カレーは美味い
「おかえり~」
リビングには楓がソファーに座って寛いでいた。
もう診断は受けて帰って来たんだろう。
まあいい時間だからダラダラしてることは予想できたが…
「美桜はどうだった?大丈夫そ?」
「うんただの風邪だって、薬飲んで寝とけば治るって」
そんな返答に"ふーん、よかった"っとだけ返しておく。
そうして少し休憩するために楓の隣に座る。
「ふー…」
結構連続で色々あってそんな声がちょっと出る。
そうすると隣の楓が頭を優しく掴んで天馬を自身にもたれさせる。
「最近色々あって疲れてるんでしょ?お姉ちゃんにちょっとくらい頼れよ〜」
そうやって天馬の頭をぽんとぽんと軽く叩く。
それに少し呆気に取られる。
少し無言の空気が流れてから天馬が口を開く。
「あ、姉貴がこの時間に酔っていない…だと?!しかも人に気を使うなんて…まさか俺は性別が変わったけど…姉貴は性格が変わったのか?!」
そんな驚きの声が上がる。
「失礼じゃない…?ねえ?お姉ちゃんをなんだと思ってるんだこのこの〜」
そんな事を言いながら天馬の頭を撫でる楓。
「あ、じゃ分かった!姉貴ご飯作ってよ、手伝うからさ!」
そうやって天馬は提案する。
今の流れは手伝ってくれると思いきや楓の表情はあんまりピンときていない見たいだ。
「え〜…ま、良いけどさ〜ほんとんど手伝って貰うことになるよ〜?なんなら天馬一人でやってた方が大分早いし美味いと思うけど」
そんな御託を並べる楓に呆れた顔を浮かべてしまう。
「御託はいい!手伝え!手伝え!早く!」
そうやって楓の脇を掴んで立たせる。
そうして2人でキッチンに向かう。
「適当にカレーでも作るか」
「いえ〜い!カレーだ!」
そんな適当な会話を経てから冷蔵庫から材料を出す。
「じゃ、姉貴そこに置いてあるやつ切って適当に炒めたり煮込んだり何だかんだしといて、俺は風呂にでも入ってくるから」
「え?!カレーってほぼそれで完成じゃないの?手伝ってくれるって話は?!」
そんな適当な言葉は無視して天馬は服をとって風呂まで歩いていく。
「ふー…落ち着く〜」
そんな小さな声が出る。
楓に言われた通り最近色々あってちょっとずつ疲れが溜まってる気がする。
でもその疲れってのはあんまり忙しくて疲れるってより、結構色々遊んで疲れる気がする。
まあ環境の変化も大分あると思うか。
(こういう疲れはいったん長風呂でもして、落ち着くのが良いよな〜)
風呂好きだ大分落ち着く。
音楽を聴く事と風呂に入る事が夕方辺り急にブームがきたみたく行いたくなる。
それのおかげであんまりストレスなく生きていられているような気がする。
そう思うと結構色々な人にも支えられて生きているんだなーなんかとも考える。
(いかんいかん…風呂に入ると色々考えてしまう…あれ?そう言えば頭洗ったっけ?忘れちゃったな〜…まあ2回洗うぶんには損し無いし一応もう1回洗っておくか)
そう思ってもう1回シャンプーで頭を洗う。
(ふー…最近はあんさんによくお世話になるなー風呂終わったらありがとうって言っておこう)
そう思ってから無心で頭を洗いおわってあと少し湯船に浸かってからお風呂を出る。
「姉貴〜風呂出たよ〜調子はどう?」
「お〜!やっと出たのね、随分長く入ってたね大体完成してるよ」
そう言われてキッチンに向って品をみてみてる。
まあ、少し具材の形が歪な気がするが大体綺麗に出来ている…と思う。
「うん良いと思うよ、普段やらないくせにやればちゃんと出来るのがうざいよな〜姉貴って」
そんな毒を悪気もなく吐く天馬。
「よし!実食と行こう!」
お皿をとってお米と完成したカレーを入れてみる。
2つのカレーが入ったお皿を食卓に置き2人でそれを食べる。
「うん…なんか…シャバいね、あとちょっと具材大きすぎか」
一口食べてから自分で作った物の分析をし始める楓。
「まあ、久々に料理して完ぺきならそっちの方がおかしいよ、十分美味しいし及第点より全然上くらいは取れてるんじゃないかな?」
天馬は食べながらそんなフォローを入れる。
久々に食べた姉の料理に多分少し嬉しくて味覚にフィルターがかかってるのだろうが大分美味しく感じる。
「よし!反省が分かったことだし次カレー作る時は呼んでよ!その時はお姉ちゃんのレベルは今の10倍ほどになってるだろう!あのゴードンラムゼイも感嘆するレベルの物を作ってあげよう」
そんな、意気込みを上げる楓を横目に食べる手を進める。
「そんなに、意気込むなら明日もなんか作ってくれないかな?少しくらい手伝ってくれても良いと思うんだけど」
そうやって言うと楓は天馬から目を逸らして無言でカレーを食べつずける。
今日は昨日より楽しい食事であった気がした。




