バン中佐は頭が痛い③
ー バン中佐は頭が痛い ー
"ピピピー"
バン中佐に無線が入る…
「こちらカンザキどうかしたか?」
「こちら主機内部、冷却循環区 B班班長ソウマです。」
若手で班長のソウマ・ケンタ伍長は、
センサー端子を差し直しながらバンに連絡していた。
「流量安定……してません」
モニターの数値が、わずかに上下している。
バン中佐は別区画にある主機内部整備操作室から答える。
「誤差範囲だ。焦るな」
その瞬間。
低い警告音。
ピィ――――
全員の視線がモニターに向く。
"冷却副系統・圧力低下"
「副系統落ちました」
空気が変わる。
主機の鼓動が、わずかに強まったように感じる。
「主系統に負荷が寄る。今は予備電源だが3号主機が完全に止まるとコロニーの灯りが消える。3分以内に戻せ」
バンの声は低く、静かだ。
ソウマの喉が鳴る。
3分…
失敗すれば、主機は自動出力制限。
ノアコロニー内は闇に包まれる。
「原因探れ!」
「逆止弁の応答が遅いです!」
「手動補助に切り替えろ!バイパスに繋げ」
相馬がバルブ操作盤に手を伸ばす。
しかし手袋が突起に引っかかり、工具を落とす。
カラン、と乾いた音。
「……っ!」
一瞬、頭が真っ白になる。
“2回同じヘマはするな”
中佐の言葉が蘇る。
だが今は、拾っている時間はない。
ソウマは深呼吸した。
見る。
考える。
圧力低下の原因は、
副系統の微細な詰まり。
完全閉塞ではない。
「逆流してる」
「何?」
「主系統の脈動で、逆圧がかかってます!」
バンの目が鋭くなる。
「続けろ」
「副系統を一瞬だけ遮断、
主系統側の流量を0.3下げれば圧差が消えます!」
「その通りだ、やれ」
ソウマは手動制御レバーを握る。
そこには中佐はいない、いるのは自分の部下数名
あるのは、自分の判断だけ。
「主系統、出力0.3下げます。三、二、一――」
レバーを引く。
振動がわずかに変わる。
副系統圧力計が、ゆっくり上昇。
5%
10%
安定域へ。
警告音が止んだ。
静寂。
「復帰しました」
ソウマの声は、かすれていた。
バン中佐はゆっくり
モニターに近づき確認する。
数値、安定。
主機の鼓動も元通りだ。
「よくやった、ソウマ伍長」
ソウマは息を吐く。
「あー、怖かった…」
「当たり前だ」
バンは短く言う。
「怖くなくなったら終わりだ」
部下は落とした工具を拾い上げソウマに渡す。
ー 操作室にて ー
「さっきの判断、誰に教わった」
「中佐です!」
バンは小さく鼻で笑う。
「違うな」
相馬のヘルメットを軽く叩く。
バンは嬉しそうな顔をしながら横を通り過ぎる。
主機は今日も脈打っている。
神帝も、市民も知らない場所で。
「ソウマ」
「はい!」
「明日からお前、主機班統括だ… 出世に年齢は関係ない、できる者から上行く。」
ソウマは一瞬固まり、
艦底に響き渡る程の大きな声で返事した。
艦底300メートル。
機関運用技術部隊は言わばノアの血液…
心臓を動かす為に必要不可欠な存在…
ノアの安全は彼等によって保たれる。
(続)
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公開情報
・ソウマ・ケンタ 20歳 男性 from地球
機関運用技術部隊 伍長 班長→統括
ギフト"?"
・3号主機 主にコロニー専用として使用
機関運用技術部隊の話は今回のところはこれにて終了です。
次はノアの物資補給の話をしてみたいと思います。
次回もよろしくお願い致します。




