補給ウィーク開幕!③
ー 補給ウィーク開幕!③ ー
――5日目・終わらない列
夜明け。
ノアの周囲、地中海の水平線には――
まだタンカーの影が並んでいた。
黒い船体が、静かに列をなす。
燃料タンカー。
液体酸素運搬船。
重油輸送船。
「……まだあれだけあるのか」
若手兵が呟く。
「“最後の波”だ」
港宙務部隊司令マーカス・ヴェルナーが双眼鏡を下ろす。
「今日で全部飲み込む…」
その声は静かだった。
⸻
五日目は燃料中心。
ノアの心臓部へ流し込まれる、巨大な血液。
直径数メートルの補給ホースが接続される。
ゴウン……と低い振動。
燃料が流れ始める。
主機区画では、バン中佐がモニターを見上げる。
「圧力安定。流量正常」
ソウマが深呼吸する。
「……桁が違いますね」
「ノアは都市だ、5万人が暮らす
都市は燃やして動く」
地上では静かだが、
艦内では巨大な流れが動いている。
⸻
昼。
タンカーは減らない。
接岸。
補給。
離脱。
その繰り返し。
港宙務部隊が重力制御タグを使用し絶妙な角度で船体を押し、微調整をかける。
一隻も接触事故なし。
一隻も遅延なし。
「次、第五タンカー進入!」
マーカスの声が飛ぶ。
汗が滲む額を拭う暇もない。
⸻
夕方。
最後から二番目のタンカーが離脱。
甲板に立つウォンが海を見ている。
その後ろには、補給されたばかりのフェラーリF80。
「これで終わりかな?」
タカヤが柔らかく言う。
「まだです。」
ウォンが顎を上げる。
水平線の向こう。
最後の一隻。
巨大な黒い影が、ゆっくり近づいてくる。
⸻
夜。
最後のタンカー接続。
ホースが繋がる。
流量計が上昇する。
ヒメナは静かに告げる。
「これが最終搬入や、気を引き締めていこう。」
司令室の空気が張り詰める。
数時間後。
「……燃料充填率、100%」
沈黙。
そして――
拍手。
小さな歓声。
五日間、止まらなかった補給が終わった。
外では、最後のタンカーがゆっくり離れていく。
だが――
マーカスが海を見つめたまま呟く。
「列は消えない」
タカヤが振り向く。
遠くの海域。
補給を終えた船とは別に、
新たな船影が現れていた。
補給は終わる。
だが世界は動き続ける。
ノアは満ちた。
燃料も。
弾薬も。
食料も。
そして、静かに力を蓄えた。
「補給ウィーク、完了」
補給部隊統括司令タカミヤ・レンのその一言はスピーカーを通して艦内に響き渡る。
その声は誇らしく…
――満ちた空、満ちた艦
最後のタンカーが水平線の向こうへ消えた夜。
ノアのスピーカーから、ヒメナの声が響く。
「補給ウィーク完遂。
本日、全区画解放。慰労会を開催します。」
一瞬の静寂。
そして、歓声。
甲板ハッチが開放され、巨大な滑走路は即席の広場へと変わる。
補給部隊、機関運用技術部隊、港宙務部隊、衛星部隊…
階級も部門も関係ない。
子供たちが走り回り、
屋台区画では大神官センドウとノブカがなぜか焼きそばを焼いている。
「火力は任せろ!」
「多分美味いぞ!安心しろ!」
笑いが起きる。
タカヤは紙コップを片手に、
バン中佐に肩を叩かれる。
「主機、よく持ったな」
「中佐達のおかげです」
その横を、ウォンが通り過ぎる。
フェラーリF80がライトアップされ、
子供たちに囲まれている。
「触っていいの!?」
「駄目だ、誰だ、許可も無くライトアップしたのわ…」
と言いながもどこか誇らしげだ。
神帝も子供も関係ない。
今日は、ただ“ノアの住人”だ。
ヒメナは少し離れた場所から眺めている。
「いい光景だね。」
隣に立ったのは副艦長のヤマト・ミワ
「たまにはこういう夜も必要だね。」
⸻
やがて照明が落ちる。
「上を見ろー!」
誰かの声。
次の瞬間――
滑走路端から火柱が上がる。
ドン、と重い振動。
夜空に花火が咲いた。
赤。
青。
金。
巨大空母の上空で開く光の花。
歓声が波のように広がる。
子供たちが飛び跳ね、
神帝たちが空を見上げる。
ノアは戦艦であり、都市であり、
そして――家だった。
最後の花火が、金色に弾ける。
その光が、満ちた艦体を照らす。
燃料も。
弾薬も。
笑い声も。
すべてが満ちた夜。
ヒメナは小さく呟く。
「明日から、また日常よ」
(続)
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公開情報
・ヤマト・ミワ 30歳 女性 from地球
宇宙空母ノア副艦長 ギフト"?"
今回で補給編はひとまず終了です!
さて、次はどうしましょう。少し悩みます。
次回もよろしくお願い致します!




