…」
柔らかい口調だが、その目は真剣だった。
副司令シャルルは背後でコーヒーを口にする。
「戻る気はないんだろ?」
「当たり前や、これが私達の仕事」
その一言に、艦橋の空気がわずかに締まる。
⸻
主機関は安定。
護衛艦隊も所定位置に展開。
無人護衛艦がコバンザメのように艦側を滑る。
地球圏の通信は徐々に遅延し始めていた。
"ノアリンク"を展開!
人工衛星が3機打ち上げられ通信が通常に戻る。
(ノアリンクとはノアが保有する独自人工衛星網)
報告が淡々と積み上がる。
神帝の四人は、それぞれ別の窓から宇宙を見ていた。
「久しぶりの宇宙だね…」
モックがいう。
「地球もどんどん遠ざかるな。我々の出番が少ない航海になればいいが…」
アイズが続ける。
「エンジン出力を上げます!」
艦体が微かに震える。
その時だった。
レーダーに、微弱な反応。
「外縁部に不審波形」
シャルルが眉を上げる。
「宙帝派か?」
「判別不能。ただし、こちらを観測している可能性あり」
沈黙。
ヒメナがゆっくりと息を吐く。
「追尾は?」
「なし。距離は維持」
しばらくの静寂の後、タカヤは言った。
「行けと言われればいつでも出撃よ。」
やる時はやる。
「火星だ…」
誰かが小さく呟く。
「前方宙域、異常反応」
オペレーターの声がわずかに硬い。
スクリーンに、次々と光が灯る。
一点。
二点。
十……二十……。
「数、増加中。編隊規模――艦隊クラス」
タカヤが低く吐き捨てる。
「来たな」
火星の影から、宙帝派艦隊が姿を現す。
黒銀の艦体。赤い紋章。
太陽光を反射し、不気味に光る。
「コロニーに退避勧告、シェルターに誘導急げ!」
「左右後方にも反応!」
ノアは、包囲されていた。
艦橋が一瞬静まり返る。
ヒメナが前を見たまま言う。
「想定外やな…まさか太陽系内で…」
声は柔らかい。だが決意は固い。
「無人護衛艦、全艦スタンバイ」
艦側面ハッチが順次開放される。
ノアの船体に張り付くように待機していた
1000メートル級無人護衛艦が、静かに分離を始める。
「分離確認」
「遠隔リンク安定」
「コックピット集中制御、オンライン」
メインモニターに、護衛艦群の視界が並ぶ。
まるで無数の目が開いたようだった。
敵艦隊から、先制ビームが放たれる。
「右舷シールド展開!」
蒼い防御光がノアを包む。
衝撃。
だが耐える。
戦争司令マッカーサーが短く命じる。
「護衛艦、前進」
無人護衛艦が一斉に加速。
まるでコバンザメの群れが、一斉に獲物へ飛びかかるように。
「第一波、散開!」
敵の包囲網へ突入。
ビームとミサイルが交錯する。
宇宙に、火花が散る。
「敵右翼、突破口形成!」
「第二群、挟撃!」
遠隔制御席で操縦士が歯を食いしばる。
「行け……!」
護衛艦の一隻が至近距離で主砲を放つ。
敵巡洋艦が爆散。
だが、敵も数で押してくる。
「三番艦、被弾!」
「自律回避モード移行!」
ノアは中心で動かない。
巨大な母体。
その周囲を、無人の牙が戦う。
ウォンが目を細める。
「頼みます…」
タカヤが静かに言う。
「俺が行こうか…」
そう言うと彼は滑走路へ出てギフト"波動"を使用する。
"波動斬撃"
タカヤは波動を纏った剣を振り下げる。
斬撃は空間を切り裂き敵艦を破壊する…
ー 艦橋 ー
「第二主砲部隊 蒼穹準備完了、いつでも撃てます。」
第二主砲部隊より無線が入る
「撃て」
砲塔が輝き蒼白の閃光が一直線に走る。
敵中央艦を貫通。
包囲陣形が崩れる。
「今だ。突破する」
護衛艦群が道を切り開く。
ノアがゆっくりと加速。
火星を背に、赤い星の影を抜ける。
戦闘はまだ終わらない。
だが包囲は破った。
火星は静かに回転を続けている。
その軌道の外側へ。
ノアは、さらに深い宇宙へと進む。
(続)
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公開情報
・第二主砲部隊 蒼穹
役割:広域制圧・対多数戦
甲板両舷に配置された多連装高出力ビーム砲群
自動照準+半自律制御
同時多目標ロックオン可能
二章目に入りました!
とりあえず二章に間に太陽系を抜けるのを目標に頑張ります!
次回もよろしくお願い致します!




