終焉、新たな光へ
「はぁ、はぁ…てめぇもしぶといな。ったく、手間取らせやがって…」
薄暗い夕闇の中。
男たちが追いかけていた少年を捕まえた。彼らの中でも体格のいい男は、荒い息をしながら、目の前で転んだ少年の前髪を思いっきり引っ張った。
「――っうあぁ!!」
髪が引きちぎられそうな痛みに、少年は思わず悲鳴を出す。その声を聞いて、周りにいた何人かの男たちが顔を見合わせて意地悪く笑う。
「かわいい顔して逃げ出そうなんて、度胸あるよなぁ。え?」
少年の髪をさらに持ち上げながら、男は苦々しげに彼を睨む。
少年は痛みをこらえながら、ぶつぶつと小声で何かを呟いていた。
「――っ。光に隠れし闇よ。天に召されし神々よ。天と地の狭間にて、我に力を示せ…」
「ん? 何だ、どうした?」
男は少年がおかしくなったかと、呆れたように笑いながら少年に顔を近づける。少年は、それを睨み付けつつ、密かに口の端を持ち上げていた。
まるで「ワナに引っかかった」と喜ぶような、不気味な笑みだった。
「――アバース、シェイド」
少年が呟いた刹那、ゴウッという凄まじい音がして、少年を中心とする真っ黒の煙のような空気が、渦を巻いて広がった。巨大で強力な渦は、その場の全てを切り裂き、飲み込む。
少年、何かから解放されたような、安らかな表情になった。
しかし、その目には涙が光っていた。
「さよなら、みんな」
朽ちていく世界の中で、少年は呟く。
さよなら、僕。